世界的な評価も上昇中!? 日本の白ワインの雄「甲州」、その奥深い魅力とは?
知ってちょっとためになるワイン学習帖 2025.04.12
日本固有の白ワイン品種、甲州。「和食に合う」と言われるその魅力を、日本ワイン協会の顧問も務めるジャーナリスト・石井もと子が解説。
vol.10 甲州
藤色に実る甲州はワイン専用ブドウ品種にルーツを持つ日本の固有種。生食用として栽培され、味や色付きの悪い甲州から甘口のワインが造られていた。しかし40年ほど前、日本の造り手たちはシュール・リー(澱に接触させて貯蔵する)手法を取り入れるところから始め、海外のコンクールでも評価されるまで価値を高めてきた。その成果は、権威あるデキャンタ・ワールド・ワイン・アワードが審査に甲州部門を設けたことからもわかる。
繊細な味わい、端的にいうと味わいに欠けるとされてきた甲州は、ユズやスダチ、和ナシやモモの風味を持つ、まさに和食を引き立てるワインとなった。さらに、ハーバルな甲州、樽由来のボリューム感のある甲州、オレンジワインの甲州も造り出され、食卓に欠かせない多様な食に合うワインとなりつつある。
ア・ターブル 醸し
A TABLE KAMOSHI
国・地域:日本 山梨県山梨市
アルコール度数:12%

シャンパーニュ方式(瓶内二次発酵)のスパークリングなど秀逸なワインを造り、醸造者仲間からも尊敬される安蔵正子は2022年にカーヴ アンを創業。スーパープレミアムワインを造れる技量を持ちながら重厚なワインではなく、日々の食卓に彩りを添えるワインに彼女はフォーカス。この銘柄は醸し手法からくるわずかな苦さが心地よく、じわじわと身体に染み込み、気付くと1本開けてしまうワインだ。
酸味 ●●●◯◯
果実味 ●●◯◯◯
ミネラル感 ●●●◯◯
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アルガブランカ クラレーザ
ARUGA BRANCA CLAREZA
国・地域:日本 山梨県甲州市
アルコール度数:11.5%

"勝醸"の名で親しまれ、甲州に特化する老舗ワイナリーのスタンダードな一本。20年ほど前から現在にいたるまで甲州の最高峰とされ、香りの高さが素晴らしい甲州「イセハラ」を世に出して以来、個性ある甲州を次々と造る中で、上質かつ手に取りやすい価格を実現したのがこちら。グレープフルーツを思わせる香りときりっとした酸が食欲を掻き立てる。白身魚や、キッシュ、寄せ鍋にもおすすめ。
酸味 ●●●●◯
果実味 ●●●◯◯
ミネラル感 ●●●◯◯

今月の講師
石井 もと子
ワインジャーナリスト
ワイン輸入商社勤務後、米国で栽培と醸造を学ぶ。1996年、ワインコンサルティング業務などを行う株式会社ベイシスを設立。日本ワイナリー協会顧問。
ワインを自分らしく楽しみ、食卓や日々の生活をより豊かにしたい、そんな知的好奇心の高い人に向けた新しいコミュニティ。知識が身につくワイン講座や試飲イベントの開催、ワインアドバイザーによるコンテンツを日々発信中!
*「フィガロジャポン」2025年3月号より抜粋