【意外を楽しむ展覧会 2】忘れられた宝飾商、ラクロッシュ。

Paris 2019.11.04

ヴァンドーム広場の宝石商たちの歴史からすっぽりと抜け落ちてしまっているジュエラー、それはLacloche(ラクロッシュ)。ジュエリーに興味がある人にとっても初耳の名前では?ベルギーで創業してまもなく、1892年にパリにFrères Lacloche(フレール・ラクロッシュ)と看板を掲げてメゾンを開いた。その後、ラペ通り15番地にブティックは移転。並びのカルティエ同様にエドワード7世をはじめ、世界の王侯貴族に愛されていた。ジャック・ラクロッシュの代になって、1931年にヴァンドーム広場へと。J.Lacloche の名でジュエラー活動が続けられ、1954年には釣り鐘(クロッシュ)のフォルムのフラコン入りの香水も発売。しかしジャックは活動の軸をジュエリーからデザインに移し、輝けるメゾンの歴史は1967年にページを閉じることに。

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1925年にパリで開催された現代産業装飾芸術国際博覧会(アールデコ博と略称される)にラクロッシュが出品したブレスレット。輝きを求め、カボションカットのルビーの底部には面とりがなされている。La collection privée©2019 Christie’s Images  Limited.

ヴァン クリーフ&アーペルの支援で創立された「レコール ジュエリーと宝飾芸術の学校」は毎年パリで2つの企画展を開催していて、現在開催されているのは、この忘れられたジュエラーであるラクロッシュを紹介する展覧会だ。エントランスには、ダイヤモンドのレースのように繊細な仕事が施されたブレスレットとシガレットケースを展示。ジュエラーの見事なサヴォワールフェールで来場者を導入部から驚かせ、ラクロッシュに興味を持たせる趣向である。時代順、テーマ別に展示されるのはジュエリーだけでなく、置き時計なども。素晴らしい宝飾品の数々に驚かされる。これほどのジュエラーの名前がフランスのジュエリー史にちらりとも登場しなかったとは、実に意外だ。

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上は1915年頃の、チョーカーとしても使えるブレスレット。下は1923〜1925年のシガレットケース。レースのようなダイヤモンド細工に溜息がでる。

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フレール・ラクロッシュのベルエポック期のジュエリーから。1908年のペンダントウォッチ。

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アールヌーボー期は自然がモチーフ。目にクリソベリル・キャッツアイが使われている、1905年頃のボックス。

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1925年のシガレットケース。この時代、芸術界を席巻していたオリエンタリズムの影響はラクロッシュにも。東洋の中でもラクロッシュはとりわけ日本の繊細さに惹かれていたそうだ。

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1922年、ツタンカーメンの墓の発見に刺激され多くのジュエラー同様、ラクロッシュもエジプトをテーマに。まるで宝石の刺繍のような繊細な仕事が施されたブレスレット。

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ラクロッシュのジュエラーとしての栄華の時代はアールデコ期である。1925年にパリで半年間開催された現代産業装飾芸術国際博覧会ではグランパレの会場内に、ジュエラー40メゾンが集まってその創造性を競演した。今回の展覧会の最後の部屋では、その時の会場の雰囲気を再現して、ラクロッシュの見事なアールデコ・スタイルの作品を展示している。

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1925年のネセセール。

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1925年のアールデコ博で、ラロッシュは21点の小さな置き時計を出品した。

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時を告げる機能を超えた、創造性にあふれる美しいオブジェである。

世界中に散逸していたジュエリーを25カ国から集めた、小規模ながら充実の展覧会。さすがジュエリーの知識を伝承することをミッションとする「レコール ジュエリーと宝飾芸術の学校」ならではの企画である。この機会を逃したら、ラクロッシュのジュエリーをまとめて見ることはできないだろう。

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女優イザベル・オーブレに夫が贈ったフリンジのパリュール。ネックレス、ブレスレット・ウォッチ、イヤリングのセットだ。

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1938年のブレスレット。モダンなデザインと優れた技術が話題を呼び、異なる石を用いた複数バージョンが作られた。

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四季のブローチ(1940〜1950年)。

『Lacloche Joailliers, 1892-1967』展
期間:開催中〜12/20
L’École des Arts Joailliers
31, rue Danielle Casanova 75001 Paris
開)12時〜19時
休)日
入場無料
www.lecolevancleefarpels.com/fr

réalisation:MARIKO OMURA

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