散策が楽しくなる湘南ミニガイド【#05】 150種のビオワインが並ぶ、湘南のリトルイタリア。

Travel 2019.07.27

海や畑が近く、新鮮な食材が手に入る地方らしさと、美食家も多く住む洗練された都市の魅力を併せ持つ湘南エリア。潮風が吹く自然体なこの町で見つけたのは、手の込んだひと皿と、それを引き立てるナチュラルな製法で作られたワインの数々。

オンダ・クッチーナ・イタリアーナ|平塚

平塚駅から線路沿いを歩くこと数分。オリーブの木とビーチクルーザーが店先に並び、潮風香るこの町にぴったりの佇まいの小さなイタリアン「オンダ・クッチーナ」が現れる。オンダとは“波”という意味で、平塚出身のシェフ、馬鳥亮平さんは生粋のサーファーだ。「サーフィンはしばらく行けていなくて。すっかりキッチンと畑の往復がメインになってしまったんです」と笑う。

190722-001_MG_5674.jpg平塚駅南口から、線路沿いを歩いて3分の場所にある。

地元平塚で育った馬鳥シェフは、大阪で料理の勉強をした後、フレンチレストランで修行。将来自らの店を持ちたいと、カフェの経験も積むために入った店が本格的なイタリアンだったことからイタリア料理、そしてワインの世界へとのめり込んでいった。修行をするなら本国へ、さらに日本人の少ない地へ、ということで北イタリアのヴェネト州へと渡った馬鳥シェフ。グラッパの生産地でもあるヴェネトには、数多くの美食とともに、その美食を引き立てるお酒と、イタリア人ならではの飲み方の文化があった。

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左:小さな店内はいつでも賑わっている。来店時はぜひ予約を。右:イサキ、マダイ、キハダマグロのカルパッチョ、メヒカリのフリット、みやじ豚のテリーヌ、湘南軍鶏のレバームースなどなど、12種の前菜がひとつになった「前菜の盛り合わせ」¥1,404〜。ワインは、ヴェネト州の自然派ワイン、ラ・ビアンカーラのピーコ。このワインからビオにはまる人が多いという銘柄だ(グラス¥1,080)。

満を持して、7年前に地元・平塚に自らの店をオープン。カジュアルでありながら丁寧なイタリアの食事とワインを味わって欲しいと、あえて「クッチーナ(台所)」という名をつけた。地産の鮮魚に合うキンと冷えた辛口の白ワイン、滋味深い湘南牛の旨味を包むトリュフ、それをまとめてくれるスモーキーな赤ワイン、食後には香草を漬け込んだグラッパで口の中をスッキリと……。ヴェネトで身につけたイタリア流の食とワインのコラボレーションを追求していった馬鳥シェフは、いつしかヴァン・ナチュール(自然派ワイン)の虜に。驚くことに、店内には150種ものワインがありそのすべてがヴァン・ナチュールだという。気になるワインがあると、味を確かめたくて開けてしまうと笑う。だから、ここでは白だけでも4〜5種類のグラスワインが用意されている。2年に一度は、スタッフ全員でイタリアのワイナリー巡りもし、店の皆がソムリエ並みの知識を備えているのだ。

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左:カウンターには、愛飲家には垂涎ものの珍しいグラッパがずらりと並ぶ。右:地元漁師から仕入れた銀アジを塩と酢でしめて調理したものを、キタッラという手打ちパスタといただくハーブの効いた冷製のサラダ仕立て「地アジのサルサベルデ」¥2,052。合わせるワインは、ガルダ湖の南からヴェネト州にまたがるルガーナ地区のミネラル分が豊富な白ワイン「Le Morette」(グラス¥810)

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ヴァン・ナチュール愛にあふれた馬鳥シェフが、自然な製法で作られた酒に合う料理をと追求したどりついたのが、地産の食材の数々だ。毎朝仕入れる鮮魚は、地元平塚の定置網をはじめ、茅ヶ崎の刺網や地引き網、そして片瀬漁港など、近くの漁師から仕入れられている。さらに、新鮮な魚介を探して出合った三重県尾鷲のエビや牡蠣も使用。野菜に至っては、有機栽培に力を入れる農家の手を借りながら、なるべく自分で収穫すべく、休日は畑へ通うようになったという。地元平塚で農薬を使わずに作られた西洋野菜は、土の力が宿っているかのように味が濃く、主役級の存在感だ。「ワインと食が、きちんと筋の通ったものでありたい」と、ヴァン・ナチュールの生産者の姿勢に恥じぬ料理人でありたいとシェフは語る。

190722-006_MG_5598.jpg神奈川の和牛ブランド「生粋神奈川牛」のタリアータ¥3,888(2人前)。シェフ自らが収穫した季節のグリル野菜、贅沢なトリュフが肉の旨味を引き立ててくれる。合わせる赤ワインは、ヴェネト州ヴェローナで作られる、L’Arcoのヴァルポリチェッラ・クラッシコ・スペリオーレ(グラス¥1,512)

2015年にミシュランに掲載されている。しかしそこに迎合するでもなく、自分の好きなヴァン・ナチュールの世界とそれに寄り添う自然食材を使ったイタリア料理を、追求し続けている。店内に陽気に響き渡る馬鳥シェフの声、それに笑顔で答えるスタッフ。実力とユーモアを兼ね備えたシェフがいる湘南のリトルイタリアは、どこかパワースポットのような場所だ。

190722-007_MG_5658.jpg北イタリアへの愛にあふれた、シェフの馬鳥さん。料理とワインのイタリア版のペアリング「アッビナメント」(¥3,240〜)もぜひ。予約可能。

Onda Cucina Italiana
神奈川県平塚市代官町1-12 太田ビル1F
tel : 0463-79-6311
営)11時30分〜13時30分L.O.、18時〜21時30分L.O.
休)月、不定休
http://onda-italiana.info

※2019年7月取材時の税込み価格を表記しています。

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photos : MAYUKO EBINA, réalisation : MIKI SUKA

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