南仏のシャトー・ドゥ・ベルヌ、緑に囲まれた食の楽園。【前編】

Paris 2024.07.13

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ぶどう畑に囲まれた5ツ星ホテルのシャトー・ドゥ・ベルヌ。©️droneyourproperty

ルレ&シャトーの5ツ星ホテルであるChâteau de Berne(シャトー・ドゥ・ベルヌ)は、マルセイユとニースの間に位置するles Arcs Draguignan(レザルク・ドゥラギニャン)。TGV駅から車で25分くらいの場所にある。ワイン通ならこの名前に、すぐに角形ボトルに入った爽やかな飲み口のロゼワインを思うのでは? ワイナリーとしても有名なシャトー・ドゥ・ベルヌ。600ヘクタールという広い敷地を持つホテルにはタイプの異なる3つのレストランがあり、どれも宿泊客以外にも開かれている。そのひとつ、レストランLe Jardin de Berne(ル・ジャルダン・ドゥ・ベルヌ)はミシュラン1ツ星そしてグリーンスターも持ち、グルメ客はもちろん持続可能や地球環境への意識の高いガストロノミーファンも集めている。特別な体験ができる料理を求めて、ヘリポートを有するホテルにはモナコから飛んでくる客もいるそうだ。ワインファンは醸造所見学、ウェルビーイング派はスパ体験や緑の中の散歩、好奇心いっぱいにプロファンス料理教室に参加、何もしない時間を過ごしたければプールサイドで......さまざまな過ごし方ができるホテル滞在については第2回目に紹介することにし、まずは遠征の価値がある食から始めよう。

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食事の前、まずはバーでアペリティフ! ノンアルコールのカクテルであるモクテルもバーのおすすめだ。©️LeaGil

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ル・ジャルダン・ドゥ・ベルヌでグリーン・ガストロノミー体験。

ル・ジャルダン・ドゥ・ベルヌの食事はレストランのガラス屋根の下のテーブル席だけでなく、料金は少しアップするけれどキッチンとガラスの扉で仕切られた個室のタ・ラーブル・デ・シェフ、そしてキッチンからテーブルへと運ばれる出来立ての料理が置かれるカウンターの"ターブル・デュ・パス"に設けられた席の提案もある。とりわけ後者は毎回2名だけの特等席。スツールに腰掛ければ、目の前のキッチンで繰り広げられる料理人たちの仕事ぶり、鍋やフライパンから立ち上る香り......五感がフルに研ぎ澄まされて一生の思い出となる食事時間となるだろう。

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ペラルゴニウムが植えられた緑の通路を抜けてレストランへ。photography: Mariko Omura

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温室風のレストラン席。photography: ©️EGentils

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"ターブル・デュ・パス"と呼ばれるカウンターに設けられた2席だけの特等席。©️LeaGil

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シェフのルイ・ラモー(左)とシェフ・パティシエのエリック・ライナル。ふたりにインスピレーションを与えてくれる野菜畑にて。©️LeaGil

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イラスト入りメニューは料理だけでなく、近隣の素材の産地も地図入りで紹介。最後にはレストランが使う食器を作る地元の陶芸家の仕事も紹介されている。photography: Mariko Omura

このガストロノミーレストランで2020年からシェフを務めるのはルイ・ラモー。ミシュランのグリーンスターを有するだけあって、彼が使う素材は近隣のビオのファームなどすべて地元から。メニューを開くと肉や魚の産地の地図と生産者たちが描かれたイラストが続く。それは地元の粘土で食器を作る陶芸家レア・タルディロにいたるまで。シェフの素材はホテルの敷地内にある広い野菜畑の作物もあり、ル・ジャルダン・ドゥ・ベルヌではこれ以上ない至近距離の地産地消が実践されているのだ。こうした素材からシェフがクリエイトするのは驚きと味わいが込められた料理だ。
メニューから、前菜の「忘れられたトマト」を例にとろう。"ロースト・トマトのタイム風味ドレッシングのパン・ペルデュ"と添えられている。肉厚でトマトとは思えぬトマトが一切れのパンの上に乗って登場。そこに味わいの深さがまるで肉汁のような、しっかりとしたドレッシングがかけられる。その液体をたっぷり吸ったパンはなんとなくフォアグラのローストのようにも見えるし、口にしているのは本当に野菜料理なのかという"おいしくて楽しい錯覚"にとらわれる一皿だ。

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トマトとパン。ごくシンプルな材料で奥行きの深い前菜をシェフはクリエイト。photography: Mariko Omura

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メインの魚料理。地元のマスは低温調理で。ラディッシュ、ニンジンの葉のペスト、ニワトコの花の白いバターソースなど畑の恵みをたっぷりと。photography: Mariko Omura

さて"おいしくて楽しい錯覚"について言えば、シェフにはエリック・ライナルというシェフ・パティシエの相棒がいる。シャトー・ドゥ・ベルヌで働くことをずっと夢見ていたという彼。クリエイションには愛するシャトーの畑がもたらす収穫物から多くのインスピレーションを得ていて、「糖分は軽めに、味わいはしっかり。私のデザートは季節のリズムと畑のリズムに従っています」と彼は語る。畑にシトロン・キャビアやコンバワといった珍しい柑橘類も育てられているのも、彼のアイディアだ。彼が食卓にもたらす錯覚の一例は、グリーンの色彩が爽やかなデザート「摘取り」だ。最近はハーブをデザートに用いるシェフ・パティシエは少なくないけれど、エリックが提案するのは一歩先取りしている感がある。甘み控えめで、またハーブの種類も複数盛り込まれているのでデザートと言っても料理との境界線がとても曖昧。ル・ジャルダン・ドゥ・ベルヌはテーブルに着き、食事が終わるまで不思議な感覚の旅ができるガストロノミー・レストランだ。

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畑で摘んだハーブをたっぷり使ったデザート。photography: Mariko Omura

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グリーンピースのシャーベットとチェリーのデザート。畑の恵みだ。photography: Mariko Omura

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ロリヴィエ・ドゥ・ベルヌで、地中海の太陽の輝きをシックに味わう。

遠方にぶどう畑の景色が見渡せる広いテラス席が魅力のL'Olivier de Berne(ロリヴィエ・ドゥ・ベルヌ)は夏場のランチ時だけオープンしているレストランだ。シェフのルイ・ラモーがこちらで提案するのは、シェアして楽しむ料理。地元そしてホテルの野菜畑の収穫を素材を用いているのはガストロノミー・レストランと同様で、地中海沿岸地方でおなじみの味が彼のクリエーションの基本となっている。一見シンプルながら素材の味が生かされた料理はどれもカラフルで、シェアする食事の喜びは増すばかり。前菜のフォカッチャはアスパラガスやヤギのチーズ、ニンニク、オリーブなどとともに美しく供される一皿で、イカのグリルとパエリエ風に仕立てたカマルグのライスはサフラン味のサバイヨンソースが添えられた素晴らしい夏の一皿である。べジタリアンやヴィーガンの食事客だけに独占させたくないメインは、アーチチョーク・クリームのパニス。ひよこ豆のペーストがベースのニース生まれのパニスを、スナックではなく野菜料理として仕立てた逸品だ。食の楽しみは、もちろんデザートまで続く。風が時折り運ぶ庭のジャスミンの香りに酔いつつ、一生に一度かもしれないロリヴィエ・ドゥ・ベルヌのランチを満喫しよう。

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ロリヴィエ・ドゥ・ベルヌのランチタイム。プロヴァンスの太陽を満喫しよう。©️Hervé Fabre

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ロリヴィエ・ドゥ・ベルヌはア・ラ・カルト、あるいは75ユーロのメニュー(前菜+メインと添え野菜+デザートかチーズ)を。©️LeaGil

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麦の穂のようなフォルムで焼かれたフォカッチャの上に野菜とチーズをのせた前菜。photography: Mariko Omura

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メインから。イカとパエリア風に仕立てたカマルグ地方のライス。photography: Mariko Omura

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メインのべジタリアン料理は、南仏らしさを存分に味わえるパニス。photography: Mariko Omura

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デザートは上から、アーモンドミルクのクリームとフルーツが間に挟まったパスティーヤ、畑のイチゴをのせたイル・フロッタント、チョコレートのシュークリーム、パヴロヴァ。photography: Mariko Omura

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日差しの強い日は、日除け付きの屋根の下のスペースでランチを。photography: Mariko Omura

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ミシュランのビブグルマン、気軽なル・ビストロ。

シャトー・ドゥ・ベルヌのワイナリーとブティックに隣接しているLe Bistro(ル・ビストロ)は、その名前が示すようにシンプルな料理を手頃な価格で気軽に味わえるビストロで、ミシュランのビブグルマンのお墨付きだ。カジュアルな雰囲気でワイングラス片手にとるル・ビストロでの食事はピザ、ハンバーガー、ステーキ......自分が何を食べようとしているかが、世界から集まる食事客の誰にでもオーダー時にわかる料理名ばかりだ。

シャトーの畑の作物にインスピレーションを得ているシェフのオーレリー・リアトーはプロヴァンスの出身。地元の素材を知り尽くす彼女は、その豊かさを食事客と分かち合う料理をここで提案する。ほかの2店と異なり、ル・ビストロは年間を通じての営業。フレッシュな材料にこだわる彼女は、季節に沿ってメニューを変えて常連客の舌を喜ばせている。

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ル・ビストロ。夏は快適なテラス席で。©️EGentils

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シャトー・ドゥ・ベルネのレストランで、ル・ビストロだけは一年中営業。©️EGentils

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ル・ビストロの料理はどれもシンプル。©️EGentils

editing: Mariko Omura

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