社内起業という、「会社員だからこそ」の選択肢。
Society & Business 2024.12.05
会社に勤めながらアイデアを新事業として形にする、社内起業という制度は、会社にとってもメリットが多い。リーダーとなって挑戦する女性たちが目指すものとは?
多様な働き方を応援するフリーランスPR、大橋直子に、社内起業のメリット・デメリット、トレンドについて、事例とともに教えてもらった。
早稲田大学法学部卒業後、パーソルキャリアを経て、パーソルホールディングス経営戦略本部で社名変更を含むグループブランディングを推進、広報室長を務める。2021年よりフリーランスPR。
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社内起業とは、新規事業を生み出すため、社内に設置する独立した組織のこと。会社が命じる出向とは違い、起案から社員の自主性や個性が尊重される。
多様な業界の働き方を支援するフリーランスPRの大橋直子は、「背景には、既存事業の成長が鈍化し、会社側が新規事業を生み出す必要性に迫られていることがあります。会社主導の経営戦略とは別に、社内で人材を育成し、画期的な新規事業の誕生を期待する傾向が、ここ10年ほど強くなっています」と話す。
たとえば、住友商事が実証実験中の「AnyWear, Anywhere」は、旅行好きの経理担当者が発案したインバウンド向け衣料レンタルサービスで、「住友商事のネットワークを生かしつつ、余剰在庫の衣料品マッチングサイトとの提携や旅行客の手荷物軽減がCO削減にも貢献する、いまの若い世代らしいビジネスモデルです」
Any Wear, Anywhere
守谷美帆
住友商事
Beyond Mobility SBU
住友商事の社員が発案したインバウンド向け衣料レンタルサービス。服をパッキングする手間を省くと同時に飛行機搭乗に伴うCO2 を減らせるコンセプトが反響を呼び、日本航空との実証実験はCNNなどでも取り上げられた。2023年に始めた実証実験は期間延長中。https://anywearanywhere.store/ja
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社内起業の大きな利点は、社内のリソースや人材ネットワークを有効活用できること。社内で事業案のブラッシュアップが可能で、協力者や賛同者も集めやすい。
一方、チャレンジに失敗はつきものだが、そこはあまり気にする必要はないという。「結果を残せずに事業終了するケースも少なくありません。でも、会社側は事業責任者としての挑戦や経験を高く評価するので、社内起業の失敗はマイナスには働きません」
日本は世界で見ると、総じて起業家精神が非常に低いというデータ※がある。
「そんな日本でも、ようやく社員が持つ能力を資本と捉える"人的資本"の考えが定着してきました。リスキリングなど人材への投資が活発化していますし、その延長線上に社内起業制度を用意する企業もあります。制度の自由度も上がってきていて、オープンイノベーションや他社の事業部と合弁会社を設立するなど、一企業の枠を超えた新規事業が登場し、垣根がなくなる傾向にあります。いずれ会社は軸足のひとつと捉えられる時代が来るのかもしれません」
ちょこいく
青木 彩/田中紗代
日本生命保険相互会社
総合企画部
イノベーション開発室
一時保育を利用したい子育て層と、一時保育を提供可能な保育所を繋ぐマッチングサービス。日本生命保険相互会社の女性社員ふたりが発案。社内起業プロジェクトで選出され、2024 年事業化。LINEで予約できる気軽さと専属オペレーターのきめ細かいフォローが好評。https://www.chocoiku.jp/
※起業家精神に関する調査(2020 年3月) みずほ情報総研
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「社内起業」を選んだ女性たち。
ビューティの力で世の中の女性を一歩、前進させたい。
encyclo 代表取締役
水田悠子
(ポーラ・オルビスグループ)
女性の内面や行動を前向きに変えるビューティビジネスに魅了され、ポーラに入社した水田悠子。2012年、29歳で子宮頸がんを発症し、1年ほど休職した後、職場復帰。病気で人生観が変わってしまい、「何のために仕事をしているのか?私はこの会社で役に立っているんだろうか?」と自問自答を繰り返したという彼女がたどり着いた事業のかたちとは? >>続きを読む
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起業と支援活動への思いが、リサイクル容器からサングラスに。
長岡里奈
eyeforthree 代表
(ロート製薬)
学生時代、インドでボランティアしたことをきっかけに、ソーシャルビジネスに関心を寄せた長岡里奈。半年休学してインドへわたり、事業を立ち上げたこともある。そんな彼女が、なぜロート製薬に就職することを選んだのか? 事業を起こすという経験を、今度は社内ですることになった経緯は? 長岡の社内起業の物語をチェック。>>続きを読む
*「フィガロジャポン」2025年1月号より抜粋
text: Mitsuko Iwai, Junko Kubodera (Yuko Mizuta)