旅して味わう、日本ワインのふるさとへ。#06 ブドウ棚で羊が草食む、山梨県の日本最古のワイナリー。

Travel 2017.09.16

造り手に会い、畑を眺め、その土地に思いを馳せればおいしさも一層アップ。若い醸造家や新ワイナリーの誕生で、いま注目の日本ワインを巡る旅。ブドウ畑で草を食べる羊の姿に癒やされる、明治創業のまるき葡萄酒では、バリエーション豊かなワインを楽しみたい。

山梨県甲州市|まるき葡萄酒

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畑を自由に歩き、雑草を食べつつ地表を掘り起こす羊。羊のおかげで除草剤を使わずに済むうえ、排泄物はオーガニックな肥料になる。

 創業1891年。現存する日本最古のワイナリーは、オレンジ色の建物が坂道に映える地域のランドマーク。醸造責任者の薬袋才樹(みないまさき)さんに醸造マシンについて教えてもらった。

 「新社長が就任した4年前に設備投資を行い、タンクや自動選果機を新調しました。ブドウの圧搾機は、果汁の酸化を防ぐことができる窒素置換式。発酵タンクも昔ながらのホーロー製は数基のみで、ほかはステンレス製です」

 老舗とはいえ、醸造方法は実に近代的。オーク樽が並ぶ樽貯蔵庫や、一升瓶ワインが眠る地下セラーを見学したら、次は畑へ。工場に隣接した畑には棚栽培と垣根栽培の2タイプがあり、棚では北海道から来た羊が活躍する。

 「羊は畑を歩き回り、雑草を食べながら地表を掘り起こします。そのため土壌の状態がよくなり、排泄物も健康的な肥料となっています」
 羊たちの姿に癒やされ、ショップに入れば、ずらりと並ぶボトルに圧倒される。30種類以上揃う銘柄をいくつか試飲すると、「いろ ベーリーA」はイチゴのような香りが印象的。「いろ 甲斐ノワール」は、日本ワインのイメージを覆すほど力強い味わいだ。長期熟成古酒まで試飲すれば、ほろ酔いで幸せ気分になれるはず。

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オレンジの壁に創業年とともに羊のイラストが描かれた老舗の外観。

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セラーには古い一升瓶ワインが約35,000本。20年経ったものは古酒として販売する。状態を確認するのは醸造責任者の薬袋さん。

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左から、まろやかな樽香となめらかな味わいが好評の赤ワイン「ラ フィーユ 樽ベーリーA」¥2,592、澱の上で寝かせるシュール・リー製法の辛口の白「いろ グラン甲州」¥1,944

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左:レトロな木製の看板は、1891年(明治24年)の創業当時のもの。
右:地下貯蔵庫の入口に展示された80年代のワイン。長期熟成古酒もこのワイナリーの得意とするところ。

Marquis Winery/まるき葡萄酒

山梨県甲州市勝沼町下岩崎 2488
tel:0553-44-1005
営)8時30分〜17時
無休
ワイナリーツアーは要予約
平日14時〜、休日は10時〜、12時〜、14時〜開催 無料
http://marukiwine.co.jp

●勝沼ぶどう郷駅から車で約10分。

*『フィガロジャポン』2017年9月号より抜粋

>>まるき葡萄酒からの立ち寄りスポット

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■立ち寄りスポット #01
緑に囲まれた一軒家で、温もりのフレンチを。

エリソン・ダン・ジュール

2000年に塩山で開業後、11年に勝沼町の渓流と雑木林に囲まれた一軒家に移転。日本ワインの人気上昇に合わせて県外からのゲストが増えたというフレンチレストランは、夫婦ふたりで営むアットホームな雰囲気が魅力だ。ワインを飲ませて育てたワイン豚や、ワインの搾りかすを与えて育てたワインビーフ、ほどよい弾力と旨味をもつ平飼いの甲州頰落(ほおとし)鶏など、地元の食材を生かしたフレンチのコースは季節でメニューが替わる。山梨の生産者から直接仕入れる14社、40銘柄以上のワインと楽しんで。

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料理は¥7,000のコースから「キジハタのポワレ サフランのソース」。合わせたのは共栄堂の白ワイン「K16FY_DD」グラス¥600

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コナラの木に囲まれた一軒家。

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窓から緑が望める。

エリソン・ダン・ジュール

山梨県甲州市勝沼町中原5288-3
tel:0553-39-8830
営)11時30分〜13時30分L.O.、17時30分〜21時L.O.
不定休 要予約 カード不可
http://herisson-koshu.com

●勝沼ぶどう郷駅から車で約5分。

■立ち寄りスポット #02
日本旅館で、温泉と茶懐石とワインを堪能。

笛吹川温泉 別邸 坐忘

笛吹川のほとりに立つ坐忘は、源泉かけ流しの温泉旅館。2015年秋には、露天風呂付き客室8室からなる別邸が庭園に開業した。食事処は築140年の古民家を改装した、茶料理懐石まる喜。笛吹川の鮎や甲州牛など、山梨の食材を生かした月替わりの懐石は、経営元のまるき葡萄酒の3種のグラスワインセットとの相性も抜群だ。浴衣で利用できるライブラリーラウンジには、白、ロゼ、赤の3種のワインなど、フリードリンクを用意。一升瓶のワインを湯呑みで飲む、甲州人スタイルにぜひ挑戦してみたい。

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茶料理 懐石まる喜の水無月の八寸の一例「ハモのつけ焼きと白ウリの雷ごし」。白ワインは澱の上で半年間寝かせたシュール・リー製法の「いろ グラン甲州」。

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別邸の和洋室タイプの「小紫」。

笛吹川温泉 別邸 坐忘

山梨県甲州市塩山三日市場2512
tel:0553-32-0015
別邸8室、本館10室 別邸1名¥37,800〜(1室2名料金、朝食・夕食付き) www.fuefukigawaonsen.com

●勝沼ぶどう郷駅もしくは塩山駅から車で約10分。

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オーストラリア・ワイナリー紀行。

photos : TETSUYA ITO, réalisation : MEGUMI KOMATSU, collaboration : MIYUKI KATORI

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