パリから田舎へ ヴォージュ6月のマルシェ
おうちでパリの味 2019.06.19
祭日にHautes Vosges(ヴォ―ジュ山脈)の湖Gérardmer(ジェラルメー)に行ってきました。
ここは、ロレーヌ地方とお隣アルザス地方にまたがって、山々が連なるところ。山から湧き出でる水のおいしいこと! シャワーの水も柔らかくて肌に優しく、そんな水に浸かると眠りも深い。
ミネラルウォーターで有名なVittele(ヴィッテル)はすぐ傍です。
滞在したのは山の中のシャレ―。林業が盛んな土地柄、特産のモミの木で造られていてどこも素敵です。
玄関のしつらえや雪のモチーフを施したベランダもいい。
朝の陽が湖に差してくる、夕日が山の稜線に消えていく様子を日々静かに拝んでいるとありがたい気持ちになってきます。
隣には童話のような家が。
昔から繊維業で栄えた街らしく、ベッドやテーブルリネンのブティックが沢山あります。
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さて、土曜のマルシェへ。
入り口に、近くの湖Longemer(ロンジュメール)で酪農を営むおばあちゃんのスタンドが。
「写真を撮ってもいい?(チーズなんだけど)」 と尋ねると、「え、あたし?」と緊張しながらポーズを……もう何もかも微笑ましいなあ。
おばあちゃんがみずから牛の乳を搾って造ったチーズは、混じりっけのない素朴な味、春の草の香り。
隣りのおじさんは自家製のジャムやトマトの苗を。昨日採ってきたという野生のアスパラガスを一束買いました。
1920年以来、ひいおじいさんの代から4代目というApiculteur (アピキュルター=養蜂家) 一家が近くの山中で作っているはちみつ屋Bernard NOEL。
こんな空気の澄んだところでハチ達がせっせと蜜を集めてくれるなら、さぞおいしいでしょう! 味見をしながら、山のはちみつと森のはちみつをお土産に。
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そして、山間で酪農家たちが作るシャッキュトリーやチーズがここのスペシャリティ。
モミの木やブナで燻された牛肉の燻製やソーセージなどが豊富に揃っています。
ヴォ―ジュといえば、チーズフォンデュやラクレット。スキーシーズンの食卓には欠かせないもの。
こちらも、山に自生しているハーブを入れたソーセージもりもり。
ロレーヌ地方Val d’Ajol(ヴァル ダジョル)産のソーセージがおいしそうです。
やはりここでは、隣のアルザスワインが王道。もちろん大好物Gewurztraminerゲヴルツトラミネールをたくさん頂きました。
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この地の名物、Bonbons des Vosges(ボンボン デ ヴォ―ジュ)は天然のエッセンシャルオイルやはちみつなどを銅鍋を使って昔ながらの手法で作っているもの。
フルーツ王国アルザスから、着色料や保存料を入れないナチュラルなシロップ。ミラベルやカシスにスパイス入りのものが。
酪農中心の所なので、野菜やフルーツなどの多くは隣り県のアルザスから運ばれたものが多い。
アルザス産のアスパラは旬真っ盛りなので、一束購入。
こちらも今が旬のルヴァーブ。
多くの八百屋で売られている野菜やハーブの苗。植え付けが楽しいシーズンが始まりました。
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マルシェで買ったチーズ、ソーセージやパンを持って湖Longemer(ロンジュメール)へピクニック。澄んだ水が美しく清々しい。
カヤックやボートで遊ぶ人、泳いでいる犬たちも嬉しそう。
Le Mont Honeck(ル モン オネック=オネック山)の頂上を目指してトレッキングを始めたら、どこからともなく風に乗って”カランコロン カランコロン”。
振り返ってみると遥か遠くに牛の群れが!(右上)ハイジの世界が広がっていました。
山から流れる湧き水を飲んだり気ままにのんびり。
後で聞いたのですが、この牛たちはVosgienne(ヴォージェンヌ)<パリジェンヌ みたい>と呼ばれるヴォ―ジュ固有の希少種なので、大切に保護され(その割に食べてませんか?)搾った乳でマンステールチーズを造り、肉は燻製やソーセージに加工されているとのこと。
毎年パリで開催される農業見本市にはここからはるばる出かける、大人気の”スター牛”だそう。
そういえば、マルシェで買ったおばあちゃんのチーズもこの牛の乳でした!
ああ、山ともシャレーともお別れして……パリに戻って来て作ったのは、マルシェで買ったアスパラとモミの木で燻煙した燻製肉の一品です。
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■白アスパラとベーコンの蒸し煮
Asperges blanche et bouillon de lard fumé au bois de hêtre
―材料 2人分
白アスパラガス 6本
野生のアスパラガス 少々
(もしくは青菜やハーブ)
ベーコン 2枚
水 カップ1/2
日本酒 小さじ2
レモンの皮千切り 少々
塩 少々
―作り方
1. 白アスパラガスの下5cmくらいの硬い皮をピーラーで剥く。
2. フライパンに水カップ1/2と刻んだベーコンを入れて強火で沸騰させて1~2分煮て、ベーコンのブイヨンが出たところにアスパラガスを入れ蓋をして中火で3分程蒸し煮。
3. 野生のアスパラガス(又は青菜かハーブ)を入れて蓋をして2分程火を通す。
4. 最後にさっと日本酒を振り、塩で味を調えて(ベーコンの塩分と加減しながら)皿に盛りレモンの皮をのせる。
*アスパラガスは、お湯で茹でてしまうと、旨みがお湯の中に出てしまい残念なので、このように少しの水分か酒で蒸し煮・蒸し焼きにしています。淡泊な味の野菜にベーコンのブイヨン、燻製の風味をつけると一層美味しい。
他の野菜もシンプルに調理して素材の味そのものを楽しんでいます。
■Marché Gérardmer マルシェ・ジェラルメー
Place du 8 mai 45, Gérardmer 88407
営)木・土曜 9~13時
*ヴォ―ジュの観光案内・アクセスはこちら。
*ジェラルメ―のサイトはこちら。
料理クリエイター
長い間モードの仕事に携わった後、2003年に渡仏。料理学校でフランス料理のCAP(職業 適性国家資格)を取得。 パリで日本料理教室やデモンストレーション、東京でフランス料理 教室を開催。フランスの料理専門誌や料理本で、レシピ&スタイリングを担当。2016年春、ベジタリアン向けの料理本『LA CUISINE VEGETARIENNE』をフランス全土と海外県、ベルギー、スイス、イギリスなどのヨーロッパ各地で発売。この連載をまとめた『パリのマルシェを歩く』(CCCメディアハウス刊)が発売中。
Instagram : @haradasachiyo

料理クリエイター
長い間モードの仕事に携わった後、2003年に渡仏。料理学校でフランス料理のCAP(職業適性国家資格)を取得。 パリで日本料理教室やデモンストレーション、東京でフランス料理教室を開催。フランスの料理専門誌や料理本で、レシピ&スタイリングを担当。この連載をまとめた『パリのマルシェを歩く』(CCCメディアハウス刊)が発売中。
近著に映画の料理を紹介した本『La cuisine japonaise à l'écran』(Gallimard社)と『Le Grand manuel de la cuisine Japonaise』(Hachette-Marabout社)がフランス全土と海外県、ヨーロッパ各地で発売。
Instagram : @haradasachiyo