窓枠の中に美しい景色が。四季の移ろいを愛でる暮らし。

PARIS DECO 2016.12.14

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Joséphine  Ponsolle/ジョゼフィーヌ・ポンソル
ブティックNous_Paris共同経営者

中2階のあるアパルトマン。ジョゼフィーヌは10年前から、ここに暮らしている。1階はオープン・キッチンとダイニング・リビング、そして中2階がオフィスと寝室&バスルームという作りだ。

「リビング・スペースに座って、窓から外を眺めるのが好き。パリにいるとは思えない、素晴らしい景色が見られます。遠くに広い公園、修道院、教会が見えて……。それに四季の変化でさまざまな光景が展開します。秋はアイヴィー、春は花々がきれい。この前の春には、鳩のカップルが窓辺に住みついて、そこから小鳩が巣立っていったのよ。まるで田舎に暮らしてるみたい」

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パリとは思えぬ景色が目の前に広がる。

 

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大きな窓から差し込む自然光。これもおもてなしの一部となる。

 

上にオフィスがあるが、そんなわけでジョゼフィーヌはリビング・スペースでオペラなどクラシック音楽を聴きながら、仕事をすることが多い。その隣のダイニングスペースはゆったりとした広さで、大きなテーブルが置かれている。寛げる! とゲストも喜ぶ、温かみのある空間だ。時間が許せば、もっと頻繁に友人たちを招いて、ここでディナーを催したいという彼女。1年半くらい前に食器とリネンのオンライン・ショップをスタートし、そして昨秋には9区に調香師の友人クレマンス・ベスと共に、小さなアール・ド・ヴィーヴルのブティックnous_paris(ヌー・パリ)を開いた彼女。ここではクレマンスのブランドParfum en scèneの香り、そしてジョゼフィーヌが買い付ける食器とリネンを売っている。ブティックにも出るし、オンライン・ショップのサイトで紹介する窯元訪問の旅もあるし……といった多忙な日々な送っている。

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左:上のオフィスではなく、このリビング・スペースで仕事をするのが好き。ブティックが休みの日は、オペラなど音楽を流し、ここで商品発注や職人たちとのやりとりに勤しむ。
右:ユニークなフォルムが気に入った籐の椅子。“意外にも”イケアでみつけた、という。

 

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左:30歳の誕生日祝いに親友から贈られた旧式電話器。ちゃんと機能するそうだ。右のランプは祖母から譲られた品。
右:色をアクセントに使うインテリア。

 

「小さい時に陶芸を習っていたことがあるけれど、今のような陶器やガラスなどの食器類への情熱は、つい最近のことなんです。オンライン・ショップnous_parisを始めるちょっと前のこと。仕事でコペンハーゲン暮らしを2年間しました。あの町ではモードもアール・ド・ヴィーヴルも、すべてが美しく洗練されています。そんな中で暮らす間に、けっこう感化されたんですね。それに自分の手を使って物作りする職人たちを奨励したいという思いもあって、今の仕事に至りました」

キッチンとダイニングスペースの間のカウンターの上に、素材も手法もさまざまな種類の食器が飾られている。ジョゼフィーヌが一目惚れした器や、両親が旅先の土産に買ってきた品など、国籍もさまざまである。

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左:布とミシンは、nous_parisのオリジナル商品のプロジェクトのため。
右:ギフトや旅先でのひと目惚れの品などが、ずらりと並ぶ。ピンクと白の容器はPia Van Peteghem、後ろのマグカップはギリシャにて、花器にしているのはトスカーナ地方で見つけたピッチャーだ。

 

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ジョゼフィーヌによる朝食のテーブルセッティング例。白と赤のホーロー引きの食器はVariopinte。

 

「でも、自宅で日常使いしているのは、ほとんどが10年来のイケアの白い食器なんですよ。今は時間も投資もブティック第一なので……。紺屋の白袴、ですね!」と、笑うジョゼフィーヌ。

学生時代にここに引っ越してきた時のインテリアには、パリの多くの若者たち同様に何もかもをイケアで買い揃えたそうだ。10年暮らす間に、旅先でみつけた品、贈り物、美しさが気に入って購入した品などが増えていき、徐々に“イケア脱皮”をしている。

「まだ上のフロアはそれほどインテリアに力をいれていないのだけど、1階は徐々に徐々に物が入れ替わっていって、デザイン的に美しい品がだいぶ増えてきています。オフィスで使っているデスクや、椅子2脚をオークションで買いました。蚤の市で掘り出した物も……。壁にかけているリトグラフや写真の数も前より多くなっていますね」

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左:リビング・スペースの上を占めるオフィス部分。奥の整理たんすは15歳の誕生日の両親からの贈り物。
右:50年代のオフィス・デスクはオークションで入手した。ヴィンテージの椅子は2脚購入し、上と下のフロアにひとつずつ。

 

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左:寝室の窓からも、このような眺めが。
右:インテリア・ファブリックの老舗Pierre Freyで選んだ無地の布に、アクセントに赤い帯をつけたのはジョゼフィーヌのアイデアだ。

 

兄弟6人という家庭なので、誕生日やクリスマスなど受け取るギフトの数も多い。彼女の趣味を心得ている人たちから贈られるのは、どれも気に入る品ばかりとか。

ダイニングスペースの吹き抜けの壁を利用して、大きな額がかけられている。これはカルティエ財団でコンゴのアーティストたちの展覧会が開催された時にも出品されていたJ.P.ミカの作品だ。トワルではなく花柄のインテリア・ファブリックに描かれたもの。リビング・スペースの壁に並ぶのは、アフリカの写真家オマール・リーの作品だ。特に拘っているわけではないが、アフリカのアートには心を惹かれているという。

 

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左:中2階までつづく白い壁。カルティエ財団でも展示されたコンゴのアーティストJ.P.Mikaの作品が広い空間に活気を与える。
右:アフリカのお面は父からの旅みやげ。

 

アート作品も飾るし、カラフルな品が好きなので、それらをうまく配置しやすいように、と壁は白である。

「でも階段の壁に一部壁紙を使ってみてもいいかしら、とは思っています。いつか書棚も欲しいし、リビングにベンチとかも置きたいし……」

でも、目下のところ自宅は後回しでブティックの仕事を優先する。職人たちと組んで、nous_parisのオリジナル・クリエーションの販売を始めるのが次のステップ。まずは、テーブルリネンから始めるそうだ。ダイニング・スペースにミシンと布が置いてあるのも、それゆえである。家のことに時間を割けるようになるのは、それが軌道に乗ってから、ということだろう。もっとも、たとえ家の中の家具やオブジェが変わらなくても、ジョゼフィーヌの暮らしは窓から見える季節の変化に彩られているのだから、なんとも幸運だ。

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左:ペルーで見つけたクッションの赤、ポルトガルの羊飼いたち用の敷物のストライプ、アーティストの写真……10年の間にすこしづつリビングを飾る品に変化が。
右:寝室のクローゼットの上は、思い出や家族がテーマの超プライベートな場所。

 

…………………………

ジョゼフィーヌのブティック

21-parisdeco-161221.jpg22-parisdeco-161221.jpg
Nous_Paris(ヌー・パリ)
19, rue Clauzel
75009 Paris
営)11:00~20:00
休)日・月・火(12月中は日曜も営業)
www.nousparis.com/fr/

 

大村真理子 Mariko Omura madame FIGARO japon
パリ支局長 東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏する。フリーエディターとして活動し、2006年より現職。主な著書は「とっておきパリ左岸ガイド」(玉村豊男氏と共著/中央公論社)、「パリ・オペラ座バレエ物語」(CCCメディアハウス)。
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