アヴィニョンで、ジャン=ミッシェル・オトニエルの愛の世界に浸る。
Travel 2025.09.12
ジャン=ミッシェル・オトニエルが構想した彼の最大のプロジェクトが、2026年1月4日まで南仏アヴィニョンで展開中だ。これは2025年がアヴィニョンにとって欧州文化都市に指定されて25周年であり、ユネスコの世界遺産登録の30周年であることから、市内の象徴的な場所や美術館の豊かさと独自性を明らかにするという任務をオトニエルに託したもの。プロジェクトは『Othoniel Cosmos ou les Fantômes de l'Amour(オトニエル、宇宙あるいは愛の亡霊)』と題され、フランス初公開の彼の作品160点を含む約260点の愛を象徴する芸術的星座の展示を市内の文化施設や史跡などの10箇所で鑑賞できる。
歌でおなじみのアヴィニョン橋(正式名はPont Saint-Bébézet)。©François Deladerrièr
アヴィニョン橋のポルト・ドゥ・ナヴィガターに展示されている作品。©Olivier Tresson-Avignon Tourisme
彫刻と絵画、レンガとパール、宇宙と噴水、ゴールドとガラス、トーテムと無限の結び目など、様々な素材を組み合わせて制作された作品。教皇庁の中庭では特設インスタレーションを背景にキャロリーヌ・カールソンの創作『Midnight Souls』をパリ・オペラ座エトワールのユーゴ・マルシャンとキャロリーヌ・オスモが踊るというパフォーマンスが8月1日と2日に開催され、このプロジェクトのハイライトとなった。
左:アヴィニョン教皇庁にて、ジャン=ミッシェル・オトニエル。©Christophe Aubry / Ville d'Avignon 右:『Kokoro』(2024年)。聖クレール・チャンペルの鉄門裏に設置されたムラノ・グラスの赤いハートのための準備用水彩。©Othoniel Studio
J.M.オトニエルのインスタレーションが特設された教皇庁の庭のステージで、キャロリーヌ・カールソン振付『Midnight Souls』を踊るユーゴ・マルシャン。©Sigrid Colomyès
アヴィニョンは精神と精霊の街で、法王、詩人、恋人たちをかくまった。人々は死を逃れ、自由を守るため、宮殿に暮らすため、橋の上で踊るため、その甘美さを味わうために美しいアヴィニョンにやってきたのだ。このようにオトニエルをインスパイアするには十分な要素を秘めている街である。花々、鏡、墓石、宝石......オトニエルは燃えるような愛、失われた愛、幽霊や幻想、夢や誓いを探求。街の歴史を題材にしたソネットの連作のように彼は10箇所に星座をちりばめ、このプロジェクトで教皇の街を欲望の星座へと変貌させた。ソネットというアイデアは、イタリア出身の詩人ペトラルカに由来。14世紀、アヴィニョンに暮らした彼は、教会でみかけた女性に捧げる恋愛叙情詩を書き続けたことで知られている。
左:©ENoveJosserand- Avignon Tourisme 右:©François Deladerrière
©ENoveJosserand- Avignon Tourisme
上の6点は教皇庁内と庭のインスタレーション。教皇庁の中の空間を大天使たちが舞う......そんな光景がこのスペースを見て目に浮かんだとオトニエルは語っている。左:©Marie d'Avignon - CAubry - GQuittard 右:©Olivier Tresson-Avignon Tourisme
市内10箇所に展示されている合計約260点の作品は、ペトラルカが言うところの"自己の欲望を制限する"ことがいかに難しく、また時には苦痛を伴うことかを示すというミケランジェロ、シェイクスピア、パゾリーニに帰せられる愛情あふれる話の断片だという。彼の作品を求めて市内を巡る散策は、開催期間中だけの特別なアート×歴史のアヴィニョン体験である。
プティ・パレ美術館。©Olivier Tresson-Avignon Tourisme
アヴィニヨン橋。左:©Marie d'Avignon -CAubry- GQuittard 右:François Deladerrière
左:カルヴェ美術館『Wonderblock』©François Deladerriere 右:ラピデール美術館 ©Olivier Tresson-Avignon Tourisme
左:コレクション・ランベールの『Invisivility Face』。後方はSol Lewittの作品。©François Deladerrière 右:レ・バン・ポメール博物館 ©Marie d'Avignon-CAubry-GQuittard
開催地10箇所。
例えばPalais des Papes(教皇庁)から上のPont Saint Bénezet(ポン・サン・ベネゼ/アヴィニョン橋)までは徒歩で7分、下のCollection Lambert(コレクション・ランベール)までは徒歩で14分だ。
開催中〜2026年1月4日
料)17ユーロ(教皇庁+アヴィニョン橋+教皇庁の庭+展覧会)、12ユーロ(教皇庁+展覧会)
https://palais-des-papes.com/
5ユーロ(アヴィニョン橋+展覧会)
http://www.avignon-pont.com/
12ユーロ(コレクション・ランベール)
http://www.collectionlambert.com/
無料(プティ・パレ美術館、カルヴェ美術館、ラピデール美術館、ルキアン美術館、レ・バン・ポメール博物館、教皇庁広場、聖クレール・チャペル)
Office de Tourisme d'Avignon
www.avignon-tourisme.com
editing: Mariko Omura