時計とジュエリー、永遠のパートナーともなりうるこのふたつ。だからこそ、ブランドやそのモノの背景にあるストーリーに耳を傾けたい。いいモノにある、いい物語を語る連載「いいモノ語り」。
今回は、ダミアーニのジュエリー「ベル エポック・リール」の話をお届けします。
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DAMIANI
BELLE ÉPOQUE REEL

シックな表情のブラックダイヤモンド。フィルムのコマからインスピレーションを得た中央のモチーフ部分が透かし細工になっていることにも注目。ほどよいボリュームがありながら軽やかに着けられるのがうれしい。リング「ベル エポック・リール」(WG×ブラックダイヤモンド)¥910,800~(価格はリングサイズによって異なる)/ダミアーニ(ダミアーニ・ジャパン)
輝きの記憶を宿して、軽やかに回転するリング。
ダミアーニのアイコンジュエリーのひとつ「ベル エポック・リール」に、ブラックダイヤモンドをぐるりと一周セットした新作リングが登場。黒と白とのカラーコントラストが鮮やかで、デザインのモダンさが一層際立って見える。甘さを抑えたビターなブラックのおかげで、マチュアな印象で着けられるのが魅力だ。
この「ベル エポック・リール」コレクションには、実際に手に取った人だけが気付く大きな特徴がある。四角と丸のモチーフが並んだ中央部分がくるくると回転するのだ。ベアリングが入っているのではなく、仕立ての精密さでこの軽快な回転を実現しているのがポイント。複数のパーツを組み上げて、中央部分だけを滑らかに回るように仕立てるには、熟練の技が必要なのだ。イタリア屈指のジュエラーならではの"動きのあるジュエリー"だ。
ベル エポックは、20世紀初頭のパリを中心にして広まった華やかな繁栄の時代。世紀末が去り、新世紀がドラマティックに幕を開けた、芸術やカルチャーの大転換期のことだ。
ジュエリーのマエストロとして知られた創業者エンリコ・グラッシ・ダミアーニは、ちょうどこの頃パリに向かい、胸躍る旅の思い出をスケッチとして残していた。そこに描かれていた絵が、現代の「ベル エポック」コレクションのベースになったのだという。
何もかもが目新しいパリで、エンリコが描き留めたのは映画。20世紀初頭は映画の黎明期で、まったく新しい技術が人々を熱狂させていた。そう、「ベル エポック・リール」のモチーフは、古きよき時代の映画フィルムのイメージなのだ。

複数のパーツを組み上げてひとつのリングに。精密に計算された構造で滑らかな回転を実現。©Lucrezia Roda
イタリア映画の名作『ニュー・シネマ・パラダイス』のワンシーンで、映写機のリールがリズミカルに回るように、リングもくるくると回る。1コマずつ映像を焼きつけた白黒フィルムが長い物語を映し出すように、リングのモチーフも途切れることなくどこまでも続く。
ブランド発祥の地、ピエモンテ州ヴァレンツァは、数多くの宝石工房がひしめく世界的なジュエリーメイキングの街。その地で培われた伝統の技を惜しみなく注ぎ込み、ダミアーニのコレクションは丁寧に仕立てられている。いまなおエンリコの孫たちによって昔ながらのファミリービジネスが続けられているからこそ「ベル エポック・リール」はどこか温かくて人間的。スタイリッシュなデザインの内側に、昔懐かしく輝かしい時代の記憶がいまも宿っている。
ジュエリー&ウォッチジャーナリスト
バッグとブーツを買わねば......と街に繰り出したのに、なぜかジュエリーが入ったショッパーを手にして帰宅。どうして毎回こうなるのか、ほんとに不思議です。
*「フィガロジャポン」2026年3月号より抜粋
photography: Ayumu Yoshida styling: Tomoko Iijima text: Keiko Homma editing: Mami Aiko






