ポーランドでルーツを辿る旅映画をなぞって。
在本彌生の、眼に翼。 2026.01.04
写真家の在本彌生が世界中を旅して、そこで出会った人々の暮らしや営み、町の風景を写真とエッセイで綴る連載。今回はポーランド・ルブリンの旅。

ルブリンはパステルカラーの建築物が立ち並ぶ素敵な旧市街エリアの街並みと、モダンな建築物のある市街地の整然とした印象が好対照だ。夕暮れ間近の文化交流センター(Centre for the Meeting of Cultures in Lublin)には、若者が集う。中には複数のスクリーンを持つ映画館、劇場、展示スペース、レストランがあり、これが市の持つ施設だと聞き、街の文化度の高さを再確認した。広い屋上庭園には土着の植物も。
ルーツを探る、気心の知れた従兄弟同士で。
vol.35 @ ポーランド・ルブリン
映画『リアル・ペイン〜心の旅〜』は、ニューヨーカーの従兄弟同士が久しぶりに連れ合って自らのユダヤ人としてのルーツを辿る旅に出るというお話。監督、脚本、主演のジェシー・アイゼンバーグ扮するデヴィッドと、キーラン・カルキン(名演!)演じるベンジーのふたりが、キャラクターがまるで違うのにともに旅ができるのは、幼い頃身近に過ごした従兄弟同士で血縁があるから。誰もが体感したことのある歳の近い親戚との関係や歯切れ良いやりとりがとてもおもしろい。お前ってこうだよね、いやお前なんかいつもああだろ、と言い合うふたり。しっかり者で身持ちの固い真面目くんと、何かとこだわりが強くチャラっとしているのに繊細でなぜだか皆に愛される風来坊のコンビが、自らの血に関わる歴史を知るべく、ほかの個性的なメンバーとともにツアーでポーランド各地を辿っていく。ガイドを含む参加者の立場が、ユダヤ人、ユダヤ教徒、そのどちらにも当てはまらない人という構成の効果で、いろいろな視点と立場から見つめられる「いまのリアルなポーランド」と「私の思い描いていたルーツ」が浮かび上がり、彼らが背負ってきた人生とクロスする。ノスタルジーに傾かない場の捉え方がよい。印象に残ったシーンのひとつは、ルブリンとマイダネク博物館への流れ。元収容所を訪れることにナーバスになるベンジーの心中を思う。その場に立った彼らが受け止めたことそのものが、旅の糧だ。全編でショパンが流れ、たまらなくポーランドなのだ。

ルブリンの旧市街、この日はあいにくの天気だったが、ポーランド各地から手工芸品が持ち寄られる市が開かれていた。

『リアル・ペイン』の中でも登場した老舗ユダヤ料理レストラン、Mandragoraのフムスは、これまで食べたフムスの印象が塗り替えられるようだった。口当たりがスムーズ、味つけはあくまでも繊細。
●監督・脚本/ジェシー・アイゼンバーグ
●2024年、アメリカ映画 ●90分
●配給/ウォルト・ディズニー・ジャパン
●ディズニープラスほかにて配信中
東京生まれ、写真家。
季節が急に変わって身体も驚いているので温活を始めました。生姜とスパイスたっぷりの自家製ジンジャーエールにはまっている。
*「フィガロジャポン」2026年1月号より抜粋
photography & text: Yayoi Arimoto 取材協力: ポーランド政府観光局






