時計とジュエリー、永遠のパートナーともなりうるこのふたつ。だからこそ、ブランドやそのモノの背景にあるストーリーに耳を傾けたい。いいモノにある、いい物語を語る連載「いいモノ語り」。
今回は、ラリックのジュエリーコレクション「テラミネラル」の話をお届けします。
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LALIQUE
TERRAMINERAL

大地の色彩を映して輝く、ミネラルなブルー。
フランスきっての名門クリスタルガラスメゾン、ラリックが最新ジュエリーコレクション「テラミネラル」を発表。大地が描き出す力強い造形や、ありのままの自然の美しさからインスピレーションを得たデザインは、どこかワイルドでありながらも、根底に流れるのは洗練されたエレガンス。日常のデニムやシャツにも、そして特別な日のドレスにもしっくりと溶け込んでくれる。
光を浴びて煌めく「テラミネラル」ネックレスは、澄んだ水晶のかけらを連ねたようなデザイン。水晶の結晶は、数百万年から数億年前に地球の深部に流れるマグマの熱で生まれたという。そこでメゾンが今回フィーチャーしたのは、ペルセポリスブルーと名づけられたニュアンスのある青のクリスタル。アイスランドの活火山から湧き出す熱水をイメージしたというこのブルーは、大地のパワーを宿した色といってもいいかもしれない。「テラミネラル」ネックレスは、地球規模のドラマを秘めた鉱物の美しさを、メゾンならではのクリスタルでスタイリッシュに表現しているのだ。
ペルセポリスブルーのベースを手作業で研磨し、しっとりとしたフロスト加工を施す工程。
ラリックは1888年、優れた芸術家だったルネ・ラリックによって創業。宝石やエナメルを大胆にあしらったアールヌーボー様式のジュエリーを1900年のパリ万国博覧会に出品し、ヨーロッパやアメリカに大センセーションを巻き起こした。20世紀に入ってからのルネ・ラリックは、モダンなガラスのフレグランスボトルを次々と手がけ、いまからちょうど100年前のパリ、アールデコ博覧会では「フランスの源泉」と名付けた大きなガラスの噴水を会場に建設して黒山の人だかりを作った。彼はジュエリーとガラスのふたつの分野で歴史に名を残した天才だったのだ。
現代のラリックは、そうした創業者のエスプリを受け継ぎ、クリスタルのデコレーションアイテムやジュエリー、フレグランス、アートピースなど、優雅な品々を幅広く制作。アールドゥヴィーヴル(暮らしの美学)を体現するメゾンとして、現在も愛され続けている。
デカンタやフラワーベースなども揃う、新作「テラミネラル」コレクション。それらを手作業で仕上げるのは、フランスの誇る卓越したクリスタル職人たちだ。デカンタのボトルストッパーにも鉱物のようなディテールがあって、ジュエリーとリンクした美意識が息づいている。このネックレスも身に着けるアールドゥヴィーヴルとして、さまざまなシーンで上質な輝きを放ってくれるはずだ。
ジュエリー&ウォッチジャーナリスト
ピアスの穴が耳たぶの下のほうに開いているので、それを中央に開け直したい。ということでピストル型のピアッサー(穴開け器)を購入。でもまだ開けてません......。
*「フィガロジャポン」2025年9月号より抜粋
photography: Ayumu Yoshida styling: Tomoko Iijima text: Keiko Homma editing: Mami Aiko