齊藤工が写すグイ・ルンメイ、清純さはそのままに成熟した凛々しい美しさ。
「齊藤工 活動寫眞館」について 2025.12.23
2002年、台湾映画『藍色夏恋』を観た時、グイ・ルンメイとチェン・ボーリンのふたりのフレッシュな魅力に心を衝かれた。本作は台湾でも日本でも大ヒットし、淡い初恋を描いた名作として映画ファンの間で愛され続けている。その後も青春映画の名作は台湾にあり、という説を決定づけた作品でもあった。
ただし、グイ・ルンメイの透明感のある美しさは、青春と呼べる時期だけに限定されるものではなかった。現在は清らかな美しさに色香が備わり、成熟した女性の魅力を放っている。
「私が初めて拝見したのも『藍色夏恋』です。審査会そして授賞式の後に、おそれ多くもご本人にもお伝えしたのですが、その時の衝撃は『初恋のきた道』のチャン・ツィイーさん、『ハモンハモン』のペネロペ・クルスさん、『レオン』のナタリー・ポートマンさんを初めてスクリーンで観た時に匹敵するものでした。画面からあふれ出る透明感と、静かなのに芯の強さを感じさせる佇まい、その両方を自然に成立させてしまう稀有な俳優だと思います」(齊藤)

2025年11月、東京国際映画祭にて撮影。以下同。
齊藤工は2025年の第38回東京国際映画祭にてコンペティション部門の審査員を務めることになった。同様にコンペ部門の審査員としてグイ・ルンメイも名を連ねた。その際に撮影されたのが、こちらの写真だ。
グイ・ルンメイが人々を魅了する理由が、齊藤から受け取った写真から推測できる。カメラの前で、彼女は自分自身を自然に、かつさまざまな表情で表現することができる。フィガロジャポン最新号2月号(12月19日発売)に掲載された写真と合わせて、シチュエーションは同じでもグイ・ルンメイの表情のバリエーションで世界が広がる。とても蠱惑的なのに清らかだ。

「審査の序盤、ほんのわずかな合間にお時間をいただき、撮影させていただきました。本当に短いセッションだったのですが、ルンメイさんは一瞬で"ゾーン"に入っていかれて、こちらがどんどん引き込まれていきました。何を言わずとも、もうフレームの中にひとつの"物語"が立ち上がっている。説明的ではなく奥行きのある美しさがにじみ出る、まさにシネマティックな瞬間でした。
余談ですが、授賞式等審査員の役割りがすべて終わった最後に『藍色夏恋』のDVDにサインをいただきました、ここだけの話です」(齊藤)

2010年代は青春映画のヒロインから『薄氷の殺人』(2014年)、『鵞鳥湖の夜』(2015年)など、ヒューマンドラマの名優として活躍している。最近では真利子哲也監督『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』(2025年)にて西島秀俊とも共演、高い評価を得た。
フィガロジャポン本誌では、齊藤が「この表情が特に好き」と推した写真が165ページに掲載されている。何かもの言いたげな、憂いと同時に強い意志を感じる繊細な表情のグイ・ルンメイの1枚もぜひ見てほしい。
1983年12月25日、台湾生まれ。大学時代はフランス語・フランス文学を学ぶ。19歳の時に青春映画『藍色夏恋』(2002年)で映画デビュー。そのほかに『言えない秘密』(07年)や『GF*BF』(12年)に出演。後者ではアジアの主要な映画祭にて主演女優賞を獲得。『薄氷の殺人』(14年)、『鵞鳥湖の夜』(19年)など人間の感情を掘り下げたアート映画にも数多く出演。第38回東京国際映画祭でコンペ部門の審査員を務める。また、シャネルのアンバサダーを務めている。

齊藤工/TAKUMI SAITOH
現在公開中の出演映画に『スピリットSPIRIT WORLD -ワールド-』『港のひかり』、『ROAD TO VENDETTA 殺手#4』(香港にて公開中)など。2026年2月、Netflix映画『 This is I』が配信スタート。ドキュメンタリー映画『大きな家』やハリウッド映画『When I was a human』で制作にも携わる。東京国際映画祭ではグイ・ルンメイらとともにコンペ部門審査員を務めた。






