ディオールとバレエがテーマ。ダンサーによるレッスンを特別公開。

クリスチャン・ディオールはバレエと関係が深かった。ルドルフ・ヌレエフのパートナーだった英国のダンサー、マーゴ・フォンテーンは彼の顧客である。彼女の私生活、舞台のためにクチュールピースをクリエイト。また、クチュリエデビュー以前の画廊経営時代よりもはるか昔からの親友のひとりである作曲家のアンリ・ソーゲは、パリ・オペラ座のリファール創作バレエ『ミラージュ』、ローラン・プティの『旅芸人』の音楽を担当している。そのローラン・プティが創作した『トレーズ・ダンス』のコスチュームをデザインしたのはクリスチャン・ディオールだ。そしてこの作品の舞台背景を描いたのは、20代の頃から一緒に蚤の市回りをする仲の、愛称“ベベ”で知られる画家&装飾家クリスチャン・ベラール。べべはディアギレフの最後の伴侶だったバレエ・リュス出身のボリス・コシュノとともに、多くのダンス作品に携わっている。クリスチャン・ディオールの短くも充実した人生では、ダンスの輪がくるくると広がっていたのだ。彼の心を震わせた動きの芸術、身体の美しさ……そしていま、マリア・グラツィア・キウリが彼の後継者として、ダンスの世界と密接に活動している。

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マリア・グラツィアがコスチュームをデザインした『ニュイ ブランシュ(白夜)』より。エレオノーラ・アバニャートとフリーデマン・フォーゲル。Dior_Opera de Rome ©Julien Beanhamou

最近、メゾンに所縁の深いダンサー3名によるエクスクルーシブなバレエレッスン動画が制作され、この3本を含め“ディオールとダンス”をテーマに15本の動画がディオールによってYouTubeにアップされた。自由な外出がままならないこの時期。画面の前で、次から次へとクリックし、動画とともにエレガントな時間を過ごしてみるのはどうだろうか。

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ダンサー3名によるオリジナル・バレエレッスン。

プライベートでもディオールで装うパリ・オペラ座バレエ団のジェルマン・ルーヴェ、ディオールがデザインした衣装で『ニュイ ブランシュ』を踊ったローマ歌劇場バレエ団の芸術監督でパリ・オペラ座バレエ団のエトワールでもあるエレオノーラ・アバニャート、そしてその作品で彼女のパートナーを務めたシュツットガルト・バレエ団のプリンシパル、フリーデマン・フォーゲル。まずは、この3名によるディオールのためのエクスクルーシブなバレエレッスン動画から。

パリ・オペラ座バレエ団のインスタグラムでもエトワールによるレッスン動画がライブ配信されているが、これはかなり上級者向き。今回の3本はバレエの素養がない人も、椅子か何かにつかまって画面を見ながらちょっと身体を動かしてみたくなるものだ。

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ディオール ウインター2019-2020 メンズ コレクションを着たジェルマン・ルーヴェ。レイモンド・ペティボンによるエキジビション『Frenchette』のオープニングにて。@Getty

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衣装をデザインしたマリア・グラツィアとバレエ創作者セバスチャン・ベルトーを中央に、上海のリピートショーで『ユートピア』を踊ったダンサーたち。右から3番目がジェルマン・ルーヴェ。photo:Wang Ziqian/Dior

1. フリーデマン・フォーゲルとワークショップ(21分18秒)

バーでのウォーミングアップに始まる、初心者にもわかりやすいレッスン。 ローマ歌劇団劇場で昨年春に踊られた『ニュイ ブランシュ』を創作したパリ・オペラ座バレエ団のダンサーであるセバスチャン・ベルトーとの共同ワークショップなので、ディオールが衣装を担当したセバスチャンの創作によるバレエ2作品『ニュイ ブランシュ』『ユートピア』の映像も挿入されている。

2. ジェルマン・ルーヴェのバレエレッスン(27分1秒)

約30分のビデオには、まるでジェルマンから個人指導を受けているような気になるプライベート感がある。彼が外出制限期を過ごす南仏の緑が背景に見えるからだろうか。ダンスール・ノーブルの優美な爪先にうっとりしつつ、一緒に汗を流そう。上海で2020年春夏コレクションのリピートショーが開催された際に踊られた『ユートピア』にはジェルマンも参加。ディオールによるコスチュームを着て踊る彼の珍しい映像を、少しだけど、ここで見ることができる。

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フランスのムーラン市にあるCNCS(Centre National du Costume de Scène)で開催された『Couturiers de la Danse』展に展示された『ユートピア』のコスチューム。

3. エレオノーラ・アバニャートがバレエの腕の動きを指導(18分47秒)

エレオノーラがローマ歌劇場のためにセバスチャン・ベルトーに依頼したバレエ『ニュイ ブランシュ』は、コスチュームデザインがマリア・グラツィアに託された。エレオノーラは2015年4月にローマ歌劇場バレエ団の芸術監督に就任してからは、ローマとパリを何度も行き来。ときにマリア・グラツィアと飛行機で一緒になることもあり、以前から知り合いのイタリア人女性ふたりは親交を深め……という関係だ。ここで見られるストレッチで始まる彼女の丁寧な指導のレッスンはダンスにさほど興味がない人にも、長い在宅時間ゆえに硬くなった身体や肉付きのよくなった腰回りによさそう!と、やる気を起こさせる。ビデオの最後の部分で、『ニュイ ブランシュ』の冒頭の振り付けで大切な腕の動きを彼女が指導。エトワールのエレガンスも体得できそうだ。

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ディオールが衣装を担当した 『ニュイ ブランシュ』にまつわる4本の動画。

ローマ歌劇場で2019年3月29日に初演されたバレエ『ニュイ ブランシュ』は、公演「フィリップ・グラスの夕べ」の中の1作品。ローマ歌劇場バレエ団芸術監督のエレオノーラ・アバニャートがパリ・オペラ座バレエ団で親しいダンサーであり、振り付けにクラシックバレエのステップを取り入れて作品を創るセバチャン・ベルトーに創作を依頼した。そしてふたりは衣装のデザインをぜひ!と、マリア・グラツィア・キウリに声をかけたのだ。彼女がデザインした花を取り入れた衣装から、セバスチャンは花が天に向かって這い伸びるような動きのインスピレーションを得たという。モードとダンスの見事なコラボレーションが完成させた貴重な作品である。

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『ニュイ ブランシュ』より。photos : Dior_Opera de Rome ©Julien Beanhamou

4.キアラ・フェラーニとマリア・グラツィアのローマ散策

『ニュイ ブランシュ』の開催に招待されたキアラ・フェラーニを伴って、マリア・グラツィアがローマ市内のインスピレーション源をめぐる。イタリア語の会話を英語字幕で! 舞台の映像も含む1分19秒。

5. 『ニュイ ブランシュ』のステージから

作曲家フィリップ・グラスにオマージュを捧げるバレエ『ニュイ ブランシュ』。1分ちょっとと短いけれど、舞台の上に繰り広げられたコスチュームとダンサーたちの動きが織りなす繊細な美の世界をこの映像で堪能。

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Dior_Opera de Rome ©Julien Beanhamou

6. リハーサル映像とインサイドストーリー 

セバスチャン・ベルトーが振り付けを語り、マリア・グラツィアがコスチュームを語る。フリードマン・フォーゲル、ローマ歌劇場バレエ団のコール・ド・バレエのダンサーによる、衣装についての証言も聞き逃せない。(英語字幕付き、5分41秒)

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マリア・グラツィアによる『ニュイ ブランシュ』のためのコスチュームのスケッチ。Dior_Opera de Rome ©Dior

7. コスチュームの花作り、そのサヴォワールフェールを。

押し花のような手作りの花。ボローニャにあるアトリエで染色され、押し型でカットされ……そのサヴォワールフェールを知ると、クチュールピースのようなコスチュームに驚かされる。(英語字幕付き、1分3秒)

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フランスのムーラン市にあるCNCS(Centre National du Costume de Scène)で開催された『Couturiers de la danse』展に展示されたコスチューム。

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2019年春夏プレタ・コレクションでダンスとモードを。

2018年9月24日にパリのロンシャン競馬場で発表されたディオールのプレタポルテの2019年春夏コレクション。演出したのは振付け家のシャロン・エイアルで、床に花弁が降り積もった広い会場空間をモデルとダンサーたちが共有し、観客はその混合エネルギーに触発され、というショーだった。会場入り口に掲げられていた「内から生まれる物語」というステートメントを裏切らず。このショーにまつわる動画を8から15まで順を追ってゆくと、最後のショービデオを見る時の感動は格別だ。

8. ファイナル・リハーサル / イプノスティック・リズム(25秒)

9. ロンシャン競馬場に設けられた会場のセノグラフィー(36秒)

10. コレクションのキールック(1分)

11. セレブリティがショーを語る(日本語字幕付き、1分17秒)

12. マリア・グラツィア・キウリのインタビュー(日本語字幕付き、58秒)

13. コレクションのメイキング(英語字幕付き、1分23秒)

14. ダンス・パフォーマンス。シャロン・エイアルが語る、ダンサーが語る(日本語字幕付き、3分8秒)

15. ショービデオ(15分52秒)

【関連記事】
S・ベルトー、『ニュイ ブランシュ』『ユートピア』を語る。
バレエのコスチュームにまつわる、ふたつの物語。

大村真理子 Mariko Omura
madameFIGARO.jpコントリビューティング・エディター
東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。フリーエディターとして活動した後、「フィガロジャポン」パリ支局長を務める。主な著書は『とっておきパリ左岸ガイド』(玉村豊男氏と共著/中央公論社刊)、『パリ・オペラ座バレエ物語』(CCCメディアハウス刊)。
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