時計とジュエリー、永遠のパートナーともなりうるこのふたつ。だからこそ、ブランドやそのモノの背景にあるストーリーに耳を傾けたい。いいモノにある、いい物語を語る連載「いいモノ語り」。
今回は、シャネルのウォッチとロングネックレス、そしてイヤホンが一体となった「プルミエール サウンド」の話をお届けします。
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CHANEL
PREMIÈRE SOUND
メゾンの象徴を巧みにちりばめた斬新なウォッチがパリから到着。
シャネルから、誰も予想しなかったニューモデルが登場。あまりにもアイコニックなシャネル初のウォッチとして知られる「プルミエール」が、ウォッチとロングネックレス、そしてイヤホンが一体となった「プルミエール サウンド」に進化した。
ブラックとゴールドというメゾンのカラーコードを纏ったロングネックレスには、マイク付きの高性能なイヤホンをセットすることが可能。イヤホンは無線ではなく、あえて有線。音質がよくアクセサリー感のある有線オーディオデバイスは、このところファッションコンシャスなセレブリティたちの間で人気が高まっていて、音楽鑑賞の新しいスタイルを生み出している。そして、胸元でしなやかに揺れるロングネックレスは、かつてガブリエル・シャネル自身がこよなく愛したアイテムでもあり、洗練されたエレガンスを着こなしにプラスする効果を持つ。
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このネックレスウォッチのインスピレーション源となった伝説的ウォッチ「プルミエール」が発表されたのは1987年。当時の異才アーティスティックディレクター、ジャック・エリュがデザインを手がけた。レザーを編み込んだゴールドカラーのチェーンは、あのシンボリックなハンドバッグのイメージ。また八角形の印象的な時計ケースのシェイプは、香水「シャネ1987」のボトルストッパーをかたどっており、ヴァンドーム広場を上空から見た時の形にもちなんでいる。ヴァンドーム広場にある5ツ星ホテル、オテル・リッツ・パリで暮らしたガブリエルは、窓から何度も広場を見下ろしたことだろう。
メゾンのレガシーのひとつでもある「プルミエール」に深いオマージュを捧げ、現在のシャネル ウォッチメイキング クリエイション スタジオ ディレクター、アルノー・シャスタンは、これを復刻した「プルミエール エデ2022ィション オリジナル」を2022年に発表。さらに今年、オリジナルのウォッチが持つ象徴的なデザインコードをそのまま生かしつつ"音楽"という新しい魅力も加えた「プルミエール サウンド」をデザインしたというわけだ。
シャネルのウォッチは、手首の上という定位置から飛び出して、ジュエリーのように胸元で揺れ、澄んだ音を鳴らして心を別世界へと誘ってくれる。「プルミエール サウンド」を身に着けて街へ出れば、きっといつもの風景が明るく輝いて見えるはず。
*「フィガロジャポン」2024年11月号より抜粋
photography: Ayumu Yoshida styling: Tomoko Iijima text: Keiko Homma editing: Mami Aiko