伝説のルカ・カルトン、軽やかで詩的なガストロノミーが新鮮。
Paris 2024.07.10
マドレーヌ寺院に向かって左手に位置するガストロノミーレストランのLucas Carton(ルカ・カルトン)。この名前を久しく耳にしていなかったと思う人、初めて聞くという人......これは世代によるだろうか。1980年代のフランスにおけるヌーヴェル・キュイジーズ・ブームの旗手アラン・サンドランスが1985年からシェフを務め、ミシュランの3ツ星を長く維持していたレストランだ。料理界の歴史に「フォアグラのキャベツ包み」などの逸品を残した彼は、自由な料理を求めて2005年に3ツ星を返上。これはガストロノミー界を超えて大きな話題を呼んだ。その後、何人かのシェフが彼の後を継いで......。
1824年に完成したマドレーヌ寺院。その斜め左前の小さな広場に、1839年に生まれたレストランがルカ・カルトンの前身だ。
2021年にシャンパンのポメリーがオーナーとなり、アンヌ・ソフィー・ピックやエレーヌ・ダローズなどで経験を積んだユーゴ・ブールニィをシェフに迎えた。現在ミシュランでは1ツ星、ゴー&ミヨーではコック帽3つの評価を得ている。1860年代にガストロノミーレストランとして生まれた店で、ルカ・カルトンという店名に変わって内装がルイ・マジョレルによるアール・ヌーヴォーでまとめられたのは20世紀の初期のことだ。
シェフのユーゴ・ブールニィ。輝く瞳に好奇心を感じさせ、どことなくいたずらっ子のよう。©️Le photographe du Dimanche
アール・ヌーヴォー界のスター、ルイ・マジョレルによる内装が歴史を感じさせる。©️Le photographe du Dimanche
座席のアール・ヌーヴォー調のファブリックはウィリアム・モリス。植物を感じさせるシンプルな器が重厚なインテリアに軽やかさをもたらす。©️Alizée Cailliau
シェフがクリエイトするのは、その歴史を感じさせるクラシックな内装とバランスを取るようにモダンで軽やかな料理だ。アール・ヌーヴォーの特徴である植物が繊細に、そして巧みに料理に取り入れられ、自然から大いなるインスピレーションを得ている。例えば、白いお皿の上にグラフィックな模様を描くような"シャルトルーズでマリネしたアスパラガス"。薬草のリキュールである緑色のシャルトルーズが使われ、もみの木の若芽のアイスクリームがアスパラガスに添えられてお皿の中はグリーンの世界だ。"ペルシュ地方の生後120日の地鶏、ミルト風味"は、まるでケーキのように三角形にカットされた地鶏の上にミルトや小花がびっしりと飾られて草原が食卓に出現したかのよう。"スモークした熟成ロット(アンコウ)"にかけるブイヨンはサンザシと味噌で、上には愛らしい小花が飾られて。どれもが目で味わうところから始まる料理だ。口に含めば、さまざまな素材が混じり合った深く、それでいて軽やかな味わいに驚かされる。
食後、ワゴンで登場するのはチーズやパティスリーだけに限らない。ルカ・カルトンではワゴンにヴェルヴェーヌなどハーブティ用の植物の鉢がワゴンに並べられている。そこから好みの味を選ぶのは、遊びのようでなんだか楽しい。
食卓に爽やかさをもたらすアスパラガスのクリエーション。©️Le photographe du Dimanche
スモークされた熟成ロット(アンコウ)は、どことなくロブスターを思わせる食感と奥行きのある味わいだ。左上のソースをかけていただく。©️Le photographe du Dimanche
コルシカのピンクグレープフルーツのデザート。煎茶、セージ、胡椒が素材に盛り込まれ未知の味わいが新鮮だ。©️Le photographe du Dimanche
1階のガストロノミーレストランが特別な食事のためのお楽しみなら、気軽に通えるのは2階のPetit Lucas(プティ・ルカ)だろう。ここはレストランの左脇のアーケード街の入り口から階段で。こちらでシェフが提案するのはシンプルでエレガントな料理。アラカルトの前菜は17ユーロ〜、メインは19ユーロから。日替わりのランチメニューなら39ユーロと実に手ごろだ。
Lucas Carton
9,place de la Madeleine 75008 Paris
営)12:00〜14:00 19:30〜21:15
休)日、月
www.lucascarton.com
@lucascartonparis
Petit Lucas
Galerie de la Madeleine 75008 Paris
営)12:00〜14:00 19:00〜21:30
休)日、月
editing: Mariko Omura