『君に届け』いちばん素敵な、好きになり方。

こんな完璧な笑顔があっただろうか……三浦春馬演じる風早翔太と出会った時に、こう感じた人はたくさんいたと思う。

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「風早翔太」なんて、まさにティーン映画のクラスの人気者のためにつくられた名前。多部未華子の役、爽やかな子と書いて「さわこ」と読むのに、真っ黒なロングヘアで自信がなさそうで、スポーツができない地味な優等生を、学校全員で「貞子」と呼び変え変なウワサを流して、こっそりイジメているというシチュエーションもあるあるな印象だ。
いままでもこれからも変わらない、ティーンエイジャーの揺らぐ心と恋と、大人になっていく間に起こる日常の学び。ただし、映画『君に届け』では、撮影されたその時代の「らしさ」があふれていて、何よりもメッセージが真っすぐで、ピュアだ。

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光を集めたような笑顔、三浦春馬の『キャッチ ア ウェーブ』

風早翔太と黒沼爽子は同じ高校に入学する見知らぬ者同士。入学式直前に大きな桜の木の下で出会い、その時から互いが気になっているのに、その気持ちがいったい何なのか本人たちも深くは気づかないまま、高校生活が進んでいく。さほど陰険ではないイジメがあったり、夏の肝試しや体育祭、年末の花火行事など、ありふれた学生らしい出来事を通して、友情や恋心がしんしんと深まっていく、というあたたかい物語。

井浦新が演じる、本心は真心があるのにふるまいだけ無神経で男っぽい体育教師はなんだか前時代的だし、生徒たちはパカッと開くガラケーを使っていて、そうゆうところがなんともノスタルジックなムードを醸している。でも、本作は根っこが健全で慈しみある登場人物ばかりであることが、むしろ現実に近い気がして、観る人に自身の高校時代のリアリティを思い出させる。

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風早のモノローグとして出てくる言葉、「いつか君に届くだろうか、この気持ちが。大きくなった、この気持ちが……」は、誰もが感じるジレンマだと思う。どう伝えるべきなのか。そこに後悔はないのか。本作に登場するティーンたちみんなが、風早のこの言葉を胸の奥に抱きながら、それぞれの想いを日々悩み、格闘している姿は観ていて愛しい。
なんで愛しいのだろう?とあらためて理由を考えてみると、善・良・好・爽・光など、すべてが明るく正しい軸に根差しているからなのではないか、と感じた。人の心なんて、善と悪、どちら側に根差した状態にあるかだけで、幸福感はその都度変わる。『君に届け』は、どこまでも善の軸で進むことを「選びとって創られた」作品だから、その正しさが不自然にならないのだと思った。腹を据えて正しいほうを選べば、それは偽善ではなく、真の善意になるから。

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三浦春馬『アイネクライネナハトムジーク』、不在で感じる存在感の強さ。

後ろめたいことがなく謙虚で正直で、感激屋さんの爽子が、どんな困難にも打ち克っていく姿は爽快だ。心が清らかな人がひとりいると、周囲まできれいになっていく。そういう爽子の本質を桜の花びらと戯れる姿を見ただけで感じ取れた風早。
人を好きになる時に、何の偏見もなく、データによる判断もなく、ただその人から流れてくる空気感に惹かれ、一緒にいると幸せになれる、という気持ちを大切にしながら好きになること。それが、もっとも自然な心の動きであることを、『君に届け』は伝えてくれる。

そして、満点以上、永遠にときめきをくれる三浦春馬が演じた風早翔太の笑顔が、「もっとも自然で美しい好きになり方」を決定づけてくれたことは言うまでもない。

その笑顔は、これからもずっと観る人たちに幸せを届けてくれる。
誰かを好きでいることは人生において大切なことだ、というメッセージをいつまでも届けてくれる。

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『君に届け』
●監督/熊澤尚人 
●出演/三浦春馬、多部未華子、蓮佛美沙子、桐谷美玲、夏菜、青山ハル、金井勇太富田靖子、井浦新、勝村政信 
●原作/椎名軽穂 
●2010年、日本映画 
●本編128分 
●Blu-ray¥6,380 発売・販売:バップ    
©2010映画「君に届け」製作委員会 
©椎名軽穂/集英社

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