パリ 5月のマルシェ『ペトンクルのファルシー』『焼きやさいのマリネ』
おうちでパリの味 2013.05.07
パリの東、Nation(ナシオン)広場の2本の大きな円柱の先に長く長く伸びる"Cours de Vancennes(クール・ド・ヴァンセンヌ)"のマルシェ。
この週末はヴァカンスに入ったせいか、ゆったりしています。
マロニエ並木の若葉がぐんぐん広がってきた!
このマルシェの中でも好きなのは、卸売市場を通さずに生産者が作ったものを畑から直接持って来て販売している幾つかのスタンド。まさに"作り手の顔が見える"ところです。
こちらのスタンドは、パリから東へ30km、La seine et Marne(ラ・セーヌ・エ・マルヌ)で栽培されている野菜。
畑から採りたてのラディッシュやハーブがピカピカ輝いて。
ああ、春だなぁ。待ちに待った白いアスパラのシーズンの到来です!
大好きな新にんにくも出てきた!!
こちらもイル・ド・フランス、パリから北西のVal d'Oise(ヴァル・ドワーズ)県のスタンド。
元気なマダム達が、野菜達と同じくシャキシャキと立ち働いています。
ノルマンディからのスタンドは、特産のりんごや手造りのコンフィチュールが自慢。
どのスタンドでも花形は、旬を迎えたイチゴとアスパラ。
"私の野菜や果物は、伝統的な方法で栽培しています"
いつもオーベルカンフのマルシェでお馴染み、パリ郊外エッソンヌからのお百姓さんのスタンド。おばちゃん達と露地物のみの野菜達は、相変わらず逞しく元気です。旬のルバーブが、やっと出て来ました。
こちらもオーベルカンフで、よく買うPicardie(ピカルディ)地方からのりんご屋さん。シードルやりんごジュースもお薦め。カメラを向けると"うれし恥ずかし"初々しい3人組です。
さて、他に目に留まったのは・・・
初物!スペインからのネクタリン。
これも初物、小粒で味が濃厚な木苺。
注目を集めていたのは、おじさん自慢のアスパラの山。この春のモリーユ茸も登場!
モロッコのスパイスや穀物を扱うスタンドは、マラケシュの市場を思い出す。
こちらもモロッコのお惣菜屋さん。クスクスやタジンがおいしそう!!
魚屋さんは数あれど、買いたいような新鮮なものが見つからない・・・
そのかわり、活きたBulot(ビュロ)貝(写真手前左、小さなツブ貝のような)を買って、魚屋のおばさんに茹で加減を聞くと「塩をひとつかみ入れて水から茹でるの。沸騰してから弱火で20分煮て火を止め、そのまま置いて、お湯に指を入れられるくらい冷めたらザルに揚げて出来上がり!」と、そこに、元料理人というおじさまが現れて「茹でる時に、鍋に少しだけオリーブ油を入れると、貝殻から身がスルッと抜けて食べやすいし風味もいいよ。」と、ニコニコ。
早速、帰ってから教えてもらった通りに茹でてみると、身が簡単に取れて柔らかく美味しい!今までは硬くなりそうなので、5分くらい煮ていただけ。こうして、知ってるようなつもりでも、改めて聞いてみると新たな発見があり、また、マルシェに来ると、いつも食べることが大好きで親切な人に会えるのが、とっても楽しい。
そして、今年なかなかお目にかかれなかったPétonckle(ペトンクル)という姫ほたてを買って焼きました。随分前にマルシェでこれを買っていたおばさまに教えてもらったレシピーで、おばさまはバターを使うそうですが、私はオリーブ油で軽く作りました。
■ペトンクルのファルシー
材料
ペトンクル 500gくらい
オリーブ油 大さじ3
パン粉 大さじ1
にんにく下したもの 小さじ1
パセリみじん切り 少々
塩 少々
1.貝の隙間にナイフを入れて開け、片方の貝を取り外して流水でよく洗う。ヒモやワタは、付けたまま。天板に粗塩を敷き(無くてもよし)貝を並べる。
2.小ボールに材料を全て混ぜて、貝の上にのせる。
3.あらかじめ温めておいたオーブンに入れ、200℃くらいで、5分ほど焼く。
焼きたてのアツアツを冷えた白ワインと共にいただきます。これは、本当にうまい!!
貝を開けるのが少々手間ですが、ムール貝やハマグリでも美味しい!
殻つきではなくても、新鮮な貝のむき身や魚を皿に並べて同じように焼いてもよし。
さてさて・・・
今日買った野菜は、(写真上左から時計まわりに)ロマネスコ、ブロッコリー、春にんじん、新カブ、芽キャベツ、ラディッシュ、アーティチョーク。
作るのは、家の常備菜"焼きやさいのマリネ"。
家に来る友人達が必ず、「これおいしい!こういうのが食べたかったの!どうやって作るの?」と聞くのですが、ただ焼いただけ。でも新鮮な素材があればシンプルがおいしい。
特に、カブなどはこの食べ方が一番おいしいと思う。余計な水分が飛んで甘みが凝縮。
使っているのは、電磁調理器でも使えるグリルパン。
■焼きやさいのマリネ
材料
季節の野菜なんでも好きなだけ。
ロマネスコ、ブロッコリー、ニンジン、芽キャベツ、アーティチョーク
カブ、ラディッシュ
オリーブ油 適量
塩 適量
1.食べやすい大きさにそれぞれを切り分ける。ブロッコリー、ロマネスコは、茎もおいしいので、房と一緒に長めに切る、硬い茎の外皮は取り除く。カブは皮ごと1cmくらいの厚さに。アーティチョークは外皮を剥いて4等分に切り、水に晒してアク抜き。
2.鍋にたっぷりのお湯を沸かし塩をひとつかみ入れて、カブとラディッシュ以外のものを固めに茹でる。うまみが逃げるので、水に晒さない。
3.熱くしておいたグリルパンで、少し焦げ目が付くまで焼く。
4.皿に載せて塩を振ってから、オリーブ油をたっぷりかける。
大事なのは、上質のオリーブ油と塩。たくさん作って、翌日はアペリティフに。またピザやパスタのトッピング、玄米ごはんの上に目玉焼きと一緒にのせて、ちょっと醤油をたらして、ワンプレートランチに。3日くらいは美味しくいただけるのでうれしい!
一年中作っていますが、夏は茄子やズッキーニ、秋はかぼちゃやキノコ、冬はなんといっても根菜が旨い!!
5月に入ったとはいえ寒い日々が続くパリですが、マルシェに行って野菜を見ていると、初夏の予感を感じられて気持ちも弾んできます。
料理クリエイター
長い間モードの仕事に携わった後、2003年に渡仏。料理学校でフランス料理のCAP(職業適性国家資格)を取得。 パリで日本料理教室やデモンストレーション、東京でフランス料理教室を開催。フランスの料理専門誌や料理本で、レシピ&スタイリングを担当。この連載をまとめた『パリのマルシェを歩く』(CCCメディアハウス刊)が発売中。
近著に映画の料理を紹介した本『La cuisine japonaise à l'écran』(Gallimard社)と『Le Grand manuel de la cuisine Japonaise』(Hachette-Marabout社)がフランス全土と海外県、ヨーロッパ各地で発売。
Instagram : @haradasachiyo