パリ 9月のマルシェ『秋のフルーツ・コンポート』
おうちでパリの味 2013.09.30
一年のうちで最もフルーツが豊富な初夏から晩秋まで、農業国であるフランス全土はもとより、地続きのイタリア、スペインやコルシカ島、シチリア島などからたくさんの果物がやってきます。マルシェで旬のものを買ってきては色や形を見ながら味見して、あれやこれやと思いつくままに作るのがとっても楽しい!
前回に引き続き、Saxe-Bretouil(サックス・ブルトゥイユ)で気に入ったのは、主にフランス国産のフルーツを扱うスタンド。お値段も質の高さもブルジョワ顧客御用達、この界隈のマルシェならではのものです。
ミラベルという黄金色、甘みの強い小さなプラムの旬は夏の終わりから秋の初め頃までの3週間ほど。食べ時を逃さぬように走りのころから楽しむ。
主にアルザス地方の特産で、リキュール、コンフィチュールやお菓子などにも加工されています。
これはフランス南西部からの立派ないちじく、中はジャムのように完熟。
ビオのスタンドには、イタリア産のマスカットがもりもり。中央にあるChasselas(シャスラ)は香りが良く透明な粒が美しい。チーズやハムにも合うもの。
今日見つけたのは、枝付きの見事なシチリア産マスカット。テーブルに並べて眺めていると、18世紀のフランス宮廷で王様の寵愛を受けていた画家Chardin(シャルダン)の静物画を思い出しました。
■『秋のフルーツ・コンポート』
材料(6人分)
ぶどう 1~2房
いちじく 6個
プラム 6~10個
レモン 1個
●シロップ
水 3カップ
砂糖 1/2 ~1カップ(お好みで)
リキュール 大さじ2
シナモン・スティック 1本
八角 1~2個
カルダモン 5粒
1.フルーツを洗い、いちじく、プラムを食べやすい大きさに切り分ける。レモンは薄切り。
2.鍋に水、砂糖、スパイスを入れて沸騰させ、火を止めてからリキュールを加える。
3.容器にフルーツを入れてから熱いうちに2.を注ぎ、室温に置いて冷ます。
4.粗熱がとれたら冷蔵庫に入れ、冷やしてからいただく。
刻んだミントを入れてもおいしい。リキュールはフルーツ系のものが相性よし。
コンポートといっても、あえて煮ないでスパイスの効いたシロップが浸み込んだ果実を味わいましょう。
そのままでも十分においしいのですが、ちょっとひと手間かけるだけで秋らしいほっとするようなデザートになります。
器には友人から貰った肉のテリーヌ用の土鍋を使いました。おばあさんが何十年もの間、愛用してきたものだそうで、肉汁が浸み込み長年のオーブンの熱に耐えてできた貫入(釉のヒビ)、どっしりとした逞しい形、時を経てきた陶器ならではの独特の風情があります。
「家族のためにおいしいものを作ろう」という持ち主の台所でずっと役に立ってきた道具には、家族の命を養いそれを大切に使い続けてきた人の魂を感じます。

料理クリエイター
長い間モードの仕事に携わった後、2003年に渡仏。料理学校でフランス料理のCAP(職業適性国家資格)を取得。 パリで日本料理教室やデモンストレーション、東京でフランス料理教室を開催。フランスの料理専門誌や料理本で、レシピ&スタイリングを担当。この連載をまとめた『パリのマルシェを歩く』(CCCメディアハウス刊)が発売中。
近著に映画の料理を紹介した本『La cuisine japonaise à l'écran』(Gallimard社)と『Le Grand manuel de la cuisine Japonaise』(Hachette-Marabout社)がフランス全土と海外県、ヨーロッパ各地で発売。
Instagram : @haradasachiyo