【35歳の卵子凍結】凍結卵子の生存率と妊娠率は?
Society & Business 2021.10.25
卵子凍結を行うためAさんが選んだ病院は、自宅からも職場からも比較的通いやすい場所にあった新宿の杉山産婦人科。同医院はおもに不妊治療を目的とした卵子凍結を約10年前から行っている。杉山力一先生によれば、ここ2〜3年は未受精卵の卵子凍結を行うAさんのような独身女性の外来が急増しているそうだ。
「まずはインターネットで未受精卵凍結の項目を選んで予約をしました。初診時に、卵子凍結に興味があって行う意思があることを伝えると、さっそく検査をすることになりました。先生からは特にこちらの事情や目的などを尋ねられることはありませんでした。検査の結果次第では採卵できないケースもあるので、1回目は淡々と進んだ印象ですね」
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Aさんが初めてこの医院を訪ねたのは2021年4月21日。検査は血液検査と超音波検査を行い、次回は生理が始まって3日目に来院予約をするように伝えられた。
それから約1週間が過ぎたころ、たまたま生理が始まったため、初診から間をあけることなく4月30日に2回目の来院となった。ここで前回の検査の結果を見ながら、大まかな方針とスケジュールを決める。「採卵予定日は、(生理開始から約12~13日頃にあたる」5月10日頃で、それまでに飲み薬と注射を続け、採卵間際の3日間くらいは毎日通院することになると言われました。このスケジュールが難しい場合、今周期は諦めなくてはいけないとのこと。採卵まで10日間というのは思ったより早いな、という印象でした」
photo: iStock
この日以降は、自宅で毎日排卵誘発剤を投与しながら卵子を育て採卵に備えるが、成長する卵子の数には個人差がある。「将来的に体外受精による妊娠の可能性を考えると10個以上を目指すのが望ましいと杉山産婦人科で先生にいただいたパンフレットに書いてあったので、私も目標は10個以上と考えていました。たくさん卵子を育てると身体への負担もかかるので、弱めの薬を選び目標採卵数を5個くらいに設定するという選択肢もあると説明を受けました」
Aさんの血液検査の結果はAMH値(発育途上の卵胞から分泌されるホルモン)が年齢平均より高かった 。「AMH値から比較的卵子を育てやすいのでは、との先生の判断だったので、それなら一度にたくさん育てたいと伝えました。仮に10個あったとしてもすべてが採卵できる状態に育つとは限らないので、現時点では10個以上を目指して頑張りましょうということに」。処方されたのはクロミッドとヒスロンという服用薬にゴナールエフという皮下注射。注射は毎日決まった時間に行うが、通院して看護師さんに打ってもらうか、自己注射を選ぶことができる。会社員であるAさんは、時間的な効率を考えて毎朝自宅で自己注射を行った。これを1週間続けたが、特に体調に異変はなかったので、仕事に支障をきたすことはなかったようだ。
凍結卵子(未受精卵)による将来の妊娠率は?
採取した卵子のうち、凍結保存が可能な卵子は成熟卵のみだが、その後の受精率、妊娠率は、採卵時の年齢によって個人差がある。妊娠率は、融解後に卵子が生存していて、精子と受精でき、さらにその受精卵の質が良好な場合の確率を指す。
未受精卵融解後の卵子生存の確率には諸説あるが、融解後の卵子生存率は80〜95%、さらに精子を注入した場合の受精率は60〜80%と報告されている。また未受精卵融解後に卵子が生存、授精(顕微授精)し、質が良好な受精卵が確保できた場合の卵子ひとつ当たりの妊娠率は30歳以下が約35%、35〜37歳が約25%、40歳以上は約15%とされている。
これらの確率を掛け合わせると、35歳の女性が5つの卵子を保存した場合の妊娠率予測は22%と予測される。よって杉山産婦人科では、卵子の生存率とその後の妊娠率を考慮して5個以上、できれば10個以上の未受精卵を凍結保存するのが望ましいとしている。
都内在住の35歳、会社員。新卒から勤務する会社に在席して14年目。順調にキャリアを重ねている。学生時代から何人か交際した男性はいるものの、現在まで独身。サバサバした性格と面倒見のよさで周囲からは頼りにされる存在。趣味は読書と映画鑑賞。
cooperation: Rikikazu Sugiyama(Sugiyama Clinic) text: Junko Kubodera