寒い夜はフランスのママンの味ブランケット・ド・ヴォーで温まろう。
立春を過ぎてパリは急に寒さがぶり返し、風が冷たいけれど空が高くて夜空が澄んでいます。
サロンのフランス人のお客さまマダムH(87歳)とエステの後にお喋りしていました。彼女の息子さんはスリランカのホテルの支配人で、奥さんと3人の子供とホテルに住んでいるので、食事はホテルのレストランに食べたいものを持って来てもらうそうです。ホテル内にはスパイシーなカレー料理、フレンチ、中華、日本料理など、幾つものレストランがあって家族各自がそのとき食べたい物を注文して、例えば息子さんは寿司、奥さんは中華、子供はイタリンなんてこともよくあるとか。
思わず私が「なら子供達にとってママンの味はないの?」と問うとマダムHはキョトン??
「ママンの味なんて時代遅れよ。私は息子のお嫁さんが料理に時間を取られなくて良かったと思う。現代女性は忙しいんだから、料理する暇があったらレストランで美味しい物を食べたり、舞台や美術館に行ったりした方がいいじゃない?」というのが、仕事をしながら4人の息子を育てた彼女の考え。共働きのフランスでは、ファム・ド・メナージュ(直訳で家事をする女性)と呼ばれる家政婦さんに家事をお願いするのはごく普通のことです。マダムHも献立は彼女が決めて、買い物や料理はファム・ド・メナージュにお願いしていたとのこと。
「じゃあ、マダムの息子さん達にとってママン味は?」と訊く私に、長ーい沈黙の後で「ガトー・ヨーグルト!!これしか作ったことがないから、息子達がすっごく印象に残ってるって言ってたわ♪」
毎日ごはんを作ると記憶に残らないけれど、一個しか作らなかったらずーっと覚えてもらえると彼女は満足そうに頷いていました。彼女みたいなお姑さんならお嫁さんは楽だろうなぁ(笑)フランスの男性は料理好きな人が多いし、いわゆる日本の「男をつかむなら胃袋をつかめ」説はフランス人には通用しないようです。
話が変わりますが、今週は月・水・木曜日と3人の友人が別々の日に夕食に来てくれました。気心の知れた人ばかりだし、平日に手の込んだ料理をするのは大変なので3回とも同じ献立にしてしまいました。私は同じでも彼らには分かんないしね(^^;;
前菜は予め作っておいたナスのマリネ、ハム、モッツァレラなど簡単なものばかりで。
メインは日曜日に大量に煮込んだブランケット・ド・ヴォー。それを毎回温め直すだけ。自分が飽きないように、付け合わせだけピラフ、パスタ、茹でたジャガイモと変えました。
ブランケット・ド・ヴォーは仔牛肉を煮込んだクリームシチューのようなフランスの家庭料理で、それぞれの友人の反応が面白かった。
月曜日の友人N:大好物だよ!ママンが作るブランケット・ド・ヴォーは絶品なんだ。
水曜日の友人V:体が温まるよ。妻が作るブランケット・ド・ヴォーも美味いんだよ。
木曜日の友人P:冬はやっぱりブランケット・ド・ヴォーだよね。僕もときどき作るよ。
友人Pは元国家憲兵。長く海外勤務だった特権で退職年齢が50歳と若かったので、54歳で既に年金暮らしで、現在はヨガとピラティスのインストラクターとして午前中働いて午後からは家事や子供達の世話をしています。
3人とも男性だったのでデザートも3日間まとめてチーズにしました。7区にあるチーズ屋さん「バルテルミー(Barthélémy)」のチーズはすごく美味しいので、お客さまが来るときは必ずここのチーズを買いに行きます。
チーズのお供にヴィンテージのボルドーワインChâteau Haut-Simardを開けてみました。1970年のワインなので、私が生まれるずっと前!古いワインは保存状態やワインの出来によって変わるのでどうなってるのかなと思ったけれど、状態が良くて深みがあって美味しかった。このヴィンテージワインは値段も手頃で当たりでした☆
煮込み料理ってなんだか幸せを感じます。こってりしたブランケット・ド・ヴォーは寒い中やって来た友人達も喜んでくれて、マダムHが時代遅れと言ってたフランスのママンの味、そしてパパの味もまだまだ健在なのかもしれません )^o^(
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