美しいレザーのプロダクト、DRILL DESIGNの「case LEFT.」

「縫製をしない方法を実現することで、レザー製品づくりのさまざまなことから自由になれる可能性があると感じていました」

DRILL DESIGN(ドリルデザイン)の林 裕輔さんと安西葉子さんが6年ほど前より開発を進めてきたレザーのプロダクトがついに誕生、 Artek Tokyo Store(アルテック 東京ストア)でお披露目に。

発表を記念した特別展示は、本日11月16日までなのですが、今後も同ストアでの販売が予定されています。

201116_1.jpg

201116_2.jpg

アルテック 東京ストアでの展示風景。Photos: Takumi Ota

素材づくりに遡り、つくり方(工法)に始まるプロダクトの提案を行うドリルデザイン。今回も彼らならではの視点からプロジェクトがスタートしています。

「レザーのプロダクトは皮革そのものの質と縫製技術の質で決まります。技術の積み重ねによるところも大きいので、新しい考え方の製品をうみだすことは難しいんです。そこで、素材に始まる新しいつくり方を探りたいと考えました」

201116_3.jpg

ドリルデザインの林 裕輔さんと安西葉子さん。2001年に活動開始。MUJI、Camper、TIME & STYLE、CRASSEVIGなど国内外の多くの企業とのプロジェクトを行っている。

素材は牛革のバックスキン。一般的に用いられる表の部分を除いた床革と呼ばれる部分です。それを縫製するのではなく、「型」を用いることでしっかりとした構造を備え、端正な表情のインテリア小物に。

201116_4.jpg

アルテック 東京ストアの地下では開発プロセスを披露。

用いられているのは深絞り成型で、伸縮する皮革本来のしなやかさを活かし、手で調整しつつ、かたちづくられていきます。「成型合板ならぬ、成形合革です」とドリルデザイン。「型の角度や深さの検討も試行錯誤で、数をつくるためのプロセスに関する一つひとつを進めてきました」

201116_5.jpg

201116_6.jpg

201116_7.jpg

新たな「工法」を考えてきた試行錯誤の様子がうかがえる展示から。

つくりやすい直角ではなく絶妙のカーブを描くフォルムとされていたり、2つの型がきれいに組みあわせられることが重要となる蓋付きケースから取り組まれていることも、「実現したい『工法』」の研究を、いつも妥協せずに行っているドリルデザインらしいなあと感じました。

開発をともに進めてきたのは日本スエーデン。ドリルデザインとのやりとりは、長く皮革製品づくりに取り組む同社にとっても、わくわくするようなチャレンジだったのではないでしょうか。また、こだわりのメンバーによる配慮は開発細部にも。ケースの強度を高める補強として、皮革と皮革の間に天然素材をはさんで……といった工夫も凝らされていました。

---fadeinpager---

製品第一弾となる、蓋付きケースは4種類。

201116_8 .jpg

「case LEFT.」の品々。「TAB_post card」(19×14×深さ4.5cm)、TAB_business card」(13×9.5×4cm)。各7,800円、「TAB_round 180(直径18×4.5cm)7,800円、「TAB_round 230」(直径23×5.5cm)12,000円(いずれも税抜価格)

コレクション名でもあるプロジェクト名は、「case LEFT.」。「普段は使われていない素材(leftover)を用いて、使われていない手法(leftfield)」を使う、という考えからの命名です。

これら「case LEFT.」のお披露目を記念して、アルテック社が製造しているアルヴァ・アアルトの名作「スツール 60」のためのスツールクッションも発表されています。蓋付きケースと同じ技術で2枚のレザーでウレタンをはさんで成型した、座り心地の良いクッション。木製スツールの姿と調和する表情もなんとも美しい。

それだけでなく、使うほどに柔らかく、さらに心地よい座り心地になっていくことも、皮革ならではの醍醐味です。徐々に濃くなっていく色も、また。タイムレスに愛されている「スツール 60」にふさわしいプロダクトだと感じました。

このスツールクッションは特別展示中のみの受注品の予定でしたが、嬉しいことに、ひき続き12月末まで受注期間が延期に。 アルテック 東京ストアまでお問い合わせください。

201116_9.jpg

「スツール 60」のための「case LEFT.」スツールクッション。19,000円(受注生産、税抜価格)

201116_10.jpg

私がいつも楽しく取材をさせていただいているのが、マテリアルそのものの開発に始まり、プロセスの探求から独自の試みを重ねるデザイナーたちの熱い(!)動きです。そうしたとり組みを続けているドリルデザインによるこの「case LEFT.」プロジェクト。研究、開発はこれからも続けられるとのこと。

「レザーの製品のさまざまなことから自由に」とスタートし、魅力あふれる質感のレザーを素材とする本プロジェクトから、さらにどのようなものが実現されていくのでしょうか。今後の展開にも注目しています。

>>関連記事
ウィンザーチェアの魅力を味わう。

アルテック 東京 ストアについて。

DRILL DESIGN「case LEFT.」
Artek Tokyo Store
東京都渋谷区神宮前5-9-20
tel : 03-6427-6615
特別展示は11/16まで。
以降も同ストアで「case LEFT.」の品々を販売。
受注生産のスツールクッションは直接ストアに問い合わせください。
※12月末まで受付中。

texte:NORIKO KAWAKAMI

Noriko Kawakami
ジャーナリスト

デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行うほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。

http://norikokawakami.jp
instagram: @noriko_kawakami

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

フィガロワインクラブ
Business with Attitude
キーワード別、2024年春夏ストリートスナップまとめ。
連載-パリジェンヌファイル

BRAND SPECIAL

Ranking

Find More Stories