齊藤工 活動寫眞館 ・壱 上戸彩とヴェネツィア。

2017年7月からスタートする、フィガロジャポン本誌とmadame FIGARO.jpの連動新連載「活動寫眞館」。初回、齊藤が被写体に選んだのは、“国民的女優”として知られる、上戸彩だった。去る4月、第19回ウディネ・ファーイースト映画祭のコンペティション部門に出演作『昼顔』が出品され、ふたりはヴェネツィアを訪れた。
「気を抜いた瞬間。この表情は、本当のオフでしかあり得ない姿」
フィガロジャポン9月号(7/20発売・P92-93)で掲載されている写真の上戸彩は、船上の端でそっと居眠りをしている。その写真について、齊藤はそう語った。
「やっぱりふたりになると、僕は裕一郎、上戸さんは紗和、それぞれ演じ抜いた役にすっと戻る瞬間がある。無意識で。(『昼顔』での)ふたりの関係値は、陽が当たらない世界で生きていかなければならなかった。光はほんの一瞬だし、限りなく少ない。ヴェネツィアという、ある意味で非現実な環境に身を置いた時、僕たち自身に染みついている『裕一郎』『紗和』がこの船の上で、ようやくポジティブになれたのかもしれない。リラックスできた瞬間、安心できた瞬間というか」
日陰のふたりが、ようやく束の間の休息を得たかのよう。そんな風景だ。

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本誌では公開していない上戸彩さんのショットと、ふたりがいた海の上。ふとした、さり気ない、気負いない表情。

ヴェネツィアのブラーノ島では、いくつかの町並みも切り取っていた。
「この島は漁師が多く住む島で、猟から戻った男たちが家に戻ってくる。家はピンクや緑など、本当にカラフル」
カラフルな町並みがモノクロームの世界に落とし込まれ、光と影だけで表現されている。齊藤は「闇」を探して町を歩いたという。
「暗闇を探してシャッターを押していった。そして写し出される光。そのコントラストに惹かれて。光と影の関係は、上戸さんを撮った時にも表れていると思う。なかなか陽の当らないふたりの関係値というか」

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ブラーノ島にて。重い影と相反するハイキーな光。住人の姿はまばら。

「上戸さんは、誰もが知る俳優であり、エンターテインメントの世界でも長く活躍している。その経験や深みが役に反射しているとよく感じる。役の感情を優先して、役を一気に背負う姿勢も素晴らしい。彼女はいつでも“自分以外を優先”にしている気がする。撮影現場でもスタッフへの気遣いがあり、いちばん誰が大変かを見定め、優しく接する。作品を創るクルーたちが船に乗っているとしたら、船の上でクルーたちを自然にケアして全体をいつの間にかリカバーしてくれるような存在」
4月のヴィネツィアの旅の記憶を辿り、今回の撮影を経て、役者“上戸彩”を改めて分析し、最後に「すっぴんの人です。上戸彩さんは」と付け加えた。

「自分はプロのフォトグラファーではない。でも、自分にしか切り取れない、人との距離感を表現することができると信じています」
表現者として齊藤工は、カメラを持ち、シャッターを切る。

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TAKUMI SAITOH
移動映画館プロジェクト「cinéma bird」主催。映画監督作に『半分ノ世界』(2015年・国際エミー賞ノミネート)。初長編監督作『blank13』(第20回上海国際映画祭 最優秀監督賞受賞<日本人俳優初>)は、18年2月公開予定。写真家として、KinKi Kidsシングル『薔薇と太陽』(ジャニーズ・エンタテイメント)ジャケット写真、綾野剛や柄本佑など俳優のオフィシャルスチールを撮影。
AYA UETO
映画『あずみ』にて第27回日本アカデミー賞の優秀主演女優、新人俳優賞を受賞。テレビ版でヒットした『昼顔』が劇場で公開中。アニメの吹き替えも行い、幅広い演技力が注目される。

 

©2017フジテレビジョン 東宝 FNS27社

『昼顔』
2014年に放送された連続ドラマ「昼顔~平日午後3時の恋人たち~」のその後を描く。 ●監督/西谷弘 ●2017年、日本映画 ●125分 ●配給/東宝
●全国公開中

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