時計とジュエリー、永遠のパートナーともなりうるこのふたつ。だからこそ、ブランドやそのモノの背景にあるストーリーに耳を傾けたい。いいモノにある、いい物語を語る連載「いいモノ語り」。
今回は、ルイ・ヴィトンのウォッチ「ルイ・ヴィトン モントレー」の話をお届けします。
file : 101
LOUIS VUITTON
LOUIS VUITTON MONTEREY

ストラップと時計を繋ぐラグを取り去ったシンプルなデザインで、丸みのあるペブルシェイプを強調。世界で188本のみ限定生産の貴重品。時計「ルイ・ヴィトン モントレー オトマティック イエローゴールド」(YG×エナメル、φ39mm、自動巻き、カーフストラップ)¥8,503,000/ルイ・ヴィトン(ルイ・ヴィトン クライアントサービス)
どこか昔懐かしい、名品ウォッチの見事な再来。
ルイ・ヴィトンの新作ウォッチが、目の肥えた時計愛好家たちの間で話題となっている。熱い視線を一身に集めているのは「ルイ・ヴィトン モントレー」。1988年にメゾン初の腕時計コレクションとして発表された名品を、忠実に復刻したデザインだ。今回は188本の限定生産であることから、人気が急激に高まっている。
かつてモントレという愛称で呼ばれたオリジナルモデル「LV Ⅰ」「LV Ⅱ」を手がけたのは、女性建築家にしてインダストリアルデザイナーでもあるガエ・アウレンティ。老朽化したパリの鉄道駅をオルセー美術館として大改修する国家プロジェクトを率いた俊才だ。彼女は丸みを帯びたペブルシェイプの時計をデザインし、リュウズを12時位置に配置。鉄道のレールを思わせる目盛りを文字盤にあしらい、鮮やかな赤い針を配した。メゾンのウィメンズ・コレクション アーティスティック・ディレクター、ニコラ・ジェスキエールは、2025年秋冬コレクションのランウェイでヒストリカルな「LV Ⅱ」を登場させ、オマージュを捧げている。
そして新たな「ルイ・ヴィトン モントレー」は、かつての名品のデザインコードを大切に守りつつも、高度なサヴォワールフェールによって品質が大幅にアップデート。以前のモデルはクオーツだったが、新作は自社製自動巻きムーブメントを搭載している。

特殊な機械を操作し、文字盤の目盛りや数字を1色ずつスタンプ。大量生産はできない。
さらに文字盤に注ぎ込まれたのは、グラン・フー・エナメルという伝統工芸の職人技。これによって独特の艶やかな光沢が生み出されているのだ。
グラン・フー・エナメルとはガラス質のパウダーを水に溶いて塗り、高温の炉で焼き上げる技。ホワイトは完璧に仕上げるのが最も難しい色合いとされ、塗りと焼き上げを何度も繰り返した後、さらに10回も焼いてオパールのようなニュアンスを持つ透明感を追求。目盛りや数字などは特殊な機械でスタンプし、色ごとに8回ずつ焼成しているという。
これほど手間をかけて美しく仕上がった「ルイ・ヴィトン モントレー」は、どこか昔の懐中時計を思わせるヴィンテージな顔立ち。そう、メゾンが創業し、旅行用トランクで多くの顧客を魅了した19世紀後半は、人々は懐中時計を身に着け、蒸気機関車にゴトゴトと揺られて、いくつものトランクとともに旅をしていた時代だ。そんな昔のおおらかな旅の記憶を留める名品だから、時計をこよなく愛する目利きのコレクターたちは、この優れた新作から目が離せないのだ。
ジュエリー&ウォッチジャーナリスト
またもスイス出張。スイスはワインの名産地ながら、ほとんど輸出していないため、日本では味わう機会がない。というわけで地ワインをおおいに飲んできました。
*「フィガロジャポン」2026年2月号より抜粋
photography: Ayumu Yoshida styling: Tomoko Iijima text: Keiko Homma editing: Mami Aiko






