モンマルトル最古のレストラン、19世紀末にタイムスリップしてパリ旅行の思い出に。

Paris 2025.11.10

このレストランを体験せずにパリ旅行を終えてしまっては惜しい。雰囲気、料理、サービスよしと三拍子揃ったLe Bon Bock(ル・ボン・ボック)を紹介しよう。小さな通りにその小さなビストロがオープンしたのは、1879年。その20年前に12区あったパリが20区まで広がり、大勢のアーティストたちが家賃の高い中心部からまだ開発されていなかったモンマルトルに引っ越してきていた。サクレ・クール寺院の工事が少し前に始まったという頃、モネ、ロートレック、マネ、ゴッホ、ピカソ、ドガ......ベル・エポックの時代、界隈に住むアーティストたちが通ったレストランが、このル・ボン・ボックである。店名についているボックとは1/8リットルのビール用のコップのことだ。

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その昔画家たちが通ったビュット・モンマルトルの麓のル・ボン・ボックは地元民にも観光客にも愛されている。photography: @sam.moreel


最近新たなオーナーに変わり、21世紀に見事に蘇った......と言ってもコンテンポラリーに作り変えられたのではなく、まるで時間が止まったかのように19世紀末のパリにいる気分にさせるレストランとしてだ。平日は夜だけの営業で、夜の暗がりに赤いテントと小さな照明が誘い掛ける外観。扉を開くとカーテンの奥に細長い空間が続いている。両サイドの壁を満たすのは、大小様々な絵画だ。行儀よく並んだテーブル席はさほど余裕がないけれど、おいしい食事を前にすればそれも気にならず。ギャルソンたちの温かく気の利いたサービスは、快適な食事時間作りに一役買っている。かつてパリのレストランの年配のギャルソンたちのサービスは気配りもなく、余計な仕事をしたくないという態度のことが多かったものだが......と比較せずにはいられない。

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左:入り口。モンマルトルの丘の麓ゆえ店のある通りは坂道だ。 右:店内に入るや、19世紀末にタイムスリップ! photography: @sam.moreel

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壁には絵画が多数壁に掛けられている。中にはニガヨモギを材料にしたリキュールのアブサンの昔の広告が。アルコール度が高く、安く酔えるとあって19世紀末の画家たちに愛されたが中毒性が強く精神を蝕まれる人も多く出たことから、1915年法によって製造が禁止された(2015年解禁)。 photography: 左 @sam.moreel、右 Mariko Omura

メニューに並ぶのは、観光客を喜ばせるフランスらしい料理ばかりだ。前菜はエスカルゴ、ハニーとタイム味のハーフ・カマンベールのロースト、パテ・アン・クルート......メインはモリーユ茸のスープレーム・チキン、マグレ・ドゥ・カナールなど。デザートはというと、タルト・タタン、キャラメル塩バターのシューア・ラ・クリームというように。なお、こうしたフレンチ・クラシックに加え、シーズンの素材を生かした創作料理も魅力的だ。いまの時期、前菜にはブルターニュのアーティチョーク、メインの野菜料理にはかぼちゃのファルシーやイチョウガニのラヴィオリなど。

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オーセンティックな前菜。8.50ユーロ〜。 photography: @sam.moreel

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メインは魚料理もあるが、比較的シンプルな肉料理が多い。photography: @sam.moreel

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左:季節の料理は、きのこ、レンズ豆、トリュフクリームを詰めたかぼちゃ。16.90ユーロ。 右:ボリュームたっぷりのデザートで締めくくる、満足の食事。9.90ユーロ〜。photography: 左 Mariko Omura、右 @sam.moreel

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平日がディナーだけなのに対し、ウィークエンドは12時にオープンしたら閉店までノンストップ営業。旅先では町歩きに夢中になってランチタイムを逃してしまうことがよくあるものだ。そういう時にも、この店を思い出して欲しい。ラストオーダーは日にもよるかもしれないが、基本は23時30分だという。それもあるのだろう。この店は観光客ばかりではなく地元民にも愛されている。奥には貸切可能な部屋があり、仲間と一緒にパーティ気分で盛り上がるのがいまのお気に入りというパリっ子たちもル・ボン・ボックが大好き。この部屋にはピアノが置かれ、木金土の夜はピアノの生演奏があるそうだ。

歴史がもたらす良い面を生かしつつ、いまの時代の食事客向けにレストランを蘇らせたのは、バンジャマン・モレールとクリストファー・プレシェのデュオ。数年前、レ・アールのLe Petit Bouillon Pharamond(ル・プティ・ブイヨン・ファラモン)をオーセンティクな雰囲気を守りつつ、若い客で満員になる店に変身させたことで話題を呼んだ二人である。最寄りの地下鉄駅はAnvers、Pigalle, Abbesses。スイーツでおなじみのマルティール通りからもそう遠くない。

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左:ピアノを置いた奥の部屋。 右:バンジャマンとクリストファー、そして彼らアソシエートのアドリアンの3名がル・ボン・ボックを蘇らせた。photography: @sam.moreel

Le Bon Bock
2, rue Dancourt
75018 Paris
営)18:30~23:30(水~金)、12:00~23:30(土、日)
休)月、火
@lebonbock_montmartre

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editing: Mariko Omura

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