音楽がダンスを可視化するという、新しい哲学。
ジャングル|ミュージシャン
「リディアはハーモニーの作り方が素晴らしいし、声のトーンも信じられないくらい素敵。しかも曲によってスタイルを変えられる感覚を持つ。僕らは常に楽曲に最適なスタイルを最優先するから、そういう点でも彼女はジャングルに合っているんだ」(ジョシュ)
「私が参加していたサイケポップバンドとジャングルが一緒にツアーした時にふたりと知り合ったの。とても刺激を与えてくれる音楽を作っているので、参加できてラッキーだわ(笑)」(リディア)
幼なじみのジョシュ・ロイド・ワトソンとトム・マクファーランドが結成したジャングルに、リディア・キトーが加わった『ヴォルケーノ』。ニューディスコともフューチャーアンセムとも呼ばれるダンス音楽を収録したこのアルバムで、彼らは英国最大の音楽賞ブリットアワード2024のグループ・オブ・ジ・イヤーを獲得した。
3人は最初に影響を受けた音楽家として、ジェイ・ポール(ジョシュ)、ジャスティン・ティンバーレイク(トム)、スティーヴィー・ワンダーやカーペンターズ(リディア)を挙げる。さらにはスティーブ・ライヒのようなミニマルミュージックからクラウトロック、エールやダフト・パンクなどフレンチエレクトロまで研究してきた。
「僕たちはソウルとかディスコとかファンクといったノリのいい音楽をやっているように見せて、実はもっと実験的で毒々しいアグレッシブな音楽を作りたいなと思っているんだ(笑)」(ジョシュ)
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また、個々のダンスから群舞へと変化するMVも、その芸術性を語るのに欠かせない。TikTokでもバズっている。
「音楽の層を重ねていく僕らの手法を、いま世界一だと思う振付師シェイ(・ラトゥコラン)と、ダンスの層を視覚的に重ねていくことで表現した。結果、すごくダイナミックなものを生み出せた」(トム)
これらの映像を見慣れてしまうと、音楽からそのダンスを可視化できると言ってもいいほどだ。実際に音楽制作時も、踊りやすいかどうか、その感覚を重視するという。ジョシュは共同で映像監督も担当、またトムの母はダンス教師で、トムもブレイクダンスを14歳から踊りはじめ、リディアもストリートダンスをやっていたと話す。
「ルールなどは決まっていなくて、新しい刺激があると、そこからインスピレーションを受けて制作が始まる。このアルバムはLAでエッセンスを構築し、ロンドンで完成させたように、僕らは常にオープンマインドで視野を広く持つようにしている」(ジョシュ)
このような引き出しの多さ、視野の広さから言っても、ジャングルの奥深さは、まだまだ計り知れない。
ロンドン出身のジョシュ・ロイド・ワトソンとトム・マクファーランドが、2013年に結成した。3作目『Loving In Stereo』に参加したリディア・キトーが、『Volcano』から正式メンバーに。人気振付師シェイ・ラトゥコランとのコラボも話題。
*「フィガロジャポン」2024年8月号より抜粋
text: Natsumi Itoh photography: Kayoko Yamamoto