ボイトレで本格派に。『ジュディ』のレネー・ゼルウィガー。

Music Sketch 2020.03.07

『ジュディ 虹の彼方に』で第92回アカデミー賞主演女優賞を受賞したレネー・ゼルウィガー。所作はもちろんのこと、顔つきまでジュディ・ガーランドへ寄せていく卓越した演技力に加え、その歌唱力にも魅了される。以前からレネーの歌声は、『シカゴ』(2002年)や『恋は邪魔者(原題:Down with Love)』(2003年)などで耳にすることができたが、今回は伝説のシンガー役である。そしてこの伝記映画の劇中で全曲を吹き替えなしで歌ったレネーは、ついには彼女の歌を収録したサウンドトラックが発売されることとなり、歌手としても実力を高く評価されるほどになった。

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47歳という短い人生をエンターテインメントの世界に捧げたジュディ・ガーランド(レネー・ゼルウィガー)。感動深い伝記映画である。

■ホイットニー・ヒューストンのボイストレーナーが指導。

レネーは、子どもの頃から音楽に親しみ、家ではジュディ・ガーランドの歌も聞いていたという。ただし、歌うことは好きだったものの、今回の役を演じるにあたって、「自分の声は明るくて小さいので、ジュディの歌声に合っているとは思わなかったわ。だから彼女の歌をマスターするには、もう少しパワーと歌声を響かせるために共鳴させる必要があったんです」と話している。

『ジュディ 虹の彼方に』予告編。

ボイストレーニングを担当したのはゲイリー・カトーナ。これまで、ホイットニー・ヒューストンやアンドレア・ボチェッリ、スティーヴン・タイラー(エアロスミス)、バックストリート・ボーイズ、シャーリー・マクレーン、そしてジュディの娘であるライザ・ミネリなどにレッスンしてきた音楽業界で有名なボイトレの先生である。

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よき母親であろうとしたジュディ。娘のライザ・ミネリも同じエンターテインメントの世界で名を成している。

彼は「声とは筋肉の現象によって起こるもの」と話し、声帯を囲む筋肉を強化することを重視したボーカル・エクササイズで知られている。実際にレネーも、「それまで、特定のエクササイズによって声の筋肉を操作できることに気づかなかったの。声の筋肉が強制的に開かれるにつれて、無意識のうちに自分の中に溜まっていた感情のようなものが解放されることがわかって、驚いたわ」と話している。

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ジュディは5回結婚をしているが、劇中では年下夫のミッキー(フィン・ウィットロック)との関係を中心に描かれる。

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■サム・スミスやルーファス・ウェインライトと共演も。

映画でのレネーはジュディの生き様に共感する部分が多かったのか、驚くほどそこに徹しているが、歌い方は似せていても歌声はレネー自身である。当初、ジュディのように低い声で歌えるか自信がなかったそうだが、「By Myself」などからわかるように低音部を中心に声質は太くなっているし、本来は甘くまろやかな声質が際立っていたものの、カトーナが母音をより丸く発声するように提案したせいか、その低音部も深みとコクを感じさせながら響いてくる。モノマネのようになっていなくて、レネーが自分の歌にしてしまっているところで、より歌に引き込まれるのだ。

そんなレネーの歌に対し、カトーナは「彼女はジュディ・ガーランドになりすましていないものの、彼女自身の錬金術の何かを歌に持ち込んでいて、キャラクターに忠実でありながら、歌を生き生きとさせているよね」と話している。

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マネージャーのロザリン(ジェシー・バックリー)の存在がいい味を出す。

レネーにとって何より難しかった歌は「Come Rain or Come Shine」だそう。ただ、呼吸するタイミングさえ難しいこのナンバーは、イギリスを代表する音楽監督・編曲家・指揮者のマット・ダンクリーの編曲によって歌いやすくなり、救われたという。ちなみに、イギリスでのレコーディングはビートルズでおなじみのアビーロード・スタジオで行われ、音楽好きのレネーの興奮ぶりが想像できる。

 

劇中で重要な曲となる「Over The Rainbow」のリリックビデオ。

サム・スミスとの「Get Happy」やルーファス・ウェインライトとの「Have Yourself A Merry Little Christmas」も、何回繰り返して聴いても飽きる事がない。この作品をきっかけにレネー・ゼルウィガーの歌の才能がさらに開花するのではないだろうか。

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レネー・ゼルウィガー『ジュディ 虹の彼方に(オリジナルサウンドトラック)』(ユニバーサル)¥2,750

*To Be Continued

『ジュディ 虹の彼方に』
●監督/ルパート・グールド
●出演/レネー・ゼルウィガー、ジェシー・バックリー、フィン・ウィットロック、ルーファス・シーウェル、マイケル・ガンボン、ダーシー・ショー、ロイス・ピアソンほか
●2019年、イギリス映画
●118分
●配給/ギャガ
●3/6(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開
https://gaga.ne.jp/judy

© PATHÉ PRODUCTIONS LIMITED AND BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2019

参考資料:
Blanton, Kayla. “Yes, Renée Zellweger Really Did Sing in Judy, and She Says It Was ‘Terrifying’” Prevention.com 9 Feb, 2020.
Roy, Trakin. “Cord Strength: How Ren
ée Zellweger Learned to Sing like Judy Garland” Variety.com 2 Jan, 2020.

※この記事に記載している価格は、標準税率10%の税込価格です。

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