パリのプティ・ミュゼで、彫刻家ザッキンとアール・デコとアイリーン・グレイ。

Paris 2026.02.17

2025年はアール・デコ展開催の100周年ということで、アール・デコがらみの展覧会がフランス国内で多数開催された。パリのザッキン美術館では昨年11月に始まった『ザッキン アール・デコ』展が4月12日まで開催されている。かつてロシア出身の彫刻家Ossip Zadkine(オシップ・ザッキン/1897~1967年)が妻と暮らした家、アトリエ、庭がパリ市に寄贈され、美術館となっている場所だ。リュクサンブール公園、モンパルナスの近くなのでちょっと時間ができたら、立ち寄ってみてはどうだろうか。1920~30年代と年代を区切り、かつアール・デコのムーブメントに絡めた展覧会は、ザッキンの仕事を発見する良い機会に違いない。

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左:庭も魅力のザッキン美術館。 右:雪花石膏とガラスを素材にした『鳥』(1927年)。1920年代の彫刻を入り口でいくつか展示している。photography: Mariko Omura


90点近い作品を展示するこの展覧会は、ザッキンのアール・デコ期の活動にフォーカスが置かれている。アイリーン・グレイを始めとする、この時期の偉大なデコレーターたちと彼との、あまり知られていない関係については敷地内の別棟でかつてザッキンのアトリエだった空間を使っての展示だ。1910年にロシア(現ベラルーシ)からパリに来た彼にとって1920年代というのは、初の個展の開催や結婚があり、彼のルネッサンス期。5つのセクションで構成された展覧会は、この1920年代から始まる。最初のセクション「1920-1930年:アール・デコの転換点」では、彼が彫刻を彩色することや、金箔や漆のテクニックに関心を抱いたことを紹介している。

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第一セクションより。中央にザッキンの『Pomone』を配置し、その周囲に漆や金箔の作品を他作家も含めて展示。photography: @muséeZadkine-ParisMusée_NicolasBorel

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左:手前は砂川漆工房による漆の肘掛け椅子(1915年ごろ)、その後方の壁にはザッキンの作品『ひそひそ話』(1925年)が下絵のタピスリー。 右:石膏にペイントと金箔を施した、ザッキン作『金の鳥』(1924年)。photography: Mariko Omura

ふたつ目のセクションがフォーカスを置くのは、建築物のためのザッキンの彫刻だ。1930年代は、建築家やデコレーターたちが室内装飾のために画家や彫刻家に仕事を依頼することが多かった時代。ザッキンもアトリエの枠から出て行う仕事に意義を見出し、ネオクラシックな個人邸宅、モダニズム様式の市庁舎、ベルギーのブリュッセルの映画館のファサードや館内などのために浅浮き彫りを製作した。

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ブリュッセルの映画館Métropoleのレリーフの仕事をするザッキン。1932年ごろ。Paris, archives du musée Zadkine

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左:左は個人邸宅のための室内装飾を担当したアンドレ・グルーがザッキンにオーダーした『女性と犬』(1927年)。右下は暖炉用の女人像柱(1922年)。 右:キュビズムの影響が見える半円型の浅浮き彫り。フィラデルフィアの有名なアートコレクター、アルバート・C・バーンズからバーンズ財団の建物のために1922年にオーダーされた。photography: Mariko Omura

3つ目のセクションは、1925年の現代装飾美術・産業美術博覧会(通称アール・デコ展)におけるザッキンの参加を紹介している。この時期、彫刻界の巨匠はアントワーヌ・ブールデルで、37歳のザッキンは世間にはまだ知られていなかった。しかし彼の彫刻に注目していた美術評論家エマニュエル・デュ・チュベールから、この世界博覧会の会場のための仕事が彼やポンポンを含む複数の彫刻家たちに依頼されたのだ。チュベールが発刊した雑誌「La Douce France」の名を取り、『ラ・ドゥース・フランスのパーゴラ(庭の蔓棚)』と題されたのは、チュベールがその回帰を唱えていた石の直接彫りによるレリーフ16点が飾るパーゴラだった。博覧会後解体され、1935年以降、エッソンヌ地方のエタンプの公園に保存されている。1995年に修復され、2005年から一般公開されている。現存する1925年のアール・デコ展の希少なモニュメントのひとつだ。

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Marc Vauxが1925年に撮影したエスプラナッド・デザンヴァリッドに設けられた『ラ・ドゥース・フランスのパーゴラ』。©Fonds Arlingue/BHVP/Roger-Viollet/Roger-Viollet

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展覧会場ではパーゴラをミニサイズで紹介。ケルトの伝説をテーマにしたレリーフは16点あり、裏側の4点も見えるよう壁は鏡ばりだ。photography: Mariko Omura

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4つ目のセクションは、1937年に近代生活における芸術と技術をテーマにパリで開催された万国博覧会へと。この博覧会では会場の建築や装飾にフェルナン・レジェ、ソニア&ロベール・ドローネー、ラウル・デュフィなど多数の芸術家が参加している。ザッキンはセーヴル国立製陶所のパビリオンのメインギャラリーのための陶製のレリーフ制作を依頼された。この時の密なコラボレーションから、セラミックの可能性を彼は発見。1939年に完成する郵政省の建物のために、陶を素材にした制作を彼は行なっている。1930年代、ザッキンの作品には若い娘と鳥というテーマが繰り返し登場。それをテーマにした展示コーナーも設けられている。

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左:1930年代、ザッキンの作品には若い娘と鳥というテーマが繰り返し登場。それをテーマにした展示から。左はブロンズの『コロンブを抱いた若い娘』(1928-29年ごろ)。右はセーブル国立製陶所のパビリオンのタイルのレリーフのための『Le Tour(ろくろ)』(1937年)。 右:ガラスケースの中は、石膏の『鳥と若い娘』(1937年)。セーブル国立陶磁器美術館が所蔵している。その左の壁の写真は、1930年に雑誌「Illustration」のために撮影されたクチュリエでアートコレクターだったジャック・ドゥーセの自宅。その"東洋のキャビネ"にザッキンの『コロンブを抱えた若い娘』の金箔ブロンズ像が見える。photography: Mariko Omura

最後のセクションはザッキンの仕事に興味を抱いたアイリーン・グレイ、アンドレ・グルー、マルク・デュ・ニコラ・デュ・プランティエという3名のアールデコ・スタイルで有名なインテリアデザイナーとの友情物語だ。例えばアイリーン・グレイ(1878~1976年)。彼女の依頼で彼は様式化した彼女のポートレートである彫刻『女性の頭部』(1924年)を制作。ブルーの大理石の眼をはめ込んだ花崗岩の頭部で、グレイはこの作品を自身のアパルトマンで亡くなるまで大切に保管していたそうだ。

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会場では『女性の頭』像だけでなく、暖炉上にザッキンの作品を置いたボナパルト通りのアパルトマン内で撮影されたアイリーン・グレイの写真、および彼女がデザインした椅子も併せて展示。photography: Mariko Omura

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左側がマルク・デュ・ニコラ・デュ・プランティエがデザインした家具など。中央の像は彼の注文による『レベッカあるいは大きな水運び女』(1927年)。右がアンドレ・グローがデザインした家具とザッキンによるニコル・グルーの胸像。ニコルはアンドレの妻で、クチュリエであるポール・ポワレの妹だ。photography: @muséeZadkine-ParisMusée_NicolasBorel

『Zadkine Art déco』展
開催中~4月12日
Le Musée Zadkine
100bis, rue d'assis
75006 Paris
開)10:00~18:00
休)月
料)11ユーロ
https://www.zadkine.paris.fr/
@museezadkine

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editing: Mariko Omura

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