新作のコスチュームはシャネル! ジュニア・バレエがエトワールたちと海外公演へ。

これ、日本では行われないのだろうか?と興味をそそるプログラム。それはクアラルンプールで昨年11月18日と19日に行われたパリ・オペラ座のジュニア・バレエ団とカンパニーのソリスト4名による公演である。カンパニーから参加したのはロクサーヌ・ストヤノフ(エトワール)、パク・セウン(エトワール)、フランチェスコ・ムラ(プルミエ・ダンスール)、アントニオ・コンフォルティ(スジェ)だ。

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左:『A la manidère de....』を踊るロクサーヌ・ストヤノフ、アントニオ・コンフォルティ。 右:『ジゼル』第2幕のパ・ド・ドゥを踊るパク・セウンとフランチェスコ・ムラ。©Chanel

マレーシア・ツアーのプログラム
・ジョージ・バランシン振付『Allegro Brillante』 ジュニア・バレエ団10名
・ジャン=ギヨーム・バール振付『A la manidère de....』 ロクサーヌ・ストヤノフ、アントニオ・コンフォルティ
・ジュリアン・ニコジア振付『Eternal Rift』 ジュニア・バレエ団11名
・ジャン・コラリ、ジュール・ペロ版『ジゼル』第2幕からパ・ド・ドゥ パク・セウン、フランチェスコ・ムラ
・ジョゼ・マルティネス振付『ミ・ファヴォリータ』 ジュニア・バレエ団18名

ゴールドの麦が輝くシャネルのコスチュームで踊る。

2シーズン目となる2025-26、ジュニア・バレエ団はツアーで大忙し。海外はこのクアラルンプールでアジア初公演を行い、その他ドイツ、スイス、スペインと4カ国合計6都市に赴く。そしてフランス国内では19都市での公演が予定されている。このクアラルンプールでの公演が特別だったのは、ジュニア・バレエ団のためにジュリアン・ニコジアによって創作された『Eternal Rift(永遠に続く亀裂)』が世界初演されたことだ。作品を踊る11名のダンサーのコスチュームを担当したのはシャネル。昨年のジュニア・カンパニー創設から、このクアラルンプールでの公演も含め絶え間ない支援を続けているのが、パリ・オペラ座のビッグメセナであるシャネルなのだ。今シーズンの開幕ガラではジュニア・バレエ団の女性ダンサーたちがシャネルのメゾンダールのひとつLemarié(ルマリエ)による羽根細工とカメリアの装飾が施された新しいコスチュームで行進したことは、ガラの大きな話題のひとつだった。舞台芸術と知識の伝承へのコミットメントを表明し、シャネルは新世代のアーティストの育成と発展のために支援を惜しまない。

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シャネルの卓越の技を生かしたアトリエ作業から『Eternal Rift』のコスチュームが生まれた。©Chanel

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左:金糸で麦が刺繍されたレオタード。 右:ダンサーの身体が見えなくなるほど、すっぽりと包み込んでしまうオーバーサイズのコート。©Chanel

シャネルによるコスチュームで創作のリハーサルをし、舞台で踊り......ダンサーがコスチュームに命を吹き込む瞬間を見てみよう。©Chanel

『Eternal Rift』でダンサーたちが纏ったのは作品が物語る強さと脆さの遊びを形にしたコスチューム。彫刻的なラインとゴールドのアクセントが、光り輝く亀裂のように身体のムーヴメントに沿って動き、作品の核をなす緊張と再生を強調する。黒ベースのボディを飾る繊細な刺繍によるゴールドのモチーフは回復と脆さを象徴する麦の穂を様式化したもの。それに加えてオーバーサイズのコートは身体を消し去ってしまうほどゆったりと包み込むかと思えば、その一方でタンクトップと幅広の黒いパンツというミニマルなコスチュームは無防備に身体を晒すのだ。かたや隠蔽、かたや露出という対照的な2つのシルエットは、壊れやすさが通過点となり、脆さが変容への跳躍台(トランポリン)になるというこのバレエ作品の反映である。

『Eternal Rift』

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ジュニア・バレエ団のレパートリーに加わったジュリアン・ニコジア振付の『Eternal Rift』がクアラルンプールで世界初初演された。音楽はJaniv Oron and Michael Anklin。©Chanel

なおこのツアーにおいてジュニア・バレエのダンサーたちはマスタークラスおよび参加型ワークショップを開催したそうだ。異なる文化や国籍を持つ人々がダンスへの情熱を共有して、発見と対話の場となるというジュニア・バレエ団の真髄を反映する活動である。地元のバレエ学校生などがドレスリハーサル、ダンスクラスに招待されて、本番を見るだけでなく創作の世界を垣間見るチャンスを得たのだ。

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パリ・オペラ座のジュニア・バレエ団とは?

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2025年度に9名が新たに入団し、ダンサー24名が揃ったジュニア・バレエ団。
前列左から、Anastasia Galon(新)、Jaime Almaraz Baizan、Santiago Sales Manzanerara、Nuria Fernandes(新)
中列左から、Hyuma Gokan(新)、Jackson Smith-Leishman、Camille Couton(新)、India Shackel, Angelique Brosse、Lucia Abril Marcucci(新)、Mei Matsunaga、Tiphaine Gervais、Isaac Petit
後列左から、Laura Ravera、Natalie Vikner、Emryck Sanchez-Raffy、Matt Vuaflart(新)、Shanai Obadia、Carlo Zarcone(新)、Giovanni Bellucci(新)、Tiziano Cerrato(新)、Grace Boyd、Eve Belguet、Davide Alphandery

さて、ときどきジュニア・バレエ団とは何?という疑問の声を耳にする。パリ・オペラ座にバレエを観に来る人々の中にも、新しいゆえにその存在が掴めなかったり、何をしているのかがわからないと......。改めて説明しよう。

パリ・オペラ座のバレエ学校卒業生を含めた世界中の若い才能を育成するインキュベーター的な場として、ジュニア・バレエ団の創設が2024年に決定された。団員の職業契約は2年、年齢制限は18~23歳、そして定員は24名というカンパニーである。芸術監督はジョゼ・マルティネスだが、本団員たち並みに専属のバレエマスターもバレエミストレスもいるのだ。

昨年、最初の年に18名が入団した。そして今年、その中から3名(Yoon Seo Lee、Junsu Lee、Sergio Napodano)がパリ・オペラ座の契約団員となったことから、2年目は6名採用予定のところ9名が採用され、今年から定員の24名に。いよいよ本格的な活動が開始、というわけだ。

彼らの日常はクラシックバレエおよびコンテンポラリーダンスのレッスン。そしてツアーがあり、さらにオペラ・ガルニエやオペラ・バスティーユでのバレエの公演でコール・ド・バレエの数が足りない時はジュニア・バレエからダンサーが代役として補充されるのだ。たとえば前シーズンなら『眠れる森の美女』、今シーズンは『ジゼル』というように。シーズン2024-25から始まったジュニア・バレエの活動を詳しく知るには、パリ・オペラ座のストリーミングサイトPOP(Paris Opéra Play)で4本のドキュメンタリー『rêver, danser, ensemble』を視聴するのがいいだろう。

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POPの新シリーズ『rêver, danser, ensemble』のタイトルバックより。©Anne-Solen Douguet/ OnP

エピソード1(25分)「La rentrée des artistes」は、2024年7月のジュニアバレエ入団のためのコンクールから幕を開ける。これによって17~23歳の男性9名女性9名が選ばれたのだ。冒頭でジョゼ・マルティネスが「学校とカンパニーを繋ぐのがジュニアバレエ団。ここで2年を終えたら、パリ・オペラ座やあるいは世界のほかのカンパニーに入団するのです」とジュニア・バレエ団について語っている。意図的に国籍まちまちな団員で構成されているため、フランス出身者もいるがここでの"公用語"は英語だ。バレエ学校のプティペール、プティットメールのシステムの代わりにチューター制が設けられていて、たとえば映像にも収められているが日本とニュージーランド出身のオニール八菜はオーストラリア出身のJackson Smith-Leishmanとニュージーランド出身のIndia Shackelのチューターで、彼らが困ったことがあれば彼女が相談役となるのである。エピソード1のハイライト、それはシーズン開幕ガラに彼らが参加する光景だろう。ジュニア・バレエ団の一種のステージデビューである。

エピソード2(23分)は「Au travail!」。さあ、仕事!というわけで、アナベル・ロペス=オチョアによる『Requiem for a Rose』の創作光景を映し出す。ジュニア・バレエ団のためのクリエイションで、これは振付家も語っているように団員へのジョゼからの素晴らしいギフトなのだ。このエピソードでは彼らがツアーで踊るモーリス・ベジャールの『カンタータ』の稽古も始まって......スタイルの異なるバレエを学んでゆくのだ。

エピソード3(24分)は「La Belle, le Ballet et le Junior」。彼らにとって新たな章の開幕だ。ヌレエフの『眠れる森の美女』でコール・ド・バレエの代役としてステージに立つ彼らの興奮が見られる。ドロテ・ジルベールやパブロ・ルガザなどソリストに混じってクラスレッスンを受け、リハーサルでは真剣にノートを取り、ビデオを繰り返し見て......衣装合わせもあり、プロとして舞台に立つストレスや喜びが団員によって語られる。リハーサルスタジオでは配役されている団員たちと一緒にジュニア・バレエも学ぶので指導する側には大仕事となるのだが、公演中怪我をするダンサーの代役にジュニア・バレエ団のダンサーをあてにできたことをサブリナ・マレムは喜んでいる。自分の過去の代役経験とその重要さを語るのは、現在エトワールのロクサーヌ・ストヤノフだ。ツアーの稽古と並行して、本番直前に配役されて代役としてステージに立つジュニア・バレエのダンサーたち。プロとして成長する姿をカメラは追っている。

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『rêver, danser, ensemble』のエピソード3では、『眠れる森の美女』でコール・ド・バレエの代役体験をするダンサーたちが描かれている。©Anne-Solen Douguet/ OnP

最後の「première tournée」(29分)は、2025年7月16日に行われた南フランスのヴェゾン・ラ・ロメーヌでの最初のツアーをテーマにしている。撮影されたのは4月に行われた、毎回ツアーの最後を飾るジョゼ・マルティネス振付けの『ミ・ファヴォリータ』のリハーサルだ。ユーモアがあり楽しい作品だけれど、テクニック的にはきつい!とインタビューに答える団員たち。ツアーのプログラムのほかの作品では振付家がダンサーを選ぶために、ジュニア・バレエ団の全員18名が踊れる作品としてこれを選んだとジョゼが明かしている。ツアーでは毎回サイズやステージの床のタイプが異なる劇場で踊るなど、いくつもの厳しい体験が待っているのだ。ドキュメンタリーでは団員たちが屋外ステージで踊る姿を見ることができる。

彼らはこうして今年もツアーを続け、そしてシーズン末に希望者はパリ・オペラ座の入団試験に挑むのだ。昨シーズンは何名かが挑戦したものの、かろうじて3名が契約団員という結果だった。2024年の創設時の18名のダンサーは、今シーズンでジュニア・バレエ団での2年契約が終わるため、この試験に受からなければどこかほかのカンパニーを探す必要がある。そして彼らの代わりに別の18名がジュニア・バレエに入団してくることになるのだ。何かの折にオペラ座バレエ学校長のエリザベット・プラテルが、「世界中いくつもカンパニーがあっても、学校を出たてのダンサーは求められません。少なくとも2年くらい経験のあるダンサーが望まれているのです」と語っていた。ジュニア・バレエ団で2年を終えたダンサーたちがどのように飛び立って行くのか、とても興味深いことだ。

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上左:『Allegro Brillante』 上右:『Cantata 51』 下左:『Requiem for a Rose』 下右:『Mi Favorita』 photography: 上段・下右 Julien Benhamou/ OnP、下左 Maria Helena Buckley/OnP



シーズン2025〜26年ツアー日程
11月/18、19日:Kuala Lumpur(マレーシア)、29日:Cannes
12月/2〜10日:Lyon、12&13日:Martigues、16&17日:Suresnes、19日:Evreux
1月/21&22日:Echirolles、24日:Monthey(スイス)、27日:Frigourg(スイス)、29&30日:Bonn(ドイツ)
2月/7&8日:Massy、10日:Maubeuge、12日:Compiègne、14&15日:Neuilly-sur-Seine
3月/5日:Andorre、8&9日Aix-en-Provence、13&14日:Mérignac、17&18日:La Roche-sur-Yon、20&21日:La Rochelle、24日:Cholet、26~28日:Vannes
4月/9日:Roubaix、11、12日:Ludigshafen(ドイツ)
5月/16&17日:Séville(スペイン)

プログラム
『Allegro Brillante』(ジョージ・バランシン振付)
『Cantata 51』(モーリス・ベジャール振付)
『Requiem for a Rose』(アナベル・ロペス=オチョア振付)
『Mi Favorita』(ジョゼ・マルティネス振付)
『Eternal Rift』(ジュリアン・ニコジア振付)

editing: Mariko Omura

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