定年退職に備えるための5つの鍵とは?

Society & Business 2024.02.13

定年後の生活の変化に苦しまないために、心理的な準備はしっかりしておきたいもの。フランス「マダム・フィガロ」から、ふたりの心理学者が重要なポイントを解説するリポートをお届け。

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定年に向けて心の準備をするためのアドバイス。photography: akindo / Getty Images

「引退する」「定年退職の権利を行使する」「定年になる」......どんな表現を使うにせよ、定年は人生のある時期の終わりであり、新たな人生の始まりだ。

「とはいえ、この人生の節目をどんな言葉を表現するかは、些細なことではありません。定年に対して受け身の態度でいるのか、逆にこの機会を積極的に捉えているのか、言葉から読み取れます」と、老いを専門とする臨床心理士のブノワ・ヴェルドンは語る。

キャリアの終わりを心待ちにし、旅行をしたり、自由な時間を持てることを楽しみにしている人もいれば、悲痛な思いで定年を迎える人もいる。「これは仕事が厳しいか否かに関係ありません」と臨床心理士は付け加える。「仕事をしているとさまざまな次元で拘束されますが、私たちは仕事を中心に生活リズムを整え、人間関係や自分自身との関係を構築しています。それがなくなると目印を失って途方に暮れてしまうのです」

こうした所在なさに苦しまないために、心の準備を疎かにするべきではない。数カ月、いや1、2年前から準備に取り掛かろう。

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仕事と自分自身の関係について自問する。

定年に備えことは、何よりもまず仕事と自分の関係を考えてみることだ。自分は仕事に何を求めているのか? 日頃、自分は仕事にどれだけの精力を傾けているのか? 仕事をする中で、自分は仕事のどこに喜びや不満を感じているのか?

「これらを明確にすることで、これまでのキャリアを通して自分が何を注ぎ込んできたか、そして職を退くことで何を失うのかが把握できます」とヴェルドンは説明する。意識化することで心の準備ができれば、定年を迎えたその日に突然意気消沈したり、宙に飛び込むような気分になることもないだろう。

別れを告げる。

「定年は常に喪に服すことから始まります」と、臨床心理士のアンヌ=ソフィ・シェロンは言う。「周囲の環境や職場の同僚たちだけでなく、自分自身の古いアイデンティティを喪失するわけです」

喪のプロセスは退職の数カ月前にすでに始まっていることもある。たとえば会議の席で、1年後には自分はもうここにはいないと想像するのもプロセスの一環だ。「30代や40代では、人は仕事には終わりがあるという事実を認めようとはしません」と彼女は指摘する。「でも何年かたてば、現在の状況が一時的なものであることを認め、現役生活に終わりがあるという考え方を取り入れなくてはなりません」

あらゆる喪と同じように、定年を迎える時も儀式は大事だ。中でも送別会は重要な意味を持つ。「要は、これまでやってきたことが認められる機会を持つことです。周囲に認められることで、満ち足りた気持ちで自分の一部である仕事を自分自身から切り離すことができるからです」とシェロンは言う。

送別会が無理なら、自分ひとりでも儀式は行える。たとえば、自分が成し遂げたことをすべて紙に書き出し、箱に入れて大切にしまっておくのもひとつの方法だ。「いずれにせよ、何らかの形で人生の一時期に終止符を打ち、別れを告げなければなりません」と臨床心理士は強調する。「この別離を公式に認め、次に進むためにも、これはとても重要なことです」

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新たなアイデンティティを見つける。

定年は思春期と同様に「アイデンティティ再構築」の時だとシェロンは言う。したがって、マネージャーでも社員でも個人事業主でもなくなったときに、自分はどんな人間であるのか、自分自身に問うことが必要になる。

仕事に行かなくなり、プライベートの時間が増えたとき、私生活は一体どんなものになるのだろう? 「仕事以外で心からやりたいことは何かを考えるべきです。旅行はアイデンティティを満たすには不十分です」と臨床心理士は言い切る。

「エネルギーや関心を向ける方向を変えるのであって、それらを手放すわけではありません」とヴェルドンは言う。「エネルギーや好奇心は無くなりません。ただ、それらをどこか他の場所、別の活動に向けることを考えなければなりません。ある時偶然に出くわすまで待つのではなく」

他の場所で、人の役に立っていると実感する。

この時期に大きく揺らぐものがある。それは自己有用感だ。仕事は共通の利益ために働くという欲求を充足させ、私たちの生に意義を与えてくれるが、定年によってその意義が完全に失われることもある。「非就業者になれば、仕事の世界や社会と、これまでとは異なる関係を結ぶことになります」とヴェルドンは指摘する。

「戸惑わないためには、自分はまだ社会のある部分において現役なのだ、と自分で決めることです。一方で、引退後にはできないこともあるという事実も認めながら」

親や兄弟、身近な友人たちを援助する。非営利団体に参加する。政治問題や環境保全のために活動する......。決意の内容はさまざまだ。しかし、選択は決して簡単ではない。なぜなら決意するためには、いくつもの問いに向き合うことが必要だからだ。たとえば、自分は何に時間とエネルギーを費やす覚悟ができているか? あるいは、自分は何を避けたいと思っているのか? といった、より複雑な問いにも直面するだろう。時間をかけてじっくり考えよう......。

家庭内で:テリトリーの再定義

定年は夫婦にとって試練となる場合もある。ある日を境に毎日家の中で顔を突き合わせることになるが、夫婦ふたりの生活の再開は必ずしも容易ではない。「仕事は夫婦にとってサードパーティーの機能を果たしています。各々がやるべきことや会話の話題を提供してくれるものでもあるのです」とヴェルドンは説明する。

「トラブルの原因になりやすいのは、家庭内でのテリトリーの配分です」とシェロンは言う。「一緒にすること、別々にすることをあらかじめ吟味し、必要なら定義し直さなければなりません。家事の分担を見直し、分離ゾーンを設定する。つまり、どの部屋があなたのもので、どの部屋が自分のもので、どの部屋が私たちのものか、再検討するわけです」

日常生活の変化にスムーズに対応するためには、夫婦の間で、自分たちの関係や、互いの希望、定年後の過ごし方について事前に意見を交わしておくといい、と専門家たちはすすめる。

こうした自問を繰り返すなかで困難を感じても、身近な友人や心理カウンセラーに相談する時間はまだ十分ある。

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text: Lena Couffin (madame.lefigaro.fr)

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