UKジャズを世界に牽引する、新世代デュオ。
ブルー・ラブ・ビーツ|ミュージシャン
UKジャズが勢いを増している。ジャマイカなど中南米やアフリカ音楽の要素も取り込んだ英国発のジャズからは、次々と才気あふれるアーティストが登場し、ジャズの本場、米国とは異なった音楽の視点をここ数年で確立した。そのムーブメントで活躍するのが、ビートメイキングデュオ、ブルー・ラブ・ビーツだ。エレクトロニクスを操作してビートメイクするNK-OKと、ギター、ヴィブラフォンなど複数の生楽器を演奏するMr. DMから生まれる新しいジャズは、ロンドンのクラブを発信地として広がりつつある。
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「エレクトロニクスと生の楽器をミックスして音楽を作ること。僕らはそれがやりたかった。古いジャズとかレゲエなどの音源に生の楽器を融合したいと思ったし、そうすることで、普段はヒップホップとか、ラップしか聴いていないような人たちにも聴いてもらいたい。それが、ブルー・ラブ・ビーツが生まれた経緯だ」(NK-OK)
彼はプログラミングされたデジタル機器を操作し、ライブではその時のイマジネーションに応じて即興で進行していく。
「父親はミュージシャン、母親はDJ、祖母はジャズの偉大な先達、ジョン・コルトレーンのファンという家庭で育った。12歳から古いレコードを聴いてサンプリングしていたよ」(NK-OK)
「僕の両親も音楽が好きで、デューク・エリントンやエラ・フィッツジェラルドを聴かせてくれた。音楽がいつも家の中にあった。17歳の頃からクラブに顔を出してセッションに参加していたね。いまの僕にとって、当時学んだことが大きいよ」(Mr. DM)
古いジャズに囲まれて育った彼らが新しいセンスのジャズを演奏する音楽家になったのは、自然ななりゆきなのだろう。彼らの登場の新鮮さは、これまで限られた範囲内で語られてきたこの音楽が、大きなシーンに浮上するきっかけになることを予感させる。楽しそうにニコニコ笑いながら話すNK-OKを見ていると、この音楽に新しい個性が登場したことを思わずにいられない。
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「UKジャズの人たちはサブジャンルで名前をつけるんだ。たとえば、アフロビート、アマピアノとかね。僕らは、ジャズトロニカ、ソウルトロニカなど、さまざまな呼ばれ方をしている。でもすべて統合してUKジャズという大きなファミリーなんだ。ロンドンの狭いところでは、みんなが知り合いだ。でももっとたくさんのコラボレーションが生まれてほしいと思っているよ。UKだけじゃなくて、超えたところでね」
きっと彼らはそれを可能にするだろう。
2013年に北ロンドンを拠点として結成。メンバーはNK-OKことナマリ・クワンテンと、Mr.DMことデヴィッド・ムラクポル。16年に初EPをリリース。22年にアルバム『マザーランド・ジャーニー』を名門ジャズレーベルよりリリース。数多くの音楽賞を受賞。
*「フィガロジャポン」2023年3月号より抜粋
photography: Daehyun Im text: Atsuko Nakayasu