この冬最高のモード展、アライアが収集したディオール100点を前に至福の時間を。

Paris 2025.12.05

8年前に偉大なるクチュリエ、アズディン・アライアが亡くなり、彼が収集していたクチュールピースのコレクションが遺された。集め始めたのは1968年にバレンシアガがメゾンを畳んだ時で、亡くなるまでに集めた点数は約2万点近いとか。現在アズディン・アライア財団がコレクションを保管している。2023年秋から24年にかけてガリエラ美術館で『Azzedine Alaïa Couturier collectionneur(アズディン・アライア、コレクターのクチュリエ)』展が開催され、すでに彼のコレクションの一部は公開済みである。この展覧会ではマティスによる舞台衣装の展示もあり、ただひたすらアライアの収集熱に驚かされたものだ。

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いつ行っても楽しめるラ ギャラリー ディオール。クリスチャン・ディオールのオフィスの再現や、出口へと向かう螺旋階段から眺めるコロラマなど常設の展示も見逃せない。photography: Mariko Omura


彼のコレクションには、ディオールだけで約600点も含まれていた。いま、ディオールのパリ本店に隣接するLa Galerie de Dior(ラ ギャラリー ディオール)では、アズディン・アライア財団とタッグを組み、その中からの100点を初公開する『アライアが収集したディオール』展を開催中だ。ディオールに対するアライアの称賛と敬意が感じ取れる感動的な展覧会である。

クリスチャン・ディオールが自身のクチュールメゾンを創設する以前にデザインした服もあれば、イヴ・サン=ローラン、マルク・ボアン、ジョン・ガリアーノなどムッシュ ディオールの後継者たちの服も含まれている。祖国チュニジアにいた時代に愛読していたフレンチ・ヴォーグ誌を介して、アライアはディオールの仕事に惹きつけられるようになったそうで、ファッションの仕事をするためにパリに引っ越してきた1956年、ディオールのメゾンで数日間だけ働く機会を得たのだ。ショーの直前の時期でメゾン内は沸きたつような活気で満たされていたと彼は回想しているが、この貴重な数日間に、翌年に亡くなるムッシュ ディオールと彼はすれ違うことくらいできたのだろうか......。

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展示されているアライアのコレクションから。(左):左はMadame Nectouxによる1910年頃のクチュールピース。アライアがオートクチュールに傾ける情熱を示す一点だ。右はクリスチャン・ディオールによる1950年春夏 オートクチュール コレクションより"垂直ライン"のドレスRose des vents。 (右):ロベール・ピゲのメゾンでディオールがデザインした内側が毛皮のウールコート。1939〜40年頃。右は大戦後に雇われたリュシアン・ルロンのメゾンで1945年秋冬クチュールコレクションのためにディオールがデザインしたビロードとシルクのドレス。photography: Mariko Omura

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モンテーニュ大通りのブティック内にクリスチャン・ディオールが設けた小物を販売するミニ・ブティック「コリフィシェ」。この展示の背景のように、壁がトワル ドゥ ジュイで覆われていた。左のナイロン・タフタ素材のコートはディオールがミューズのミッツァ・ブリカールにインスパイアされたパンサー柄。1950年頃に「コリフィシェ」で販売された。©Adrien Dirand

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ディオールが愛した庭をテーマに刺繍やプリント、織模様などが描き出す花々にうっとりさせられる。展示中、イヴ・サンローラン、マルク・ボアン時代のドレスも少なくない。photography: (上)©Adrien Dirand、(下)Mariko Omura

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グランヴィルの家を背景に並ぶドレスの中、左から2点目は今回の展示中一点だけのラフ・シモンズ時代のドレス。中央のポエジーあふれるドレスは1955年春夏クチュールコレクションの"Aライン"のソワレFete au village。photography: ©Adrien Dirand

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会場で来場者を迎え入れるのは、いつものように1947年のファーストコレクションのニュールック。そして展覧会の最初のテーマ「クリスチャン・ディオール(1905~1957年)」から早くも、アライアが集めたディオールを鑑賞できる。展示されているアライアのコレクションからの服には、アライア財団のロゴである大文字のAが説明の右肩に付けられているのでわかりやすい。続く「魔法の庭」、「アリュール」、「ドレスの小説」、「ディオールのカラーチャート:赤、ピンク」、「ディオールのカラーチャート:黒、青、緑」、「服の建築」、「ディオールの舞踏会」、「ミス ディオール」のテーマは、ほとんどがアライアの収集品で構成されていて見ごたえたっぷり。ディオールによるクロッキーや布見本まで展示されている服がある。アライアのコレクションピースを通じて、クリスチャン・ディオールがクリエイティビティを見事に開花させた10年、彼の後継者たちがメゾン創立者への敬意と愛を込めて紡ぐメゾンの歴史に改めて目を向けさせる展覧会だ。

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「アリュール」photography: ©Adrien Dirand

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「服の小説」photography: ©Adrien Dirand

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「カラー・パレット 赤・ピンク」photography: ©Adrien Dirand

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「カラー・パレット 黒・青・緑」photography: Mariko Omura

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「服の建築」。下段の写真左はクリスチャン・ディオール(左)の1955年秋冬 オートクチュール コレクションからYラインのアンサンブル「Surprise」。後方は2005年春夏 オートクチュール コレクションからジョン・ガリアーノによるディオール。写真右はイヴ・サンローランによるディオールのスーツ「Maillot」。1959年春夏 オートクチュール コレクションより。photography: 上段 ©Adrien Dirand、下段 Mariko Omura

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「舞踏会」では手前の10点がアライアのコレクションから。photography: Mariko Omura

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「ミス ディオール」のテーマではエヴァ・ジョスパンの作品『Miss Dior』(2022年)の前に、1952年春夏 オートクチュール コレクションの"うねりライン"のドレス「Octave Feuillet」。photography: Mariko Omura

この展覧会と並行して、マレのアズディン・アライア財団で12月15日から2026年5月3日まで『AZZEDINE ALAÏA ET CHRISTIAN DIOR, Deux maîtres de la Haute Couture』展が開催される。こちらではアズディン・アライアのコレクションから約30点のクリスチャン・ディオールの作品と、アライア自身の作品を同数程度並べて展示。クチュリエのキャリアのスタートをディオールのメゾンで始めたアライアの作品に、クリスチャン・ディオールの影響がどのように表現されたかを示す展覧会だ。

『La Collection Dior d'Azzedine Alaïa』展
開催中~2026年5月3日まで
La Galerie Dior
11, rue François 1er
75008 Paris
開)11:00~19:00(最終入場17:30)、niveau2のカフェ ディオールの営業は11:00~18:30
休)火、1月1日、5月1日、12月25日
料)14ユーロ(予約が望ましい)
https://www.galeriedior.com/ja


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editing: Mariko Omura

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