「ワインは五感を目覚めさせるために飲む」。好きなものを食べても太らないフランス人が大切にしていることは?

Paris 2025.02.23

「ワインは五感を鈍らせるために飲むのではなく、五感を目覚めさせるために飲む」。そう語るのは、話題の書籍『フランス人はなぜ好きなものを食べて太らないのか』(日本経済新聞出版刊)の著者、ミレイユ・ジュリアーノ。ヴーヴ・クリコの米国現地法人クリコ社の開設に携わり、のちに社長兼CEOをつとめた彼女は、10代の頃、1年間の米国留学のあいだに10kg増量した経験を持つ。

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photography: shutterstock

書籍では、彼女が帰国後にドクターの助言のもと「フランス流のやり方」で体質改善に成功した方法をガイド。ジムには行かない、食事を抜かない、ワインも我慢しない......それなのに太らないフランス人のライフスタイルの秘密に迫っている。今回は書籍の中から、フランス人のワインとの付き合い方について紹介する。

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少量のワインは健康によい

シンプルであれ、とエスコフィエ(パリの伝説のシェフ)はアドバイスしているし、すべての偉大な料理人がそれを身につけている。この偉大な料理人は固形の食べ物について言っているのだろうが、わたしの意見では、液体の食べ物についてもあてはまると思う。つまりフランス人がワインをどうみなしているか、ということについてもだ。

ワインにはカロリーがある。栄養素がある。香りがある。アルコール飲料としての潜在能力は、フランス人の考えでは(あるいは飲むときには)あまり重視されない。たいていのフランス人は、ワインを聖なる贈り物だから、むだにせずに楽しむべきだと考えているのだ。フランスの詩人ボードレールは、人間の作りだしたものからワインが消えたら、人間の健康と知性に大きな穴が空いてしまう、そして、その穴は罪悪感を覚えるあらゆる不摂生よりも始末に悪い、と言っている。ワインは五感を鈍らせるために飲むのではなく、五感を目覚めさせるために飲むのである。そして、それは食べ物を楽しむためにはきわめて重要なことである。

幼少のときから、あらゆるものにおいてシンプルさが大切だということを教えてくれた母は、シャンパン以外の食前酒を出したことがなかった。母の見解は単純明快だった。強い酒にはバーが必要だ、特別な用具、各種のグラス、そのうえ面倒なシェイクやステア。さらに重要なのは、それは味蕾をくすぐるというよりも麻痺させてしまうということ。お客のために時間と金を費やしておいしい食事を用意したのなら、それをきちんと味わえないような状態には絶対にしたくない。そんなことになったら、会話におけるもっとも重要な話題を失ってしまうことになる!

長年ワインを味わってきたあとで、アメリカ人のあいだでこれとは相反する流行が兆していることに最近気づいた。強い酒を飲むことが復活してきているのだ。

特に若者のあいだでは、レストランのバーで待っているあいだに強い酒を注文することがあたりまえで、そのまま食事中も同じものを飲み続ける。そうした酒のアルコール量は、同じ量のワインの3、4倍なので、感覚が鈍るだけではなく、もっと多くのカロリーを摂取することになる。さらに自然な満足感も鈍り、当然もっと多く食べてしまうだろう。冴えない食べ物を出しているレストランがどうして生き残っているかは、これが理由なのだ(酒に対する利益率は、食べ物に対するよりもまちがいなくずっと高いのである)。

あなたがまだワインの喜びに開眼していないなら、世界中のおいしいものを味わう味蕾を奪われているわけで、おそらく、その埋め合わせに食べすぎになりがちだろう。ワインは食事の完璧な相棒であるばかりか、精神を刺激する複雑な味の組み合わせを創造し、はるかに満足するひとときを提供してくれる。

さらに食事の儀式的な価値を高め、食べることを別の観点から見せてくれる。ワインは真剣で陽気で洗練された贅沢な雰囲気をかもしだしてくれ、ぼんやりと、いい加減な気持ちで食べる傾向を払拭してくれる(ワインのボトルを開けるなら、テレビの前で食べることはありえないはずだ!)。

毎日少量ずつ、常に食べ物といっしょに飲めば、ワインは健康にも役立つ。なお、フランス女性は、カクテルのようにシャルドネのワインだけをちびちびすすっているのは実に奇妙だと考えている。ワインの完全な味は、しかるべき食べ物と組み合わされたときに初めて発揮されるのだ。

たいていのアルコール飲料よりもカロリーが少ないだけでなく、上等なワインは栄養素に富み、血液をさらさらにして、血圧を下げ、悪玉コレステロールを減らす効用がある。心から楽しめるばかりか、そういう効能のあるものが他にあるだろうか?

アメリカ人にとっての問題は、おじけづくこと―「どのワインを選ぶべきか」。あるいはまちがった観念―「ワイン?ああ、もちろん、特別なときには飲むよ」。おもにこのふたつだろう。

フランス人にとって、ワインは日常生活の一部で、大半の人々はワインの選択について大騒ぎしない。実際、たいていのフランス人は自分の住んでいる地方のワインしか知らない。それでも、それがフランス女性が太らない重要な理由だと信じている。

子供たちにワインの味を教えることは、フランスではごくありふれたことだ。わたしたちは両親が食事ごとにワインを飲むのを見ていて、自然に味見をしたいと思うようになる。

たいていはまず日曜の昼食に、水で割ったものをほんの少し出される。だが、ときにはいたずら心が勝つこともある。親戚たちと、とても長い食事をとったときのことは今でも覚えている。

子供たちは大人たちが庭に足を延ばしに行ってしまうまで待っている。それから誰もいない食堂にこっそり忍びこんで、完全に空になっていないグラスやボトルをとってくるのだ。シャンパン、白、赤、デザートワイン―すべてが混ぜあわされ、大急ぎでみんなに回された。たいてい、酒盛りは長く続かなかった。だが、それでも十分だった。大人たちにばれるまでに、子供たちはすでに気持ちが悪くなっていて、昼食をもどした者もいた。それでも、これは早く学んで損はない教訓だった。

「適量を飲み、混ぜて飲まないこと!」

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『フランス人はなぜ好きなものを食べて太らないのか』
ミレイユ・ジュリアーノ 著(羽田詩津子 訳)
¥990(日本経済新聞出版刊)

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