すべての女性が花を咲かせるために。良好なメンタルヘルスの根を育てる、ケイト・スペード ニューヨークの取り組み。

Society & Business 2025.04.18

女性と女の子のエンパワーメントに向け、メンタルヘルスに注力した支援活動を長年続けるケイト・スペード ニューヨーク。メンタルヘルスへの支援がなぜ重要なのか? この活動をリードする、同社のソーシャルインパクト エグゼクティブディレクター、タリン・バードに話を聞いた。

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タリン・バード:ケイト・スペード ニューヨーク ソーシャルインパクト エグゼクティブディレクター。アメリカ商工会議所財団で女性の経済的エンパワーメントとグローバル企業市民権プログラムを創設・指導した後、2013年ケイト・スペード ニューヨークに入社。同年、ルワンダの女性と女の子のエンパワーメントを目的とした「オン・パーパス」の立ち上げをサポート。以来一貫して、同社のソーシャルインパクトプログラム全体を管理している。

――2013年からルワンダで取り組まれている女性と女の子のためのメンタルヘルスとエンパワーメントに関する活動についてお聞かせください。

タリン ケイト・スペード ニューヨークは、2013年にルワンダで女性のメンタルヘルスとエンパワーメントに関する活動を開始しました。ルワンダでは1994年にツチ族に対するジェノサイドが起こり、人口の10%が死亡。多くの人々がトラウマを抱えることになりました。私たちがルワンダの女性たちとともにハンドバッグの製造を始めた時、スキルトレーニングだけでなく精神面でのサポートにも投資する必要があることが明らかになりました。そこで私たちは、現地でサプライチェーンを構築して働く環境を整備すると同時に、メンタルヘルスのサポートを行ったのです。

具体的には、現地の女性を雇用する「アバヒズィコミュニティ・ベネフィット・コーポレーション」という会社とパートナーシップを組み、バッグの製造を委託しました。ここでは先進国同様、組織の全従業員はフルタイムで雇用され、メンタルヘルスの支援を受けています。のちにジョージタウン大学が行った調査によると、女性のメンタルヘルスに投資することで、エンパワーメントの指標が維持・改善されることが明確になりました。

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――その後、本国アメリカでもメンタルヘルスの取り組みをするようになりましたね。

タリン 2018年に創業者であるケイト・ブロズナハン・スペードが自死で亡くなりましたが、私たちは彼女の死から目を背けることなく、同じ悩みを抱えている人がほかにも多くいるはずだ、とアメリカでメンタルヘルスの取り組みを開始し、これをサポートするために100万ドルのコミットメントを行いました。

やがて20年にパンデミックが始まり、メンタルヘルスの問題は表面化しましたが、家族や友人が精神的に病んでいるという話題は依然として恥ずべきこととして小声で語られていたように思います。そこで私たちは女性のメンタルヘルスの重要性についての認識を広めることをソーシャルインパクト活動の中心に据え、イギリスの調査会社とタッグを組み調査を開始しました。調査の結果、90%の女性は、自分が単に女性であるだけでストレス要因が増加していると答えたのです。また、毎年開催されている女性のメンタルヘルスサミットでは、リーダーたちが良好なメンタルヘルスを築くための最善の方法についてディスカッションをし、経験を共有しています。

――ファッションブランドがこのような取り組みをすることには、どんな意義があるのでしょうか?

タリン ケイト・スペードは女性が喜びを感じることを大切にしているブランドです。すべての女性と女の子が人生を最大限活かせるようサポートするのはごく自然の流れではないでしょうか。私たちは医療従事者ではありませんが、多くの人々の関心を惹きつけ、発信する力を持っています。北米の店舗では買い物のついでに1〜10ドルの寄付ができるシステムを始めたところ、非常に良い反応がみられました。これは多くの女性が自分ごととして問題をとらえているからだと思います。

私たちは女性のエンパワーメントとメンタルヘルスを花びらと根の関係にたとえています。美しい花を咲かせるためにはしっかりした土壌が欠かせません。女性が自分らしい意見、選択、そして人生を舵取りできる力を発揮するためにも健全なメンタルヘルスを養うことが必要なのです。

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ケイト・スペード ニューヨークの「⼥性のメンタルヘルスとエンパワーメントのための概念的フレームワーク」より。女性が花を咲かせるように生き生きと過ごすためには、根っこであるメンタルヘルスをサポートすることの重要性を説く。

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メンタルヘルスをオープンに語れる社会に。

――2025年までに10万人の女性と女の子を支援するという目標を掲げられましたね。

タリン 目標はすでに達成しました。このことから需要の大きさを実感し、24年9月に同じ志を持つほかの企業と協力して資金を集めるためのグローバル・ファンドを立ち上げました。現在大企業はさまざまな支援を行っていますが、女性のメンタルヘルスを支援している会社は少ないのです。30年までに25万人に支援を届けられるよう、目標を再設定しました。

――日本では10~20代の生きづらさを抱える少女たちを支援するNPO法人BONDプロジェクトとパートナーシップを組まれました。

タリン こういった支援をするときに大切なのは、ローカルの活動団体をパートナーにすることです。その土地の文化や女の子たちの特徴を理解し、彼女たちの繊細な感覚値をつかんでいる団体と組むことが必要です。

BONDプロジェクトはいまよりずっと社会の偏見が強かった10年前から、孤独な女の子たちをサポートし、居場所やコミュニティを提供している素晴らしい団体です。ほかにも私たちはアメリカ、オーストラリア、イギリスなど各地域の団体とパートナーシップを結んでいます。

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3月の国際女性デーには、専門家やオピニオンリーダーを交えて、良好なメンタルヘルスを培うことと喜び(JOY)の関係性を探求するトークセッションを開催した。写真左からスペシャルゲストの仲 里依紗、ケイト・スペード ソーシャルインパクトカウンシルメンバーで昭和女子大学キャリアカレッジ学院長の熊平美香、Blossom The Project代表の中川愛。

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――このような活動を通じて、世の中がどんな社会になってほしいと思いますか?

タリン 世界中の企業が様々なソーシャルインパクト活動を行っていますが、その中で女性のメンタルヘルスへの支援は全体の2%未満に過ぎません。私が望む未来は、この話題について誰もが隠すことなくオープンに話せる社会です。セラピストに会うこととヨガに行くことが同じくらいの感覚で話せるといい。そしてうつ状態になってから対策をするのではなく、日頃からセルフケアしてほしいと思います。自分を良い状態に持っていく術をみんなが知っているような世の中にしていきたいのです。

――タリンさんが実践しているセルフケアは?

タリン 毎朝のメディテーションや心の中を綴るジャーナリング、鍼にも行きます。あとはなんでも話せる友人とおしゃべりすることですね。それからファッションも重要なセルフケアです。身につけるものは自分の考えや好き嫌い、価値を表すものだから。

――最後にタリンさんが仕事を続ける上でのモチベーションを教えてください。

タリン メンタルヘルスに取り組むことは仕事でもあり個人としての人生の目標でもある。ケイト・スペードでは12年間この活動を続けていますが、ルワンダでもニューヨークでも、支援を受けた女性が心を回復して本来の力を発揮している実例をいくつも見てきました。真摯に届ければ結果は出るのだということが、私のモチベーションになっています。すべての女性と女の子に伝えたいのは、過去に何があったとしても未来は変えられるということ。そのためにケイト・スペードは根を育むために必要なツールを提供し続けます。

●問い合わせ先:
ケイト・スペード カスタマーサービス
050-5578-9152
https://www.katespade.jp/

BONDプロジェクト
080-9501-5220
https://bondproject.jp

text: Junko Kubodera

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