【パリ レストラン】アンヴィ・ル・バンケ、グルマンを唸らせ迷わせる盛りだくさんのビュッフェ。
Paris 2025.10.07
パリでOrgueil(傲慢)、Colère(怒り)という7つの大罪がらみの店名を持つボナロワ・グループのレストラン2軒においてシェフを務めるエロワ・スピンレー。エプロンの上にキッチンで使う複数のナイフを収めたハーネスをつけた姿がトレードマークのようになっている。その彼の3軒目のレストランEnvie le banquet(アンヴィ・ル・バンケ)がマレ地区にオープンした。
"バンケット欲"的な意味で、2フロアからなる500平米の広いレストランだ。ここはビュッフェ形式という新しいコンセプトの店で、約100種類の料理のセレクションが食事客を待っている。セルフサービスできる内容は、野菜の前菜、海産物、シャルキュトリィ、メインディッシュ、チーズ、デザート、5種類のパンといった構成。オープンキッチンで注文に応じて用意されるメインディッシュは1皿ごとの量が少量なので、一度に1皿しかオーダーできないものの、オーダー列に繰り返し並んで複数を味わうことができる。またスタンドに並べられた冷たい料理類は毎回4~5回補充されるので、食いしん坊たちも"この空のお皿には何があったのだろう???"と謎に包まれることがない。
左:タンプル通りとポルトフォワン通りのコーナーを占めるレストラン。 右:レストラン内、ビュッフェ料理が並ぶのは入口があるポルトフォワン通りに面した側だ。photography: 左 Mariko Omura、右 @Pierre Lucet Penato
食べ放題のビュッフェ形式というと、あまり上質なイメージがないけれどアンヴィ・ル・バンケはバンケット(饗宴)という店名に違わず、妥協なしに厳選された素材を味わえる。環境への配慮そして地元生産者の支援のために、エキゾチックな野菜や果物、遠洋漁業の魚などは使用を避けているそうだ。季節の素材に拘り、廃棄物ゼロを実践している。万が一残った料理のために、学生を援助する協会と提携をしているそうだ。テーブルに案内されると、そこに待つのは赤い小冊子。一階のビュッフェの配置図、素材の生産者紹介、廃棄物ゼロの取り組みについての解説などが記されている。ビュッフェ・スタンドに駆けつける前に、オーダーした飲み物を待ちながら目を通して見るのもいいだろう。
左:ドリンクメニューとともにテーブルには赤い小冊子が用意されている。 右:食事例。食べ方は自由なので、前菜の後メインを取りにゆくもよし、一度に前菜もメインもテーブルに運ぶもよし。photograph: 左 Mariko Omurra、右 @Pierre Lucet Penato
左:ネギのマリネ、フームス、マセドワンヌ・サラダ......ベジタリアンが喜ぶ品揃え。 右:シャルキュトリーや最近流行りのパテ・アン・クルートの種類がとても豊富に揃えられている。@Pierre Lucet Penato
左:シェフの向かいが冷たく保たれるべきタラマ、グラヴラックス、牡蠣などのコーナー。その右手がチーズ。 右:デザートは、セドリック・グロレのもとで経験を積んだレオ・コルトンが担当している。@Pierre Lucet Penato
シェフのエロワとエグゼクティブシェフのアントワーヌ・アンリィが温かいメインディッシュを担当。オープンキッチン前に並び、オーダーは1回に1皿が原則。シェフにボンジュールの一言を忘れずに! メインディッシュは季節にもよるが、いまなら仔牛のブランケット(写真右)、野菜のタタン、ロースト・チキン、季節の素材のオムレツ、鳥のケバブなど。photography: 左 @Pierre Lucet Penato、右 Mariko Omura、
12時から15時のランチタイムは月曜から金曜がL'Escapade du déjeuner(エスカパッド・デュ・デジュネ/37ユーロ)、土日はLe Festin du Weekend(ル・フェスタン・デュ・ウィークエンド/54ユーロ)といって平日のランチの内容に加えて、スクランブルエッグ、オレンジジュース、牡蠣、ヴィエノワズリーがスタンドに並び、さらにホットドリンク1杯も料金に含まれる。19時から24時のディナータイムは日曜から木曜がLe Banquet du soir(ル・バンケ・デュ・ソワール/54ユーロ)、金土はLes Grands Soirs(レ・グラン・ソワール/59ユーロ)でこれには牡蠣など通常のディナーには含まれない品もスタンドに並ぶ。4パターンあるビュッフェ。いつ行っても後悔がないものであり、また1度体験すると次は別のパターンも試してみたくなる。なお、5歳以下の子供は無料。5歳以上10歳以下は大人料金の半額という設定だ。レストラン内、半数は予約者席、半数は予約なし客席なので思い立った時に行くこともできるのも嬉しい。
ナイフを鞘に収めたハーネスとエプロン姿で有名なシェフのエロワ。ここは地上階の扉の裏に隠された"チャペル"と呼ばれ、16名が饗宴を楽しめる部屋。@Pierre Lucet Penato
内装は建築スタジオのDorrénavant Studioに任された。広い店内は複数の空間に分かれ、それぞれ雰囲気が異なるインテリアだ。@Pierre Lucet Penato
セルフサービスであることから、ついあれこれとお皿に盛りがちになるのがビュッフェ形式の食事。生産者や料理人たちへの敬意を込めて取り過ぎることなく、食べ残しのない食事をするようにしよう。なお、食後には食卓ごとにポラロイド撮影というサプライズが用意されている。
148, rue du Temple
75003 Paris
営)12:00~15:00、19:00~24:00
無休
https://lebanquet.paris/fr/
★Google Map
editing: Mariko Omura