ドーバー ストリート マーケットが誘う、美しきカオスの探検。【パリの永遠の名所を歩く】
Paris 2025.04.27
モードを超えたカルチャー拠点として発信。
Dover Street Market Paris
ドーバー ストリート マーケット パリ〈4区|マレ〉
上:ジョージア出身の画家ニコ・ピロスマニの時代を超えた芸術性を称える、中庭のインスタレーション。 下:バロック様式の吹き抜け階段。パリらしい歴史的建造物は内装もオリジナルを生かしている。
〝美しきカオス〞をコンセプトに掲げるドーバー ストリート マーケット。ロンドンの第1号店開業から20年後にあたる2024年5月、世界8店舗目となる新たな扉がパリに開かれた。
建物は1627〜34年にかけて建てられた、書簡作家で貴族のセヴィニエ侯爵夫人のかつての邸宅。ショーウィンドーもなく、足を踏み入れなければストアとはわからない。通りに面する石畳の中庭に設置された円柱のインスタレーションが道ゆく人々の目を奪い、館内へと誘う仕掛けだ。バロック様式の石の階段と錬鉄の手すり、数世紀の間に塗装が繰り返されたフロアと天井に、歴史の片鱗が色濃く残る。
壁はほとんどが白で統一されているが、なかには意表を突く色彩も。迷宮的な回路から空間、カフェの什器まで川久保が手がけた。
3フロアで構成される1100平米の店舗。内装は川久保玲がデザインを手がけた。フロア内には、カーブを描く壁で仕切られた楕円形のスペースが点在。洋服はその壁の内側に陳列されているため外からは見えず、各スペースを渡り歩くと、モードの森へ迷い込んだかのような感覚に陥る。他7店舗とは異なり、ブランドごとにディスプレイされていないのも特徴。来店者は探検へと導かれ、偶然の発見へと誘われるのだ。
上:フィービー ファイロ2024-25年秋冬コレクションは、限定店舗での 世界初の取り扱いとして話題を呼んだ。 中:ヴィンテージブックの 販売を行う1909によるブックコーナーも併設。 下:ラグジュアリーブ ランドのスペースも複数のブランドが交ざり合い、アイテム別で並ぶ。
新進気鋭ブランド、ポンテによる廃 棄布で構成した作品。インスタレーションは2~4週間ごとに替わる。
カフェが併設され、中庭と地下のスペースではアートや文学、音楽のイベントを実施。モノを購入する場としての役割を超えて、多様なジャンルの人々が集う文化的拠点として存在する。モードの聖地パリと呼応する〝美しきカオス〞は、新たな価値を生み出す創造の神殿として産声を上げた。
ドーバー ストリート マーケット パリ〈4区|マレ〉
35-37, rue des Francs-Bourgeois 75004 ★Google Map
01-84-75-05-00
Ⓜ︎ST PAUL
営)11:00~19:00(月~土)、12:00~19:00(日)
無休
https://www.doverstreetmarketparis.com/
パリ在住ジャーナリスト。大学を卒業後、ニューヨークに渡りファッションライターとして研鑽を積む。2016年からパリに拠点を移し、欧州のコレクション取材やライフスタイルの執筆を手がける。日本のモード誌のほか、イギリス、中国、ウクライナの媒体にも寄稿する。 @elieinoue
*「フィガロジャポン」2025年5月号より抜粋
●1ユーロ=約162円(2025年4月現在)
●日本から電話をかける場合、フランスの国番号33の後、市外局番の最初の0を取ります。フランス国内では掲載表記どおりかけてください。
●各紹介アドレスのデータ部分のは地下鉄の駅を示しています。
●掲載店の営業時間、定休日、商品・料理・サービスの価格、掲載施設の開館時間やイベントの開催時期などは、取材時から変更になる可能性もあります。ご了承ください。
photography: Taisuke Yoshida text: Elie Inoue