【イベントリポート】あなたの可能性を拓くコーチングの世界。
Society & Business 2022.07.08
衣食住という日々の暮らしを愛おしむことを大切にしてきたフィガロジャポンの新プロジェクト、Business with Attitude(以下、BWA)では、よりよい日常をつくるため、さまざまな課題の解決に取り組む起業家や専門家の活動を紹介するオンラインセミナーを定期的に開催している。
6月14日の第5回定例セミナーでは、プロフェッショナルコーチでCTIジャパンのファカルティとしてプロコーチの養成にも携わる畑中景子さんをゲストに迎え、コーチングとは何か、視聴者のお悩みも交えながらざっくばらんに語ってもらった。以下、畑中さんのお話を抜粋してお届けする。
プロフェッショナルコーチ、CTIジャパン ファカルティ
プロフェッショナルコーチとして、30代〜40代を中心にリーダーシップの意識の目覚めと可能性の開花を支援しているほか、世界最大の体験型コーチトレーニング及びリーダーシップ開発機関CTI(Co-Active® Training Institute)にて、ファカルティとしてトレーナーを務める。2022年からフィガロジャポンBWA事務局メンバーとして、ピッチコンテスト ファイナリストへの支援をサポートしている。CTI認定CPCC®。国際コーチング連盟認定PCC。INSEAD MBA。
CTIジャパン コーチ紹介ページ
https://thecoaches.co.jp/find_coach/hatanaka_keiko
ポッドキャスト「独立後のリアル」
https://open.spotify.com/show/7xqza7Fs0tUL1H4eNjk3jo
ブログ「ここみち読書録」
https://www.cocomichi.club/
フィガロマルシェ コーチング体験会 参加者募集中!
畑中さんがファカルティを務めるCTIジャパンで資格を取得したプロフェッショナルコーチから、1対1のコーチングを2回受けられる体験会をフィガロマルシェで実施します。コーチングが気になっているという人は、ぜひこの機会に参加してみて。詳細は、フィガロマルシェサイトをチェック:https://marche.madamefigaro.jp/products/coaching
【開催要項】
日時:7月16日(土)10:00-12:15
定員:12人
費用:5500円(税込み)
協力:CTIジャパン
主催:CCCメディアハウス
■コーチングってどんなもの?
ビジネスの世界を中心に、近年注目を集めているコーチング。一口にコーチングと言ってもいろいろな流派があるというが、畑中さんが提供しているのは、国際コーチング連盟(ICF)で初めて認定された世界的なプロコーチ養成プログラムを提供しているCTIのコーアクティブ・コーチング®だ。「人はもともと創造力と才知にあふれ、欠けるところのない存在である」という人間観を前提にしているこのコーチングを、畑中さんは「人が本来持っている力を取り戻すためのお手伝い」と表現する。
「もともと人はみんな光輝くような存在。けれど大人になるにつれ、周りからかけられた言葉や失敗体験が鎖のように絡まったままの状態で生きている人が、私を含めてとても多い。コーアクティブ・コーチングは、その鎖を、コーチとクライアント(*コーチングを受ける人)が一緒にほぐしていき、クライアントが本来持っているエネルギーを取り戻す、そして、その人が自分でちゃんと歩けるよう、お手伝いをすることだと思っています」(畑中さん、以下同)
カウンセリングやコンサルティングなどとも比較されることが多いが、コーチングの特徴は、コーチとクライアントとが「完璧に対等な関係」であること。「カウンセリングは、クライアントを“理解”することに重点が置かれ、コンサルティングなどは専門の知識や経験を持っている人が相手に教えてあげたり、一緒に問題を解決してあげたりするイメージ。一方、コーチングは、コーチがクライアントの悩みに対して必ずしも専門知識を持っているわけではありません。最初はコーチもクライアントのことがわからないし、クライアントも自分のことがわからない。だから、クライアントの中にある何かを“一緒に探しに行こう”という関係性を築き、そこからクライアントの人生を一緒に創っていこうとする関わり合いをします」
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■コーチングを通して訪れる変化とは?
18年間の銀行員生活を経て、2019年プロフェッショナルコーチとして独立した畑中さんも、コーチングに出会って人生が変わったひとり。
「20代の頃は本当に何がやりたいのかわからなかった。そのくせプライドが高くて、人に頼ることもできず“隙がない”感じでした。30代で留学したのを機に、仕事のおもしろさには気づいたのですが、その間離婚も経験して、『この先、この仕事をずっとやっていきたいのか』という悩みや、『もうすぐ40歳になるけれど大丈夫なのか』という不安があった。そんなさなかにコーチングと出会い、コーチングを学んだりセッションを受けたりしていると、徐々に自分の本当に欲しているものや感情に素直になってきた。昔は仕事が最優先でしたが、いまは何もしていなくても楽しいと感じるようになりましたし、周りからは『いつも楽しそうだね』と言われるようになりました」
20代の頃の畑中さん。写真の雰囲気もいまとはだいぶと違うように見える。(ウェビナーの資料より)
現在はコーチとして、20代〜60代と幅広い年齢のクライアントと関わっているといるという畑中さん。コーチングはビジネスで使うもの、というイメージもあるが、クライアントがコーチングを受ける目的はさまざまだという。
「ただ、すべての人に共通することは、人は一面だけでは計り知れないということ。たとえビジネスのエグゼクティブであっても、その人にはビジネス以外にも夫婦関係、家庭生活などいろいろな面があり、実は全部繋がっているんです。その人そのものに焦点を当てるコーアクティブ・コーチングでは、ビジネス目的でコーチングが始まったとしても、夫婦問題だったり休み方であったりと、扱うテーマはビジネスの範囲だけにとどまりません。もちろん、クライアントご自身が扱っていいと思う範囲までですが」
たとえば、ビジネスを目的としたコーチングでも、「夫婦げんか」がテーマになることも。しかし、そこから生まれた気付きは、仕事の人間関係にも直結していくという。「コーチと一緒に自分を俯瞰的なところから見てみることで、いままで気付かなかったり、置いてきてしまったと思っている自分の一面を取り戻していく方も少なくありません」
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■コーチングを受ける頻度、費用は?
いまの自分、本来の自分を探しながら、未来をともに創っていく、まさにコーチとの“協働”作業は、その人のあり方に大きなインパクトを与えるものだ。ただし、その変化は1回のコーチングセッションで起きるものではなく、継続的に受けることで、それも、セッションとセッションとの間に起こるものだという。
「私の場合、最短だと3カ月間2〜3週間に1回の頻度でセッションを行う事が多いです。もちろん、長く続けられる方もいます。大切なのは、セッションで、自分の価値観や考え方の癖などに気付き、その気付きから生まれた“宿題”を次のセッションまでに現実世界で実践してみること。たとえば、『人に笑顔で接したい』というクライアントさんには『じゃあ、まずはコンビニの店員さんにありがとう、って言ってみて』というように、小さなチャレンジを宿題として出したりします」
こうしたちょっとしたアクションを積み重ねていくと、もともと問題だと思っていたことが気にならなくなったりするという。「私たちCTIジャパンのファカルティたちはよく、問題は“解決”するというよりも、“解消”すると表現します。当初は人間関係に悩んでコーチングを受けたとしても、セッションを通して自分の意識が広がり、自分自身が変わっていく。そうすると、本来の問題がもはや問題ではなくなり、解消していくんです」
コーチングにかかる費用はコーチによってそれぞれ違うが、継続して受けることを考えると決して安い出費ではないため、受けることを悩む人もいるかもしれない。しかし、「コーチングはその後の人生に大きなインパクトを与えます。コーチングを受けると、自分が変わる楽しさ、おもしろさが経験できる。いまの状況を変えたい、このままじゃいけない、これからの人生を変えたい、と感じている方は、受けたいと思った時に、ぜひ受けてみてほしいです」と畑中さん。
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■コーチングとアールドゥヴィーヴルの繋がりは?
コーチングの世界は、フィガロジャポンが大切にしている考え方の「アールドゥヴィーヴル(Art de Vivre / 暮らしの美学)」にも繋がるものだと畑中さんは話す。
「人生はアールドゥヴィーヴルを探す旅だと思います。もちろん、何がアールドゥヴィーヴルなのかは、その人によって違う。そして“これが私のアールドゥヴィーヴル”というものがあったとしても、その後、またほかのものにも興味が湧いて、そこからまたアールドゥヴィーヴルを新しく再構築することもあると思う。生涯をかけて、ずっと自分の美学を探求しながら生きていく——クライアントの価値観のあり方に焦点を当てるコーチングは、そんなアールドゥヴィーヴルの探求のお手伝いができる仕事だと思っています」
ちなみに畑中さんのアールドゥヴィーヴルは?
「開いて生きる、感じながら生きる。そして人間らしく生きる」こと。「これもいまの私のアールドゥヴィーヴルで、もしかしたら1年後にお会いしている時は違うことを言っているかもしれませんが(笑)、それはそれでいいと思っています」
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■質疑応答
セミナーの視聴者から寄せられたコーチングについての質問、また自身の悩みについて、一部を抜粋して畑中さんに回答してもらった。
Q. そもそも夢や目標、好きなことがない/転職したいけど、何がやりたいのかわからない。どうすればいい?
「私を含めてですが、みんな自分に厳しすぎるというか、自分に対して評価・判断をしていると感じます。実は好きかも、と思うことや心弾むようなことは見つけているのに、『これは夢と言うには小さすぎる』とか『これを好きと言うのはみっともない』とか『こんな些細なことで喜んでどうするんだ』と、せっかく夢や目標、好きなことの芽が出ているのに、自分自身でその芽を刈り取ってしまいがち。でも、少しでも芽が出てきたら、それを受け入れて育ててみると、そこからまた新たな芽が出てくる。なので、“かっこいい”とか“かっこ悪い”という評価・判断は一旦置いておいて、自分の小さな“好き”や“気付き”を大切に育ててみてはどうでしょうか。ドラマ、動物、食べ物……どんな小さなことでも構いません。
また、少しでもチャレンジをした時には、「今日はすごくよく頑張った」と自分を褒めることも大切。「これができなかったから私はだめだ」と話されるクライアントさんも多いのですが、話を聞いてみると「ここまでできているじゃん!」と思うこともままあります。もちろんコーチもサポートしますが、しっかり自分で自分自身を褒めてあげることが大切です。
いざ転職やキャリアチェンジをしようとして、さて、自分は何を大切にしているんだっけ?と思っても、それが急に見つかることはほとんどない。それは、積み重ねていって感じられるもの。ですから、自分の小さな好きやできることの種を、日頃から少しずつ見つけていってほしい。小さなものでも、私はこれに心が震える、ここは響く、ということに意識を向けていくと、それがだんだん大きくなっていくはずです」
Q. コーチングとカウンセリング、どちらを受けるか迷っています。
「コーチングとカウンセリングは、どちらもクライアントとの間に信頼関係を築き、お話を評価・判断なく聴きながら進めていくところは共通しています。しかし、関わり方が少し違ってきます。
カウンセリングでは、クライアントが考えていることや見ている世界を丁寧に聴いたり確認したりしながら、クライアントを理解することに重点を置きます。誰かに正しく理解されたと感じることで、人は安心していきます。一方、コーチングでは、そこからさらに、クライアントが人生を創っていくために必要な関わりをします。将来のビジョンを一緒に描いたり、クライアントとは異なる視点やアイディアを投げかけたり、時には挑戦を促すこともあります。クライアントはコーチと対等な関係で『意図的な協働関係』を築ける人だという前提があるから、この関わりができます。
気持ちがひどく落ち込んでいたり、目の前のストレスのことで頭がいっぱいだったり、心身に不調をきたしていたりする時は、将来のことを考えることは難しいものですし、コーチからさまざまな関わりをされることが負担になる可能性もあります。このような時は、決して無理はせず、カウンセリングを受けることをおすすめします」
Q. 自分/子どもの自己肯定感の高め方を知りたい。
「私たちのコーチングの世界では、人が自分自身として生きていくためには、自己肯定よりも、”自己受容“が大切だと考えています。自分はできると自分に言い聞かせることは、どこかで無理が生じますし、自分を何とかポジティブ捉えようとすると、ネガティブな一面を自ら否定することにもなりかねません。
どんな人にも弱い部分があります。自分自身でも嫌っていた自分の弱さやずるさ、あざとさなども、“正直自分にもそういうところがあるよな”と自分で認めていくことで、“そうか、これが私だな”と自分を許せるようになっていきます。そして、“こんなダメなところもあるけど、これで生きていくんだな”と受け入れていくことで、ありのままの自分で生きていけるようになる。
このように、自分で自分を受容していくことが、不安から脱出する手がかりになるし、大人が自分を受容できていると、子どもに対してももっと許可が出てくると思います」
Q. 苦手な人とは、どうやって付き合えばいい?
「苦手な人とは、必ずしも無理して付き合う必要はないと思います。もしかしたら、相手ではなく自分に“どんな人とも仲よくすべきだ”とか“人には常に笑顔で接するべきだ”みたいな思い込みがある可能性がある。そういう場合は、本当に自分の願ってる方向は何か、コーチングで探ってみるのもいいと思います。
ただ、自分が本当に願ってるものがわかり、自分の願いをかなえていく方向に進んでいく時、どうしても苦手な人との付き合わなければいけない場面は出てくると思います。そういう時には、苦手な人は、“私は本当に人のことを好奇心を持って見ることができているだろうか” “私は本当に人を信じているだろうか”、“実は自分の中にも、この人と同じ部分があるのではないか”など自分と向き合うことを教えてくれる存在でもあります。ですから、本当に自分にとって大切だ、と思う時は、苦手な人が“自分に何か教えてくれる存在”と思って接してみるといいかもしれません」
【取材協力】
CTIジャパン
https://www.thecoaches.co.jp/
Chorizm Communications
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