パリ風おせち料理で新春を祝う。

みなさま、本年もよろしくお願いいたします。

このお正月も日本への帰国が叶わなかったのですが、パリで揃う食材を使いながら、おせち料理を作って愉しみました。

大晦日の朝、おせち用の魚介を買いにマルシェに行くと、ノエルと同じく牡蛎屋、魚屋には長蛇の列。
海老や蟹、その他のおめでたい品々は普段の2~3倍のお値段になっていて驚き!

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そして、花屋に並ぶ人たちの手には、それぞれ宿り木が。

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Gui(ギ)宿り木は、フランスの年越しに欠かせない縁起物で、日本のしめ飾りにあたるでしょうか。大晦日に年があけてから、その下でキスをすると一年中幸せに暮せると言い伝えられているもの。私も一束買って玄関に飾りました。

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さて、家に戻ってひと息。数日前から準備している栗の渋皮煮、黒豆、金柑に再度火入れをしてから、一気におせちの仕込み開始!

元旦の昼になって、おもてなしをするのに盛り付けていったのは23品ほど。

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左上から時計回りに、①金柑の甘露煮には、アルザス産ミラベルのリキュールとハチミツをいれました。②サツマイモの代わりにカボチャきんとんに栗渋皮煮、上に金箔を。③はんぺんの代わりに豆腐を入れた伊達巻。④Marteauマルトーという甘くみずみずしいミニ大根を使った紅白の菊花。⑤地鶏のファルシーの中には、ノワゼット(ヘーゼルナッツ)、クコの実、レーズンにダーツの実を入れて、味付けはマデラ酒と醤油をベースに焦がしバターを少々。⑥牛肉のフィレをカルパッチョ用に切ってもらって八幡巻を。中の市松は人参とパネ。⑦田作りに入れたのは、煎ったクルミ、白ごまとクコの実。

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左上から時計回りに、①地鶏のもも肉を挽肉にして、春雨と白味噌入りの松風を。その上に枝豆と海老をのせて出汁とアガアガで寒天寄せに。②昆布巻きの中には、豚のフィレ・ミニヨンを入れ、友人が九州で育てた青山椒を入れて煮たもの。③これはとっておき、北海道の父が育てた大粒の黒豆。黒いキビ砂糖に醤油を一滴。④紅白うずらのピクルス。紅は梅酢、白は甘酢漬け。⑤海老の旨煮。⑥花れんこんは、母が作った梅干しの梅酢で染めたもの。白は甘酢にゆず汁を少し。⑦れんこんの甘酢漬けに挟んだスモークサーモン。⑧ラディッシュとイクラの醤油漬けの花の下には紅白なます。

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左上から時計回りに、①貝合わせの中には、酢ゴボウならぬ、酢パネ。ゴボウが手に入らなかったので、Panais(パネ/パースニップ)を使いました。②おめでたい六方むきの里芋の煮物。③ブルターニュ産七面鳥を入れた旨煮。④ノルマンディー産のホタテ貝を西京漬けにして焼いたもの。食感ねっとり、味濃厚で日本酒によく合う。⑤マルシェに活きたブロ貝があったので、茹でてから鷹の爪を入れて出汁醤油漬けに。⑥魚屋に珍しく活アワビがあったので、酒蒸しに。⑦豚のフィレをコトコト茹でてニンニク・ショウガ醤油に漬けたもの。⑧Topinambour(トピナンブ―ル=菊芋)のきんぴらにクコの実と白ごま。これは皮を剥かずに、ゴボウのような風味を味わう。

おせち料理には、やっぱり日本酒よね! と張り切った友人がパリのジョエル・ロブションで買ってきてくれた“獺祭”が嬉しくておいしくて、正月早々飲みすぎました。

コロナに加えて南仏では洪水や大火事が起こり、災禍に喘ぐ人々もいる中で、ささやかながらもこうして雨風をしのげる家があり、健康でいられることが本当にありがたい。
そう思いつつ、おせちを仕込みながらひとつひとつに新年の祈りを込めました。

会えない家族恋しさは、どうにもならないけれど、元旦から大好きな友人たちと分け合えるものがあって、幸せな一年の始まりとなりました。
それが当たり前のことじゃなくて奇跡、“こりゃあ春から実に運がいい!”

心にも身体にも大変な時期ですが、小さな喜びを見つけながら日々過ごしていきたいと思います。
みなさまにとってもよい年になりますように!

Sachiyo Harada/料理クリエイター
長い間モードの仕事に携わった後、2003年に渡仏。料理学校でフランス料理のCAP(職業適性国家資格)を取得。 パリで日本料理教室やデモンストレーション、東京でフランス料理教室を開催。フランスの料理専門誌や料理本で、レシピ&スタイリングを担当。16年春、ベジタリアン向けの料理本『LA CUISINE VEGETARIENNE』をフランス全土と海外県、ベルギー、スイス、イギリスなどのヨーロッパ各地で発売。この連載をまとめた『パリのマルシェを歩く』(CCCメディアハウス刊)が発売中。近著に『LE B.A.-BA DE LA CUISINE “Ramen”』(Edition Marabout Hachette社 刊)がある。
Instagram : @haradasachiyo

料理クリエイター
長い間モードの仕事に携わった後、2003年に渡仏。料理学校でフランス料理のCAP(職業適性国家資格)を取得。 パリで日本料理教室やデモンストレーション、東京でフランス料理教室を開催。フランスの料理専門誌や料理本で、レシピ&スタイリングを担当。この連載をまとめた『パリのマルシェを歩く』(CCCメディアハウス刊)が発売中。
近著に映画の料理を紹介した本『La cuisine japonaise à l'écran』(Gallimard社)と『Le Grand manuel de la cuisine Japonaise』(Hachette-Marabout社)がフランス全土と海外県、ヨーロッパ各地で発売。
Instagram : @haradasachiyo

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