旅の目的は整える! バリ島の「マンダパ」で心をリセット。
Travel 2025.09.04
いま、旅の目的は"映える"から"整える"へ。
心を解きほぐし、感性を澄ませるために選びたいのは、自然と文化、そして自分自身が呼吸するように調和できる場所。バリ島ウブドの「マンダパ・リッツ・カールトン・リザーブ」は、そんな大人のためのリトリートだ。
ライステラスの緑が揺れ、アユン川が静かに響く朝。
ここでは最新のウェルネスプログラム「Disconnect to Reconnect」が、心と体のリズムを取り戻してくれる。スマホを置き、深呼吸をした瞬間から、旅は始まる。
スパでのシグネチャートリートメント、地元食材を使ったヘルシーダイニング、瞑想やマインドフルネスのひととき──すべてが感覚に寄り添い、日常の中で曇ってしまった部分をそっと磨き上げてくれる。
ウェルネスは、いまやラグジュアリーの新しいドレスコード
2度目のマンダパ滞在で感じたのは、ここが"ただのホテル"ではなく、感性を再起動させるための美しい舞台であるということ。
マンダパは、リッツ・カールトンの中でも世界に8つしかない「リザーブ」ブランドのひとつ。聖なるアユン川を望む渓谷に沿って、12haの敷地に60戸のスイートとヴィラが静かに佇む。専任バトラーが運転するバギーで巡る時間さえ、優雅な演出の一部。バリの伝統様式とモダンな感性が溶け合う建築は、光と影さえもデザインに変える。
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最新のメニューを体験、テーマは"眠り"。
プログラムがローンチした際に一度取材した「Disconnect to Reconnect」。
再び訪れた今回は、その最新メニューを体験した。テーマは"眠り"。世界的に睡眠への関心が高まる中、マンダパでもスリープセラピーは、いまもっとも注目されるセッションとなっている。
なかでも人気は、スパの温水プールで行うスリープセラピー。朝日が差し込む早朝、温かな水面に身をゆだね、セラピストが奏でるシンギングボウルの音に包まれる。発泡スチロールのような素材の棒を背中と足に敷き、体を浮かせながら、音の振動を全身で受け取る──水と音が溶け合い、心身がゆっくりとリセットされていく感覚だ。
次に試したのは、サウンドセラピー。横たわった状態で、大小さまざまなシンギングボウルから広がる音色を浴びる。音のレイヤーが深く重なり、思考のざわめきが少しずつ手放されていく。睡眠の質を高めるためのセッションだが、終わる頃には頭の奥がすっと軽くなっていた。
人気のスパは今回リニューアルされ、壁やベッドまわりの素材がアップデート。よりシックで落ち着いた空間に進化した。自然光と木の温もりが溶け合うトリートメントルームは、ただそこにいるだけで呼吸が深くなる。
実はこの数カ月、私自身も眠りの浅さに悩んでいた。
いつもは欠かせなかったマグネシウムやテアニンのサプリメントを、この滞在中は一度も口にしなかった。それでも途中で目覚めることなく朝まで眠れたのは──バリの自然と、このセラピーの相乗効果かもしれない。
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アユン川を望む「リバーフロントプールヴィラ」
滞在したのは、1ベッドタイプで430㎡の広さを誇る「リバーフロントプールヴィラ」。別棟にリビングを備え、30㎡のプライベートプールからはアユン川を一望できる。
室内はバリの伝統様式をベースに、モダンなインテリアを組み合わせた重厚感のあるシックなデザイン。窓越しに広がる緑が、空間に柔らかな陰影を落とす。
シャワールームは屋内と屋外の2カ所。晴れた日の屋外シャワーは、熱帯の植物に包まれたジャングル感が心地よく、まるで自然に抱かれているよう。
部屋には、鮮やかな色彩の伝統衣装クバヤが用意されていた。手に取るだけで、バリ文化の息遣いを感じられるおもてなしに心がほどける。
マンダパには、美食の舞台となる3つのレストランがある。
モーニングは「サワ テラス」で、アユン川を望む開放的な空間の朝食ビュッフェを。焼きたてのロティやバリ風パンケーキ、搾りたてジュース──新鮮な香りに包まれて一日が始まる。夜にはバリ舞踊の鑑賞もでき、食事とともに文化に浸れるのも魅力だ。
サンセットは「アンバー・ウブド・バー」へ。バリのハーブを使ったカクテルが名物で、特にカラーシュガーで描かれた伝統肖像画が浮かぶ一杯は芸術的。ジャズの音色と黄金色の夕景に酔いしれる時間が広がる。
ディナーは「クブ」。竹で編まれたコクーン型の個室でいただくコース料理は、まるで秘密の晩餐。最後に登場した愛らしいデザートに、思わず笑みがこぼれる。
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マンダパでしか味わえない"土地の記憶"
「Disconnect to Reconnect」プログラムをローンチしてからの2年間で、マンダパのウェルネスは確実に進化を遂げてきたという。いま、総支配人の細谷真規(Masanori Hosoya)が最も推すのはスリープセラピーだ。
「現代は睡眠に悩む方が非常に多いんです。睡眠の質を整えることは、心身のリセットに直結します。自然の力を活用し、より深い休息へと導くプログラムを用意しました」
日々の運営で大切にしているのは規律と誠実さ。「地元スタッフが世界水準で通用する仕事の仕方を身につけられるよう、日々の規律を大切にしています。その積み重ねが、世界9500あるマリオットの施設の中で最も高い94%というゲスト満足度につながっています」
今後は、より深くバリ文化を体験できる企画も進行中だ。「地元の食材を使った持続可能な食体験や、自然の中での採集アクティビティを計画しています。マンダパでしか味わえない"土地の記憶"をお持ち帰りいただきたいですね」
最後のメッセージとして「ここでは、ぜひ時間を止めてほしい。自分が時間をコントロールする──時間に支配されるのではなく、時間を支配する過ごし方を、マンダパで」と語ってくれた。
整う、という贅沢。ここではそれが、自然の呼吸と同じくらい当たり前に訪れる。
静寂と景色、文化とおもてなし──すべてが調和するマンダパで、時間はゆるやかに姿を変える。「時間に支配されるのではなく、時間を支配する」。その感覚を、この場所は静かに教えてくれる。
Mandapa, a Ritz-Carlton Reserve
Mandapa, a Ritz-Carlton Reserve, Jalan Kedewatan, Banjar Kedewatan, Ubud, Gianyar, Bali 80571, Indonesia
https://www.ritzcarlton.com/jp/hotels/indonesia/mandapa
photography, movie, text: Kaori Nakamura