サンマロ 8月のマルシェ『ラングスティーヌとペトンクルの海草塩蒸し』
おうちでパリの味 2013.08.30
ヴァカンスの1週間をブルターニュ・サンマロの海辺で過ごしてきました。
Rocabeyロカベイ、Paraméパラメ、St-Servanサン・セルヴァンと、サンマロにある3カ所のマルシェを巡るのが楽しかった。
初日は、Rocabeyの近くに住む食いしん坊の友がナビゲート。
活きたオマール、蟹、海老、貝や新鮮な魚の量に圧倒されて血が騒ぐ!!
ここに来ると、もう嬉しくてずっと笑いっぱなし。
友行きつけの魚屋さんは、鮮度・質とも申し分なし!
(左)到着早々、この蟹Araignéeを茹でてたらふくいただきました 。買う時には希望の大きさを言うと、中身が良く詰まったものを選んでくれます。
(中)近場で水揚げされたピカピカのイワシ。下のヒラメを店主がさばく様子を見ていたら、包丁を入れると刃先を跳ね返すような強い弾力。中心から骨に沿って包丁を滑らせると、引きしまった半透明の艶やかな白身が現れエンガワも美しい。ざっーと鳥肌が立ってきました。
(右)鯖もよし!
隣のスタンドはオマールもいいけれど、活きた小エビ・ブーケを買って素揚げに。これが丸ごと食べられる一番うまい食べ方だと思う。
(左)地元の人もヴァカンス客も大勢で賑わっています。
(右)肉厚で大きな活ラングスティーヌ(手長海老)。
(左)巨大なロブスターを見せてくれました。
(右)大トロ風なところをザックリと切ってもらう。
(左)隣街カンカル名産の牡蠣。
(中)"海のいんげん"瀬や中洲に生える塩分を含んだサリコルヌ。
(右)モンサンミッシェル産の小粒のムール貝Bouchotブショ―とクトー貝。
どのマルシェでも笑顔でキビキビと立ち振る舞い、輝いていたカッコイイ母娘は、カンカルの魚屋さん。潮風で鍛えられてきたこの風貌。エステなんかに行かなくても、働く女はこんなに美しい!
ここは、放し飼いの養鶏場直営のスタンド。友に倣って、産みたての卵を買う。
それにしても、どうよ!この鶏の数。
こちらの鶏屋さんの放し飼い卵もおいしそう。
(左)友御用達のこの肉屋のスペシャリティは、モンサンミッシェルの側で放牧されている塩分を含んだ子羊の肉Prè-saléプレ・サレ。コショウとオリーブ油をかけて焼いただけで、本当に美味でした。どのマルシェでも大行列の店、ご主人と奥さんもハツラツな訳です。
(右)Gigot d'agneau(子羊のモモ肉)にも惹かれます。
サンマロ、カンカル近辺のシェフ御用達"Ferme du Prè Bois(野原に放し飼い、良質の穀類で育てている養豚場)"の豚肉を扱うスタンドの自家製パテやソーセージ、無添加の加工品も本当においしい。
(左)サンマロから20kmのところにある、小さな農家からのささやかなハーブ屋さん。
(中)ここでは花の入ったサラダ用の若葉とカモミールを購入。
(右)生のカモミールを手にしたのは初めて。乾燥してお茶にするまで飾って楽しみます。
サンマロのマルシェが良いのは、9割くらいの野菜のスタンドが近郊農家の持って来た直売。昔の村の市場はどこもそうだったはず。作った人に直に話を聞けるのが面白い。食べ方を尋ねて実際に作ってみると、なるほど旨い!
彼らは長年作り続けて、それを食べ続けてきた舌もプロだ。
(左)ビオの農家にはアジアのハーブも。
(中)トマトといちご専門の農家。甘い露地物のトマトはこの時期だけの楽しみです。
(右)5種類のいちごを扱っているスタンドは、ブルーベリー、フランボワーズなどの赤いフルーツ専門の農園でした。
サンマロで一番おいしいと思うMaison Eglerのクレープ。ここで大量買いして、朝食はここのクレープをボルディエのバターと一緒に温めて。そば粉のガレットにはチーズやハムを入れて、地元のシードルと共にランチに。
ある日はSt-Servan地区のマルシェへ。近くにアパートを持つ友人が案内役です。
(左)友人の好きな有機野菜のスタンド。「うちはABマーク(ビオの認証)は持っていないけど、農薬や化学肥料などを使わないビオの農法で作ってるのよ」とお姉さん。
(右)赤、黄色、緑、黒と鮮やかなものを買って千切り、生のままマリネにしました。
野菜も売ってる人もおおらかそうで、いいなあ。
さて、料理には友の庭からローリエとタイム、台所からは調味料を拝借。
(写真内上)乾燥させたハーブとゲランドの荒塩を混ぜたお手製。
(写真内中)海草入りの塩。
(写真内下)カンカルのシェフOlivier RoellingerのFleur du Soleil(太陽の花)。ゲランドの塩をベースにゆず、しょうが、スパイスをブレンドしたもので、魚料理にとっても合う。城壁内の素敵なブティックは、地元のファンも多いようです(www.epices-roellinger.com サンマロ、カンカル、パリにもショップが)。
バタバタと跳ね回るラングスティーヌ、活ならではの透明な赤味がきれい。
■『ラングスティーヌとペトンクルの海草塩蒸し』
材料(2人分)
ラングスティーヌ(又は車海老) 12匹
ペトンクル(姫ほたて) 12個
サリコルヌ(又はワカメやおかひじき) 少々
フランボワーズ(あれば) 少々
乾燥ハーブ(ローリエやタイム) 少々
好みの塩いろいろ 少々
1.鍋にお湯を沸かして、ローリエ数枚とタイムを少し入れる。その中で、サリコルヌを茹でて引き揚げ、水に晒してアク抜き。ザルに揚げておく。その鍋に蒸し器をセットする。
2.ペトンクルの殻を開けて、流水できれいに洗う。
3.ラングスティーヌに軽く海草の塩を振りかけて、ペトンクルと一緒に1.の鍋に入れ、強火で3分ほど蒸す。
4.皿に材料を並べて、好みで塩をかけながらいただく。
ほんのりとハーブと海草の香りが効いた簡単な前菜です。温かくても冷たくてもおいしい。
サンマロはとびっきりの魚介や肉、野菜、乳製品が揃う、まさに食材の宝庫。
毎日マルシェに行くと、あまりにも食べたいものが多すぎて、1週間の滞在中にレストランに行く暇がまったくありませんでした。
写真を見ながら感激が蘇えってきて、おいしかったものを反芻する日々を送っています。
はあ~っと溜息。

料理クリエイター
長い間モードの仕事に携わった後、2003年に渡仏。料理学校でフランス料理のCAP(職業適性国家資格)を取得。 パリで日本料理教室やデモンストレーション、東京でフランス料理教室を開催。フランスの料理専門誌や料理本で、レシピ&スタイリングを担当。この連載をまとめた『パリのマルシェを歩く』(CCCメディアハウス刊)が発売中。
近著に映画の料理を紹介した本『La cuisine japonaise à l'écran』(Gallimard社)と『Le Grand manuel de la cuisine Japonaise』(Hachette-Marabout社)がフランス全土と海外県、ヨーロッパ各地で発売。
Instagram : @haradasachiyo