デュカス・バカラ、クリスタルと食とアートが奏でる美。【パリの永遠の名所を歩く】
Paris 2025.04.27
創造的に調和する、クリスタルと食とアート。
Ducasse Baccarat
デュカス・バカラ〈16区|トロカデロ〉
卓越した技術でクリスタルの洗練を極め、輝かしい歴史を誇るメゾン バカラ。2024年に創設260年を迎え、フランス料理の巨匠アラン・デュカスとのパートナーシップを結び、パリの拠点メゾン バカラをデュカス・バカラへと生まれ変わらせた。
レストランの内装は、ジャン=ギヨーム・マティオがオークの落木で作ったパーテーションと天井から不揃いに吊り下げられたクリスタルライトの雫で、森の中を想起させるよう。
建物は、20世紀の「社交界の女王」とも呼ばれたノアイユ子爵夫人が長年住んだ19世紀建造の大邸宅。コクトー、ダリ、サンローラン、ディオールなど、時代を築いた多くの芸術家が集う場所でもあった。
伝統に革新を重ね、時代とともに進化し続けてきたメゾン バカラ。「創造力に富んで先見の明があり、誰もが認めるフランス料理の伝道師デュカスと、新たな価値を生み出していきます」と、メゾンの前CEOマギー・エンリケスは喜びを語った。
上:バカラ村の教会のステンドグラスにオマージュを捧げた「光の礼拝堂」は、M.O.F.の職人ピエール・タタンの作品。礼拝堂を抜けると庭園 があり、春夏公開予定。テラスも開設される。 下:エントランスはクリスタルの制作工程などを壁に刻んだハリー・ヌリエフの壁画が彩る。
デザイナーのマルセル・ワンダース が考案した「モニュメンタルベー ス」と、ジャン=ギヨーム・マティオに よるオーク材作品(左)が共演。
新生デュカス・バカラは、現代アーティストを大胆に起用した斬新な空間だ。建築家兼デザイナーのハリー・ヌリエフによる、斬新なグラフィティを刻み込んだ壁や、森の彫刻家と称されるジャン=ギヨーム・マティオが制作したオーク材の家具。螺旋階段の踊り場には、マルセル・ワンダースによる巨大な花器が据えられ、天井を見上げれば9000ピースが煌めくシャンデリア。これは1855年にパリ万国博覧会で発表された伝説的なモデル「トゥズラ」で、時代を繋ぐ傑作だ。
重さ1tの巨大なシャンデリアは、デュカス・バカラの象徴。
デュカス自身のコレクションであるアンティークグラスが惜しげもなく飾られている。
レストランはデュカスのホスピタリティがあふれる。アンティークの蒐集家でもあり、バカラのグラスをはじめとする自身の貴重なコレクシ ョンを飾り、自宅に招くように。フランスのテロワールを料理を通して語ることが使命と、料理人人生のスタートを振り返る小冊子も作る。鴨のコンソメ、オマールエビのバラ風味、イチジクの葉で包んだナスのコンフィ......バカラの食器を起用した美しい料理に、フランスの食の豊かさ、奥深さをあらためて体感する。
併設するバー、ミディ-ミニュイでは、バカラの多彩なグラスを生かしたカクテルが楽しめる。グラスのフォルムから着想を得たレシピはすべてオリジナル。空間とアートピース、料理と食器、カクテルとグラス。クリスタルが発するひとつひとつの輝きは、芸術へと昇華されるよう。














Ducasse Baccarat
デュカス・バカラ〈16区|トロカデロ〉
11, place des États-Unis 75116 ★GoogleMap
Ⓜ︎BOISSIÈRE
レストラン「アラン・デュカス バカラ」
01-84-75-13-15
営)12:00~13:30 最終入店、19:30~21:30最終入店
無休 要予約
バー「ミディ-ミニュイ」
営)12:00~23:30 最終入店
無休
ブティック・バカラ
01-40-22-11-22
営)11:00~19:00
休)日
https://www.ducasse-baccarat-paris.com/
在仏30年の食ジャーナリスト、翻訳家。「ワインと食卓の女性騎士団ODVT」会員。日仏の食文化を繋ぐ事業も展開。12区のatelier DOMAでは、和庖丁を通して日本の研ぎ文化を伝えるとともに、日仏の食文化の交流に努める。
*「フィガロジャポン」2025年5月号より抜粋
●1ユーロ=約162円(2025年4月現在)
●日本から電話をかける場合、フランスの国番号33の後、市外局番の最初の0を取ります。フランス国内では掲載表記どおりかけてください。
●各紹介アドレスのデータ部分のは地下鉄の駅を示しています。
●掲載店の営業時間、定休日、商品・料理・サービスの価格、掲載施設の開館時間やイベントの開催時期などは、取材時から変更になる可能性もあります。ご了承ください。
photography: Taisuke Yoshida text: Aya Ito