トゥルーヴィルのマルシェと海のパエリア。
おうちでパリの味 2021.09.04
ノルマンディーのトゥルーヴィルでヴァカンスを過ごしてきました。
前半は肌寒く雨も多かったので、ビーチで日光浴というわけにはいきませんでしたが、その代わりに毎日たくさん街歩き。何度も行っているのに知らなかった場所、おいしいパティスリー、隠れ家のようなカフェなど“お気に入りアドレス”が増えた旅でした。
パリで生まれ、この地に魅せられて生涯を終えたアーティスト、レイモン・サヴィニャックと、ここで生まれた作家ギュスターヴ・フロベールの小説の一節が書かれたポスター。今年、生誕200年を迎えたフロベールのイベントが来年6月までノルマンディー各地で開催されています。
歩きながら街中にあるサヴィニャックのポスターや看板巡り。
ユーモアやセンスのいい色使いを見ていると和んでくる。
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そして、ヴィラが連なる海岸を歩くと、ノルマンディーらしい建物が素敵。
マルグリット・デュラスが、『愛人・ラマン』をはじめ数々の作品を執筆しながら終の棲家としたアパートLes Roches noires(レ・ロッシュ・ノワール)。ここから海を眺めながら書いていた姿を思い浮かべ、しばし感慨に浸る。
夕食後は夕陽を見に、また海辺へ。
陽が沈んでからの僅かな光もまた美しい。
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ある日は、橋を渡って隣にあるドーヴィルへ。
新設された見張り台もドーヴィルらしく洒落ています。
この日は強風と寒さで人もまばら。晴れたり曇ったり目まぐるしく変わるノルマンディーらしい天気もまた旅の思い出。
Les Planches(レ・プランシュ、板張りの遊歩道)と19世紀に建てられキャビンは、当時のスタイルのまま。
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さて、日曜のマルシェへ。
ロティスリーには炊きあがったばかりのコダラと手長エビのパエリア。
ノルマンディーらしい、鴨肉のシードル煮込み。
地元の農家の野菜。今年は長雨と寒さのせいでいまひとつ、いつもの勢いがないのが残念です。
アプリコット、サクランボにベリー類も豊か。
トマトノワール(黒トマト)、アナナス(パイナップル)、カー・ド・ブッフ(牛の心臓)と、古代種が揃うのは夏ならでは。
漁師直売のスタンドには地魚のカレイ、サバ、八角や舌平目が並ぶ。
ヴァカンスの間、毎日夕方から始まるアペロ用にシャルキュトリーが人気。
こちらもアペロを彩るオリーブやタップナード。
観光客で賑わっているスタンドには、ノルマンディー特産のカルヴァドスにフルーツ、ハーブやスパイスを加えてアレンジしたものが。なるほど、こんなカクテルは家でも作れそう。
読書好きなフランス人は、長いヴァカンスの間も本を読んで過ごす。ブロカントやマルシェで古本を探すのもひとつの愉しみ。
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ここトゥルーヴィルは、ノルマンディーでいちばん多くサバが水揚げされる(年間約700t)ので有名。春の産卵シーズンが終わって、サバに少しずつ脂がのってくるのは6月。7月は最盛期で、海が荒れない限り毎日漁に出て、戻ってきた漁船は海から繋がるTouque(トック)川沿いに係留されて、16時ころから魚が並ぶ。
これを目当てに観光客や地元の人たちが集まってくる。グリル、サンドイッチ、竜田揚げにサバ寿司……毎日作っては食べの“サバずくし”でした。
他にはアジ、ヒラメ、ヒメジ、蟹やスープドポワソン用の雑魚。どれも新鮮で格安!
滞在中に何度か作るムール&フリット(ムールのワイン蒸しとフライドポテト)の残りを、いつもは翌日パスタにするのですが、パエリアにしてみたら貝のだしを吸ったお米がなんともおいしかったので、今日はそれをご紹介!
■サバとムール貝のパエリア
Paella aux moules et maquereaux
〈材料2人分〉
米 150g
サバ 1尾
塩 少々
小麦粉 大さじ2
ムール貝 300g
ニンニク 1片 みじん切り
日本酒又は白ワイン カップ1/2
玉ネギ 1/2個 みじん切り
トマト 1個 小口切り
ニンジン 1/2本 千切り
サフラン 一つまみに水大さじ1を加えておく
コショウ 少々
レモン 1/2個 くし形に切り分ける
小ネギまたはパセリ 少々 みじん切り
オリーブ油 大さじ3
〈作り方〉
1.米を研いで30分以上浸水しておく。
2.サバを塩で〆る:3枚おろしの両面に軽く塩を振って冷蔵庫に20分ほど入れて、出てきた水分をキッチンペーパーでふき取り、中心の小骨を抜き、食べやすい大きさに切る。
3.ニンニクとオリーブオイル大さじ1をフライパンに入れて点火、中火にして香りを出す。ムール貝を入れて強火にし、酒を注ぎ蓋をする。貝が開いたら火から下し、貝とスープを分ける。スープを計量カップに入れ、250ccになるまで水を足す。
4.同じフライパンにオリーブオイル大さじ1を入れて玉ネギを透明になるまで炒める。ニンジンを加えて1分ほど炒めたら火を止める。ザルにあげて水を切った米、サフラン、コショウとムール貝のスープを入れて強火にする。沸騰したら2~3分煮てから弱火にして蓋をし、10分炊き、火を止めて10分蒸らす。
5.米を炊いている間にサバを焼く。フライパンにオリーブオイル大さじ1を入れ温める。ビニール袋に小麦粉を入れ、サバを少しずつ入れながら、袋を振ってまんべんなく薄く粉をつけて焼いていく。
6.4の米の上にムール貝、トマト、サバ、レモン、小ネギをのせる。
※フライパンに合う蓋がなければ、アルミホイルをかぶせて代用。
※サバをのせて米を炊いてもよし。
※フランスのムール貝は、かなり塩分が強いので、味付けが不要ですが、日本で作る場合は、その都度味見をして、お吸い物より少し濃いめの味になるまで塩を加えてください。
Boulevard Fernand Mourceaux
14360 Trouville-sur-Mer
営)水・日 8:00~13:00
料理クリエイター
長い間モードの仕事に携わった後、2003年に渡仏。料理学校でフランス料理のCAP(職業適性国家資格)を取得。 パリで日本料理教室やデモンストレーション、東京でフランス料理教室を開催。フランスの料理専門誌や料理本で、レシピ&スタイリングを担当。16年春、ベジタリアン向けの料理本『LA CUISINE VEGETARIENNE』をフランス全土と海外県、ベルギー、スイス、イギリスなどのヨーロッパ各地で発売。この連載をまとめた『パリのマルシェを歩く』(CCCメディアハウス刊)が発売中。近著に『LE B.A.-BA DE LA CUISINE “Ramen”』(Edition Marabout Hachette社 刊)がある。
Instagram : @haradasachiyo
料理クリエイター
長い間モードの仕事に携わった後、2003年に渡仏。料理学校でフランス料理のCAP(職業適性国家資格)を取得。 パリで日本料理教室やデモンストレーション、東京でフランス料理教室を開催。フランスの料理専門誌や料理本で、レシピ&スタイリングを担当。この連載をまとめた『パリのマルシェを歩く』(CCCメディアハウス刊)が発売中。
近著に映画の料理を紹介した本『La cuisine japonaise à l'écran』(Gallimard社)と『Le Grand manuel de la cuisine Japonaise』(Hachette-Marabout社)がフランス全土と海外県、ヨーロッパ各地で発売。
Instagram : @haradasachiyo