ビューティの力で、女性を一歩前進させたい。【「社内起業」を選んだ女性たち:encyclo水田悠子】
Society & Business 2024.12.05
会社に勤めながらアイデアを新事業として形にする、社内起業という制度は、会社にとってもメリットが多い。リーダーとなって挑戦する女性たちが目指すものとは?
ビューティの力で世の中の女性を一歩、前進させたい。
encyclo 代表取締役
水田悠子
(ポーラ・オルビスグループ)
女性の内面や行動を前向きに変えるビューティビジネスに魅了され、ポーラに入社した水田悠子。2012年、29歳で子宮頸がんを発症し、1年ほど休職した後、職場復帰した。
「商品企画に携わり、無我夢中で働いてきましたが、病気で人生観が変わってしまったんです。何のために仕事をしているのか?私はこの会社で役に立っているんだろうか?と自問自答を繰り返しながら5年間もモヤモヤしていました。
弊社は昔から社員の個性を重視した働き方を応援する風土があって、社内起業にもいち早く取り組んでいました。でもそれは自分とは関係ないことだと思っていた。ところが17年に経営理念がより進化し"人を中心とした経営"が全社的に発表されたんです。それは私が約30年の人生で感じた問題意識を仕事でも生かしてほしいというメッセージとして、心に強く響きました」
一方で、会社が推進する「がんと就労」のための福利厚生は社会的にも注目され、社内では化粧品からウェルビーイングまで事業領域を拡大する機運が高まっていた。そんな社風に後押しされて、水田は社内起業のコンペに応募する決意をする。
「がん治療でリンパ節を切除したことで生涯付き合う後遺症のリンパ浮腫を発症しました。悪化を防ぐため脚全体に圧力をかけてリンパの流れを良くする弾性ストッキングが欠かせません」
医療用の弾性ストッキングは分厚いギプスのようで、着脱に20〜30分もかかる。外出が億劫になり、それまでの生活を諦める人も多いという。
「私にとって美しく心地よくありたいと願うことが生きるうえでの大前提だから、同じ悩みを抱えた女性のためにはき心地と見た目を重視した医療用ストッキングを作ることを決めました」
しかし時は2020年、緊急事態宣言の真っ只中で医療機関への営業は叶わず、オンライン販売の認知度もなかなか上がらない。そこでふと水田は自分自身の体調の変化に思いいたる。
「私自身、12年間弾性ストッキングをはき続けたことで、むくみや冷え、疲れを感じにくくなっていたんです。これは女性全員に役立てられるのではないかと」
23年に開発されたコンプレッションソックスは、豊富なカラーとおしゃれなデザインが話題となり、全国のセレクトショップから注文が殺到。水田が長年魅了されてきたビューティのパワーが、新たな形で女性を前進させる原動力となっている。
*「フィガロジャポン」2025年1月号より抜粋
【あわせて読みたい】
膀胱炎の民の救世主!夏場でも使える新感覚着圧ソックス。
サングラスに込められた、起業と支援活動への思い。【「社内起業」を選んだ女性たち:eyeforthree長岡里奈】
text: Junko Kubodera