クリエイターの言葉 「何を着るかは私の自由」性的暴力に抗議するトップモデルの運動とは?

インタビュー 2021.11.24

何を着るかは女性の自由、SNSが生んだムーブメント。

シンディ・ビショップ|モデル、UN Women アジア・パシフィック親善大使

2018年にタイで始まったムーブメント「#Donʼt Tell Me How To Dress」を直訳すると、私が何を着るべきか誰にも言われたくないとなる。きっかけは、タイ政府がお祭りでの性的暴力防止目的で、女性はセクシーな服での外出を控えるようにと呼びかけたことだ。性的暴力は被害者の服装が原因であるとする筋違いなメッセージに、タイのトップモデル、シンディ・ビショップは憤慨し、原因は加害者にあるとSNSで怒りを発信した。

「#Donʼt Tell Me How To Dressとタグ付けた私の投稿へ、自身のストーリーを共有する共感コメントが瞬く間に多く寄せられたことに驚き、ムーブメントにしなければと強く感じました。NGOやUN Womenに協力を要請し、性的暴力に対抗するソーシャルパワー展を企画。この展示は、タイ、シンガポール、フィリピンでの巡回を終え、オンラインで展開しています」

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タイで始まったムーブメント「#Don’t Tell Me How To Dress」は、「性的暴力やハラスメントは、決して女性の責任じゃない。女性には着たい服を選ぶ権利があり、男性は自分をコントロールすべき」というシンディの投稿で始まった。性的暴力の被害者がその時に何を着ていて、どんな状況で被害に遭ったのか、彼女たちの服装には何の責任もないことを伝えるソーシャルパワー展は、オンラインでも閲覧可能だ。www.donttellmehowtodress.com

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ソーシャルパワー展では、性的暴力の状況を語る物語とともに被害者が着ていた服を展示。原因は加害者の問題であり、女性の服装とは無関係であることを訴える。彼女たちが着ていたのは、オーバーサイズのTシャツや学校や病院の制服、子どもが至極普通に着るような服だ。従来話すべきではない、恥ずべきこととして扱われてきた問題をビジュアルとして公にした展示は、男性にもショックを与え、その意義を賞賛された。性的暴力の撲滅を目指すシンディの思いは、コロナ禍で悪化する“陰のパンデミック”(女性と女児に対する暴力)によって、さらに強まっている。

「全世界で女性の3人にひとりが性的被害を経験するような現代社会は、何かが壊れています。ひとりの女として、母として、自分の持つ影響力を生かし、社会を変える機動力になるべく活動しています。ジェンダーやセックス、性的暴力についてもっとオープンに会話ができ、女性が支援を求めやすいような環境を作っていきたい」

シンディは、モデルとしてファッション業界が決めた美しさの基準になってきた人生についても彼女ならではの意義を模索する。

「ファッションも時代を反映し、イメージが多様化してきている。モデルとして理想の美という枠組みにはまらなければならないことに私自身も葛藤がありましたが、この仕事を通じて表現することを学んだのも事実です。性的暴力に対しても、できることは身近にある。自分の経験をもとに、いかに差別のない未来に繋げていけるか。パートナーや子どもたちも巻き込み、ぜひ勇気を持って表現してほしい。望ましい未来を一緒に作っていきましょう」

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CINDY BISHOP/シンディ・ビショップ
タイ・バンコク生まれ。1996年にミス・タイに選出されるが、多人種の容貌から、タイ人とは何かという論議を醸した。モデル、TV司会者、コンテンツプロデューサーとして活躍中。2020年10月にUN Womenの親善大使に任命された。

*「フィガロジャポン」2021年12月号より抜粋

text: Chinami Inaishi photography: Punsiri Siriwetchapun

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