パリ9区の細道にオープンした炭火焼きの「炎」で焼き鳥を!
Paris 2025.05.13
20時を過ぎる頃になると、若いフランス人たちが次々とHONŌ(炎)にやってくる。Hを発音しないフランス人が"オノー"と呼ぶこの店は、2月半ばに9区にオープンした焼き鳥と小皿料理のレストランだ。飛行機代を払わずに日本の居酒屋に行く。そんな感じなのだろうか。知らない土地を遠足する子供のように、皆、はしゃいでいる。
オノーを開いたのはバンジャマン・モレールとクリストファー・プレシェで、彼らが大阪で発見した焼き鳥バーからインスピレーションを得たという。シンプルな外観が秘めている店内は、通りに面したスペースと通路の奥に広がるスペースからなる。木素材を使い日本的な内装でまとめられ、日本のどこかにありそうな店、という雰囲気だ。棚にはコケシ、だるまといった日本の居酒屋の典型的装飾品を並べ、暖簾を掛けて......。



メニューは備長炭を使った焼き鳥や野菜の串焼き、そして小皿料理だ。セットメニューが3種あり、初心者のフランス人でも途方にくれることがない良い組み合わせで構成されている。アラカルトでの注文ももちろんOK。杉浦アキラ・シェフはイタリア料理にも精通していることから、つくねにスカモルツァのスライスを重ねて味と食感の個性を加えたイタリアンタッチの焼き鳥もクリエイトすれば、フランス人にとって焼き鳥の代名詞のようなチーズの牛肉巻きには、トリュフ味ゴーダチーズを使うなど、とちょっとしたプラスを。また、ねぎ焼きにはお好み焼きソース、その上に鰹節を乗せて......。最近では"カツオブシ"がなんであるかを知ってるフランス人も少なくなく、結構上手に発音もできている。フランス人の好みを意識してだろう、比較的甘口のタレのものが多い。そんな中でジューシーな鶏のもも肉には5種のスパイスがブレンドされ、キリッっとした味が魅力だ。



なおセットメニューには必ず"炎ライス"がついてるのだけれど、これは何かというとふりかけご飯のこと。この"ふりかけ"も近頃のフランス人のお気に入りの一つである。アルコール類は日本酒、日本のビール、梅酒や日本のウイスキーなどに加え、フランス・ワインもグラスかボトルでオーダーできる。
焼き鳥とうたっているものの、鶏はつくねともも肉の2種で、あとは野菜ありポークありとバラエティに富んだおいしい炭火焼。楽しそうに食べているフランス人を見ていると、ハンドロールが人気のパリで、次のブームは焼き鳥だろうか、という気がしてくる。いずれにしても、円安の時期を利用して日本を旅して和食に目覚めるフランス人が増えているいま、パリで和食ブームが当分続くのは間違いなさそうだ。




HONŌ
70, rue de Dunkerque
75009 Paris
営)19:00~23:00(火~金)、12:00~23:00(土)
休)火曜~金曜ランチ、日
@honoyakitoriparis
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editing: Mariko Omura