スウェーデンの夏の伝統避暑地といえばゴットランド島だ。本土から約100キロ離れているスウェーデン領最大のこの島はストックホルムとポーランドの港町グダンスク(Gdansk)の中間地点のバルト海に位置する。
このゴットランド島が人気の所以No.1なのは、国内で太陽光が確実に浴びられる都市の上位だから。え?と思うかもしれないがスウェーデン人にとってはかなり重要な事で、ヨーテボリを中心とする西海岸やその他の名所では運が悪ければ、夏中雨だらけという場合も多々あり得る。夏を夏らしく確実に太陽の元で過ごすにはゴットランド島が最適なのだ。
もちろんそれだけではなく、世界遺産に認定されている。本土からのフェリーの発着所でもあるヴィスビーは、長らく北ヨーロッパの商業政策のリーダー都市として栄えていた。
中世にはハンザ同盟のメンバーにもなったヴィスビー。1250年から建てられたリングウォールと呼ばれる街を囲む壁をはじめ、さまざまな建物は時の様子をそのまま残しており、別世界へ赴いた雰囲気。島内には大小合わせて91もの中世に建てられた教会がある。
余談だが、ジブリ映画『魔女の宅急便』のモデルにもなった街でもある。
---fadeinpager---
またゴットランドはスウェーデンで一番教会が多い州で、島内には大小合わせて91もの中世の教会がある。
ヴィスビイにある壮大な聖マリア大聖堂。
さらにおもしろいのが自然風景で、バルト海の波により何千年にもわたって形成されるRauka(ラウカ)と呼ばれる岩層には感動を呼び起こされる。海岸線沿いの風物詩だ。
それらとは相反するように島の地層をなしている石灰岩の採掘場もおもしろく、採掘場の中には古いセメント工場を再利用してデザインホテルやレストランになったところもあり、さまざまな経験ができる。
photography: Bungenäs Kalklada&Matsal
photography: Furillen, Fabriken Furillen
photography: Freringe Blå lagunen
フレーリンゲ地区にある石灰岩採掘場ではブルーラグーンと呼ばれる水場で遊泳も可能。周りを石灰岩の岩棚に囲まれながら泳ぐのはなかなか秀逸だ。
石灰岩と共にゴットランド島の代表となるのが羊。羊毛を使ったラグなどのクラフト製品や地元の羊肉料理やチーズに舌鼓を打ったり、またよく羊とも遭遇するのでさまざまな形で羊を堪能できる。
美しい自然や時には寒々と感じる石灰岩の風景、そしてアクティビティにも事欠かない。
食べるものはおいしいし、巨匠イングマール・ベルイマンが後年住んでいたFårö(フォール島)まで足を伸ばせば、映画『仮面/ペルソナ』の撮影場所も巡れたりとカルチャー面でも楽しめる。見どころが多彩で、太陽が燦々と輝いて(いる日が多く(笑))、スウェーデンっぽくない場所を楽しめるのだったらまさにゴットランド島がうってつけの場所なのだ!
神咲子
在スウェーデンライター。コーディネート業も行うが、本業はレストラン業だった。そして50歳を過ぎてから、鉄道の電車の運転手に。スウェーデンの北部ウメオ市とスンズヴァル市を運転する日々を送る。