齊藤工がカトリーヌ・ドヌーヴから受けた刺激。
「齊藤工 活動寫眞館」について 2025.11.19
友人の映画ジャーナリストが以前言っていた。カトリーヌ・ドヌーヴが映画制作の世界を目指す学生たちを目の前に講演を行っていた時のこと。講演の最後のQ&Aにおいて、たくさんの学生からの質問にすごく丁寧に答え、かつ映画の世界で羽ばたくことを応援するコメントを真摯に投げかけていた、と。世紀の美女としてフランス映画界を席巻し、その後ハリウッド映画にも出演、昨今はアジア映画にも積極的に挑戦しているカトリーヌ・ドヌーヴ。その存在感だけでも、相手を威圧しそうに感じていたが、映画を愛する者に対して彼女の姿勢は真っすぐで思いやりに満ちている。

2024年1月、千葉県。映画『SPIRIT WORLD -スピリットワールド-』撮影現場。
映画『SPIRIT WORLD -スピリットワールド-』で共演した齊藤工も、映画を敬愛する人間のひとりだが、カトリーヌ・ドヌーヴとどんな対話をしたのだろう。
「撮影前に静かにご挨拶だけして、すぐに撮影に入りました。その時にカトリーヌさんに対する畏敬の念は、眼を通じてお伝えできたのではないかと思わせていただけるほどの、暖かな包容力をお持ちでした」(齊藤)
本作は、歌手としてフランスで活躍し、日本のファンからも愛されたクレア(カトリーヌ・ドヌーヴ)が、久しぶりの公演で訪日し、コンサート後にホテルを抜け出してひとりで訪れた料理店で、突然別の世界に旅立ってしまう物語。彼女の大ファンであり彼女と同じ世界に旅立つ役を演じる堺正章、息子役の竹野内豊とのセッションが作品の軸だが、エリック・クー監督と絶大な信頼関係で結ばれている斎藤工も1シーンのみ登場。そこで同じ世界に棲むドヌーヴと言葉を交わす。
そのワンシーンを撮影した千葉の海辺で齊藤はドヌーヴの姿を自身のカメラに捉えた。
「緊張感のある(映画の)撮影の合間に新たにカメラを向けるということは、失礼になる可能性があるのですが、それをも受け入れて下さり、またしても言葉を超えたコミュニケーションをして下さいました。オンではなくオフのカトリーヌさんがそこに居ました」(齊藤)
実はカトリーヌ・ドヌーヴは1990年、フィガロジャポン創刊の年、そのお祝いのために来日してくれている。創刊35周年の年に、フィガロジャポンの長期連載を手掛ける齊藤工の手により彼女が撮影されたことは感慨深い。
永遠のシネマのミューズであり、映画愛をサポートしてくれるマドンナ、カトリーヌ・ドヌーヴを、シネアストは愛し続けるに違いない。

©2024「SPIRIT WORLD」製作委員会
●監督/エリック・クー
●出演/カトリーヌ・ドヌーヴ、竹野内豊、堺正章ほか
●2024年、日本・シンガポール・フランス映画
●全国にて公開中
世界的に有名なフランス人俳優。世界3大映画祭にて主演作の数々をはじめ名誉賞なども多く受賞、審査員なども務める。日本へは、作品のプロモーションはもちろん、フランス映画祭の団長や東京国際映画祭のゲストとして訪れること多数。昨冬日本にて公開された『ベルナデット 最強のファーストレディ』(23年)はフランス映画好きの間で大きな話題となった。昨今はアジアの映画作家たちとも多くタッグを組み、是枝裕和監督作『真実』(19年)、現在公開中のエリック・クー監督作『SPIRIT WORLD -スピリットワールド-』(24年)に主演。

齊藤工/TAKUMI SAITOH
『SPIRIT WORLD -スピリットワールド-』でドヌーヴと共演。出演作に『港のひかり』(公開中)、香港映画『ROAD TO VENDETTA 殺手#4』(12月4日香港公開)、Netflix映画『This is I』(2026年配信開始)など。ドキュメンタリー映画『大きな家』やハリウッド映画『When I was a hu man』で制作にも携わる。第38回東京国際映画祭ではコンペ部門審査員を務める。







