【イベントリポート】心と身体のバロメーター、デリケートゾーンケアのすすめ。

Society & Business 2022.10.06

衣食住という日々の暮らしを愛おしむことを大切にするフィガロジャポンの新プロジェクト、Business with Attitude(以下、BWA)事務局では、よりよい日常をつくるため、さまざまな課題の解決に取り組む起業家や専門家の活動を紹介するオンラインセミナーを定期的に開催している。

9月6日の第7回定例セミナーのゲストは、福島県国見町で農業課題と女性の健康課題に取り組む株式会社陽と人(ひとびと)代表の小林味愛さん。2020年に、国見町産の柿の皮を利用したデリケートゾーンブランド「明日 わたしは柿の木にのぼる」をスタートさせた小林さんに、ご自身の経験から必要性を痛感したという“働く女性のデリケートゾーンケア”についてお話を伺った。

セミナーのアーカイブはこちら。*機材トラブルのため、一部編集して公開しています。

小林味愛(こばやし・みあい)
株式会社陽と人(ひとびと)代表。1987年、東京都生まれ。2010年慶應義塾大学法学部を卒業後、国家公務員として衆議院調査局に入局。その後、経済産業省、日本総合研究所で地方創生に携わり、2017年、福島県国見町で農業課題と女性の健康課題に取り組む株式会社陽と人を起業。2020年には国見町の柿の皮を使ったデリケートゾーンケアブランド「明日 わたしは柿の木にのぼる」をローンチ。女性の健康課題や地方の農業課題に対するコンサルティング業務も行う。現在、東京都と福島県国見町の2拠点生活で、2児の子育て中。
陽と人:https://hito-bito.jp/
明日 わたしは柿の木にのぼる:https://ashita-kaki.com/

【関連記事】女らしさを嫌った女性が、デリケートブランドを立ち上げた理由。

■「明日で大丈夫」で救われる女性たちへ。

柿の皮の有効成分を抽出して開発されたデリケートゾーンケアブランド「明日 わたしは柿の木にのぼる」。ストーリー性を感じるこのブランド名には、小林味愛さんの熱い思いがギュッと詰まっている。国家公務員として猛烈に働いた20代、帰宅はいつも深夜を回り、心身ともに限界だった。この頃、小林さんがかけてほしかった言葉が、「明日でいいよ」だった。

「いつやるの? いまでしょ? とよく言われるけど、身体の不調やさまざまな事情が重なってしまってできないことがある。そんな時、誰かが『明日でも大丈夫だよ』と言ってくれたら、どんなに救われるだろうと思うんです。この製品がお風呂場にあることで、『明日でも大丈夫』だということを皆さんに思い出してもらいたい、とこのブランド名をつけました」(小林さん、以下同)

自分を責めないでほしい——それが小林さんの伝えたいこと。小林さんも多忙を極めた頃はイライラを人にぶつけてしまって自己嫌悪に陥ったが、女性ホルモンの影響が大きいことに気づいてからは見方が変わった。振り返ってみれば、自分が攻撃的だったりイライラしていたりする時期は生理前のPMS(月経前症候群)と重なっていた。

女性の体内では、排卵を起こし、子どもを作るサイクルを維持するために女性ホルモンが分泌されている。そして毎月の生理周期、妊娠・出産、婦人科系の病気、更年期と、女性の身体は常に女性ホルモンのゆらぎと共存している。「昔は生涯の生理回数は50回程度でしたが、出産回数が減った現代女性はその平均回数が450回にまで増えたと言われています。生理回数が増えると、女性特有の病気やPMSなどの不調が起こりやすくなる。現代女性のライフスタイルは多様化しても、女性の身体のライフサイクルは変わっていない。だからこそ身体のしくみをきちんと知って、自分の身体を大切にしてほしい。その思いで3年かけてこのブランドを開発しました」

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■開発のきっかけは、地域の農業課題。

ブランドの原料に使っている柿の皮は、果樹生産の盛んな福島県国見町の農家から仕入れている。国見町は小林さんが民間企業に転職後、地域創生コンサルタントとして訪れた思い入れの深い土地。手間に見合わない対価で働く農家の現実を目の当たりにし、何とか力になりたいと同町で起業した会社が「陽と人(ひとびと)」だった。

「国見町の特産のあんぽ柿って、作るのにとても手間ひまがかかっているんです。おいしい柿を作るために木をせん定したり、実を摘果したりと収穫までにもいろんな作業があります。そしてできた柿一個一個を、今度はおばあちゃんたちが夜な夜な皮むきをして、ロープに通して、干して、ようやくあんぽ柿になるのですが1個当たりの手取りは微々たるもの。これだけの手間をかけながら、稼げる産業になっていないことが気にかかっていました」

農家の収入安定策を探るなか、着目したのがあんぽ柿の加工過程で捨てられてしまう柿の皮。柿渋に含まれるタンニンは昔から消臭効果があることで知られ、石けんなどにも使われている。試行錯誤を繰り返し、女性の健康支援と果物農家の6次産業創出を組み合わせたユニークなビジネスモデルが出来上がった。「わたしたちが大切にしているのは、わたしたちの会社が持続可能であるだけではなく、地域の農家さんが持続可能であること。ですので、製品が売れれば売れるほど農家さんに還元されるようなしくみになっています」

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■心と身体の調子を知るための、デリケートゾーンケアとは?

女性の体調不良は、デリケートゾーンの変化で気づかされることが多いという。たとえば寝不足や不規則な食生活、過度のストレス、疲労、免疫力の低下が、デリケートゾーンのかゆみやおりものの異常、生理不順などの症状となって現れる。

「デリケートゾーンには500種を超える菌が住んでいて、人間社会と同じように、さまざまな菌がバランスをとり合っています。けれど不規則な生活が続くとバランスが崩れて、においやかゆみ、おりものの変化、生理不順といった不調が出やすくなります。これらは女性特有の悩みで大変なのですが、一方で特権でもある。なぜなら倒れる前に、自分の不調をデリケートゾーンを通して気付くことができるから。だからこそ、1日10秒でもいいので、デリケートゾーンケアを習慣にして、自分の心と身体の声に耳を傾けてほしいと思っています」

では、具体的にはどんなケアをすればいいのだろうか?

「基本は洗ってきれいにすること、保湿をすること、の2ステップ。デリケートゾーンは健康な状態だと弱酸性なので、デリケートゾーン専用のソープかお湯で洗ってください。そして、お風呂上がりに何もしないと顔がつっぱるように、デリケートゾーンも気付かないうちにつっぱっています。だから保湿をしてほしい。保湿はセラム(美容液)とオイルを混ぜて使ってもいいですし、ミストを数回シュッとやる程度でも大丈夫。水分と油分のバランスを整えると、デリケートゾーンもしっとりふっくら、もちもちになります。オイルを塗ってから入浴する“オイル入浴”も、汚れが取れてしっとりするのでおすすめです」

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■“こうあるべき”に縛られない、自分らしい道を。

現在は二児の母であり、国見町と東京を行き来する二拠点生活を送る小林さん。第2子はなんと3カ月前に生まれたばかりだという。さまざまな経験を糧に起業し、自分自身もいたわりながら家族と地域の人々とともに生きる小林さんにとってアールドゥヴィーヴル(Art de Vivre)は?

「自分らしくいること、だと思っています。日本で大きな組織に属して働いていると、社会からの求めに応じて役職や肩書に合う生き方を無理して歩んでいることもあると思う。もちろん、そういう生き方が良ければそれは正解。でも、そこにちょっとでも違和感を感じたり、無理をしていると感じて違う道を行っても、それも正解だよ、と言いたいです。世の中には、“こうあるべき”“これが正解”“これがロールモデル”だと言われるものが多くありすぎるけれど、私はそこに当てはまらなくても、自分が選ぶ道は全部が正解でいいと思っています。そんな自分らしさを大切に生きていきたいです」

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■質疑応答

Q. ケアは何歳から始めても大丈夫?

はい、いつ始めても大丈夫です。女性ホルモンが少なくなってから始めても大丈夫で、お客様の中にはデリケートゾーンが痛くて歩けなったので病院へ行ったら「乾燥が原因だね」と言われ、塗るものを探していた、という方も多くいらっしゃいます。そうした女性器トラブルの予防としても、ケアをやるに越したことはないと思います。

Q. 粘膜の部分もケアが必要?

粘膜の中まで塗らなくて大丈夫。外の部分とひだになっているところを全体的にケアしてあげてください。「明日 わたしは柿の木にのぼる」のウェブサイトでも、具体的な方法をイラスト入りで説明しているので参考にしてみてください。

>>「明日 わたしは柿の木にのぼる」のサイトでケア方法をチェック!

Q. 出産後から始められるデリケートゾーンケアは?

産後はデリケートゾーンが敏感になっていて、普通の製品で洗うと痛かったりするので、習慣を変える良いきっかけになると思います。お子さんと一緒に入浴しながら専用のソープで洗って、それでお子さんの全身も一緒に洗ったりしてもいいですし、出産したばかりで余計なことを考えたくないという方はミストをシュッと吹きかけるだけでもOK。ミストはお子さんの保湿にも一緒に使えますよ。

Q. 更年期におすすめのケア方法は?

ケアするゆとりのある方は、オイル入浴が個人的にはおすすめです。湯船に入る前にオイルを塗って、湯船で軽くマッサージしてください。しっとりしてお肌が潤うし、やりやすい方法だと思います。

湯船をあんまり汚したくないという方は、お風呂上がりにミストとオイルか、セラムとオイルで水分と油分を補給してあげましょう。お顔と同じように優しくなでるように塗ってください。

Q. 男性にもデリケートゾーンケアは必要?

女性のデリケートゾーンと同じく、男性器周辺も敏感なので、洗うものを肌に優しいものに変えるという方もいらっしゃいます。海外ではケアの文化がある国もあるようで、オイル入浴をする男性もいるようです。まだそれほど男性専用のデリケートケア製品はありませんが、いま使っているものを肌に優しいものに変えることから始めてみてはいかがでしょうか。

Q. ケアを始めて黒ずみは改善されましたが、臭いがなかなか改善されません

睡眠不足やストレス、生活習慣の乱れが、臭いの根本的な原因になることもあります。生活習慣を見直しつつ、柿の果皮を豊富に使用している私たちの製品もぜひ続けて使ってみていただけたらうれしいです。

Q.ケアをするとどんな変化があるの?

洗うものを変えるだけでつっぱり感がなくなった、保湿をすることによって、冷え性だった方が全身の血流が良くなってぽかぽかしてきた、ミストだと生理中のむずむず感やムレが緩和されて過ごしやすくなったという声が多いです。

また海外の研究だと、妊娠の34週目以降にオイルで会陰マッサージをすると、出産の際に会陰が裂けたり切れたりということが少なくなる、痛みが少なくなるというデータが報告されています。もちろん個人差はありますし、まだエビデンスがしっかりあるわけではないのですが、会陰マッサージは妊娠34週目以降、週2、3回の頻度でやることが推奨されています。かくいう私も、今回の出産時はオイルを使って会陰マッサージをしていて、出産の時に助産師さんに「めちゃめちゃ会陰伸びてるよ」と言われました。もちろんマッサージだけが理由ではないのですが、そう言われてうれしくなりました(笑)。

Q. ケアを続けるコツは?

いろんなケア方法がありますが、まずは洗うものをデリケートゾーン用の製品に変えることから始めてみてはいかがでしょうか。洗った後の保湿が面倒くさい人はミストを吹きかけるだけでも良いですし、自分の無理のない範囲で取り入れていくことが大切だと思います。

text : Mitsuko Iwai

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