ガブリエル・シャネル展、100年たっても新しいモード。
Paris 2020.09.23
上奥左:1927年から29年の間のコレクションよりウールのツイードスーツ。Paris, Patrimoine de Chanel ©Julien T. Hamon
上奥右:アイボリーのシルク製ブラウス、ベルト、スカートのアンサンブルは1927年春夏コレクションから。Paris, Patrimoine de Chanel ©Julien T. Hamon
上左:アイボリーのシルクジャージー製、1916年夏のマリニエール。Paris, Patrimoine de Chanel ©Julien T. Hamon
上右:1920-23年秋冬コレクションから。漆黒のビーズと黒のスパンコールを刺繍したシフォンドレス。Paris, Patrimoine de Chanel ©Julien T. Hamon
肩の力が抜けたツイードのスーツ、シンプルなブラウスと腰ばきのスカートのセット、誇張された襟がモダンなシルクジャージーのセーラーシャツ、ビーズの装飾がシルクチュールに一体化されたミニマルなドレス。さあ、これはシャネルのいつのコレクションでしょうか ? こう尋ねられて、何人が正しく答えられるだろうか。この4つのシルエットをガブリエル・シャネル(1883〜1971年)がデザインしたのは、1916年から29年までの間である。約1世紀も以前のクリエイションなのに、そのエレガンスはまったく時代を感じさせない‼︎
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シャネルが手がけることは、いつだって新しかった。
1930年代にアンドレ・ケルテスが撮影したガブリエル・シャネル。© Ministère de la Culture – Médiathèque de l’Architecture et du Patrimoine, Dist. RMN-Grand Palais / André Kertész
左:シルクのソワレ2着。左は1955年春夏コレクションから(Paris, Patrimoine de Chanel)、右は1970-71年秋冬コレクション(Paris, Palais Galliera)©Julien T. Hamon
右:リトル・ブラック・ドレス。左は1964-65年秋冬コレクションから(Paris, Palais Galliera)、右は1959年春夏コレクションから(Paris, Patrimoine de Chanel)©Julien T. Hamon
クチュリエとしての生涯を通じ、動きの自由、自然で軽快な様子に基本を置いた新しいエレガンスを新しい女性たちに提案したガブリエル・シャネル。その軌跡が展覧会『Gabrielle Chanel. Manifeste de mode(ガブリエル・シャネル。モードのマニフェスト)』で展開される。これは拡張工事を終え10月1日に扉を開くガリエラ美術館が開催する最初の展覧会なのだが、驚いたことに、これがガブリエル・シャネルのパリで初の回顧展だという。1971年に彼女が亡くなった後、彼女の生い立ち、人生については種々の出版物が世間に多く知らしめた。今回の回顧展でパリ市のモード美術館たるガリエラ美術館がフォーカスするのは、20世紀で最も影響力の大きな彼女の仕事そのもの。デビューした1910年代のジャージー、30年代の洗練されたドレス、大戦後の復帰後に生まれたシャネル・スーツ……と変遷が展開される。1500㎡のスペースに350点を展示しての回顧展。時代ごとに、当時の流行りとも当時の一般的なフェミニニティとは似ても似つかない新しいエレガンスの提案をしたガブリエル。服だけでなく靴、バッグ、ジュエリー、香水も含めた彼女のクリエイションを分析し、それがモード史にもたらした貢献が明らかにされる回顧展だ。
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時代に屈することのなかったガブリエル・シャネル
1959年にリチャード・アヴェドンが撮影したガブリエル・シャネルとシャネルのスーツを着たモデルのスージー・パーカー。© The Richard Avedon Foundation
展覧会は時代順であり、またテーマでまとめられた部屋もある。庭に面したギャラリーを使って展示されるテーマは、“シャネル・スーツ”だ。自由を求め、装飾を拒み、ソフトで動きやすく、フォルムはシンプルに。女性の身体がその中で動きを拘束されない服を求めた彼女がシャネル・スーツと世間で呼ばれる“名作”をクリエイトするのは、1956年のことである。1954年までシャネルのクチュールメゾンがクローズされている間に、彼女の主張するモードとは対極のウエストを締めつける服が主流に戻っていた。しかし彼女は相変わらず時代に迎合することなく、自身のマニフェストを貫きシャネル・スーツを世に出したのだ。
左:1964年春夏コレクションより。Paris, Palais Galliera ©Julien T. Hamon 右:1961年春夏コレクションより。シャネルのスーツは縁取り、ゴールドのボタン、まるでニットジャケットのような気軽さが特徴だ。Paris, Patrimoine Chanel ©Julien T. Hamon
このほかにシャネル N°5、1932年に発表したダイヤモンドジュエリー、シャネルのコード、コスチュームジュエリーがテーマとして、独立したスペースで紹介される。
10月1日の会期スタート後、詳細を会場の写真とともに紹介しよう。装飾美術館でのクリスチャン・ディオール展が満員で入れなかった苦い経験の持ち主の中には、すでにチケットをオンライン予約している人もいるという。この秋の期待の展覧会である。
左:1921年発表当時のシャネル N°5のボトル。Paris, Patrimoine Chanel ©Julien T. Hamon 右:1932年に発表されたハイジュエリーコレクション” Bijoux de Diamants”(ダイヤモンドジュエリー)よりコメットのブローチ。Paris, Patrimoine Chanel ©Julien T. Hamon
期間:10/1〜2021/3/14
Palais Galliera
Musée de la ville de Paris
10, avenue Pierre 1er de Serbie, Paris 16e
75116 Paris
開)10時〜18時(木・金 〜21時)
休)月、12/25、1/1
料:14ユーロ
www.billetterie-parismusees.paris.fr/content?lang=fr
réalisation : MARIKO OMURA