いま泊まりたい、日本の最新ホテル&宿ガイド。#03 サステイナブルな取り組みを体感できる、3軒の宿。

Travel 2019.09.19

「人に優しく、地球に優しい」地域密着型の宿泊施設が、日本でもいよいよ広がりを見せつつある。限りある資源のことを考えて、持続可能なエコ活動に取り組むといった環境への配慮が、これからの宿泊業界の在り方を問う、世界共通のキーワードだ。BIO HOTELやグリーンキー認証の施設が増えるほど、ウェルネスな世界はもっと広がる。グリーンキーの国内審査委員を務めるホテルジャーナリストのせきねきょうこが、いま注目したい3軒をピックアップ。

選:せきねきょうこ

ショウナイホテル スイデンテラス(山形)

山形庄内の魅力が詰まった、水田に浮かぶエコホテルへ。

水田の広がる庄内平野を背景に建つ、坂茂氏が設計を手がけたエコデザインホテル。山形で育まれた豊かな自然の恵みを、日本の原風景を臨みながら、滞在を通して体感できる。天然温泉のスパにフィットネス、さらに子どものための巨大な遊戯施設「キッズドーム ソライ」を擁し、大人も子どもも自然体で過ごせることが身上だ。「庄内の美しさと農業を守っていきたいと願う山中大介代表の想いが、見事な形で結実した複合施設です。地元客の利用も多く、地域活性に繋がっている地方創生の成功例」(せきね)

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目指すは、JR鶴岡駅からタクシーで10分ほどの水田地帯。四季折々に表情を変える美しい田園風景に、木造2階建ての建物が溶け込むかのよう。

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紙筒や白木を採用した客室は、木造ならではの温もりを感じさせるシンプルデザイン。ゆったり寛げる広さを誇るダブルからスイートまで、全7タイプを用意。画像は、田園風景を一望できる「ダブルテラス付き田園ビュー」¥9,000~(1室1名税サ込)

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開放感あふれる吹き抜けのロビーエリアには、地元食材の魅力を伝えるレストラン、山形県内のクラフトや食品を扱うセレクトショップ、ライブラリー、月山と夕陽を望むテラスが集まる。

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「オトナもコドモ コドモもオトナ」をテーマに、1,000冊の本を揃えたライブラリー。オトナの好奇心をくすぐるラインナップで、施設内どこででものんびり自由に閲覧できる。

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白木の木材でつくられたシンプルな美しさが際立つ宿泊棟。木造のホテルとして日本最大級の客室数を誇る。

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地産地消にこだわる直営レストラン「FARMER’S DINING IRODORI」では、自然の恵みで満たされた山形庄内の旬の食材を、ビュッフェスタイルの朝食でどうぞ(大人¥1,700)。

ショウナイホテル スイデンテラス
山形県鶴岡市北京田字下鳥ノ巣23-1
tel : 0235-25-7424
全143室 シングル¥8,000~(1室1名)、ダブル¥11,200~(1室2名)、ハリウッドツイン¥16,100~(1室2名)、ジュニアスイート¥25,220~(1室2名)ほか ※税サ込
https://suiden-terrasse.yamagata-design.com

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カミツレの宿 八寿恵荘(長野)

北アルプスの麓でカミツレ畑を臨む、やすらぎの里。

長野県の安曇野に、自然の力と五感で繋がることで、健やかな心と身体を取り戻せると評判のカミツレ(カモミール)の宿がある。厳しいビオ認証のガイドラインをクリアし、日本初の「BIO HOTEL JAPAN認証」を2015年に取得。食事や飲み物、コスメ、タオル、ベッドリネン、施設の建材や内装材も極力自然素材を使用するなど、ゲストの健康と自然環境に真摯に向き合う。「信頼に繋がる真っ直ぐな取り組みが、いたるところで実感できる正直な宿。カモミールの花が咲く5月頃、一面が真っ白になる光景は一見の価値あり」(せきね)

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JR明科駅から無料送迎バスで約30分。安曇野の山々に囲まれた豊かな自然の中にある「カミツレの里」に、八寿恵荘が佇む。敷地内にある製造工場では、自社ブランドのスキンケアシリーズ「華密恋」に使用されるカミツレエキスの製造過程を見学できる。

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周囲には約8000坪の有機JAS認定のカモミール畑が広がる。毎年10月に定植を行い、5月末には見頃を迎える。開花時には辺り一面が、甘く優しい香りに包まれる。

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寝具やタオルはすべてオーガニックコットンを使用しており、柔らかな肌触りで夜はぐっすり。農薬不使用の国産カモミールで染めた枕カバーが、ナチュラルな風合い。

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国産・農薬不使用のカモミールから抽出したカミツレエキスをたっぷり入れた「華密恋の湯」は、名物のひとつ。肌あたりの柔らかい琥珀色の湯はリラックス効果も抜群。

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自社農園の採れたて無農薬野菜や、地元池田町産の旬の素材を中心に厳選された食材で作った食事は、化学調味料・添加物不使用で、身体が喜ぶ優しい味わい。おにぎりに使用しているお米は、カミツレエキス抽出後の搾りカスを土づくりに使い、栽培されている。

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地元の枯れ木や間伐材を粉砕して作られた木質チップのボイラーを導入し、CO₂の排出を削減。素足で歩くと、床暖房の温もりとアカマツの木の感触が心地いい。

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人と人が繋がる場としての役目も果たす。ゲスト同士で薪ストーブを囲んで、会話を楽しみながら寛ぐのも旅の思い出に。

カミツレの宿 八寿恵荘
長野県北安曇郡池田町広津4098
tel : 0261-62-9119
全7室 1泊2食付き1名¥16,000~、バリアフリー対応客室1名¥17,000~
http://yasuesou.com

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扉温泉 明神館(長野)

真の豊かさを追求する、名旅館の継続的なエコ活動。

長野県松本を代表する名旅館の扉温泉 明神館が、環境に配慮した宿泊施設のエコラベルであるグリーンキー認証を日本で初めて取得したのは2009年のこと。信州の自然を愛する想いから、1931年の創業当時より地産地消にこだわり、質の高い快適なサービスを追求してきたが、その裏では環境保全にも精力的に取り組んできた。「地球にやさしいエコ活動を実践してきたパイオニアです。資源のムダ使いを贅沢とはき違えてはなりません。明神館のような高級旅館が牽引することで、日本の宿泊業界が変わってくると期待しています」(せきね)

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明神館の代名詞といえば、立ち湯。紅葉が見頃を迎える秋の表情も見事な美しさ。グリーンキーの認証取得には、約100項目の基準を満たすことが必須だが、水・エネルギーの消費削減も鍵。見えないところで節水に取り組んでいる。

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空気を浄化する珪藻土の壁に、無垢材のフローリング、オーガニック素材のリネンなど、身体に優しい素材を配した「然」の客室は3タイプ。写真はテラスに露天風呂が付いた「然 - 熊野」¥53,500~(1室2名、税サ別)

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「ナチュレフレンチ 菜」では、マクロビオティック認定シェフの田邉真宏氏が、松本の季節の移ろいをひと皿ひと皿に再現。自家農園で採れた有機野菜をはじめとする、長野の旬の食材がテーブルに届けられる。

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伝統的な松本の食文化にモダンな解釈を加えた、信州ダイニング「TOBIRA」。斬新な趣向を凝らした地元食材には、長野産ワインがよく合う。

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JR松本駅からは無料シャトルバスが送迎。宿の自家農園で採れたての野菜を愛でたり、すぐそばを流れる渓流を散策しながら森林浴をするのも、エコ意識を高める過ごし方だ。

扉温泉 明神館
長野県松本市入山辺8967
tel : 0263-31-2301
全43室 お鷹棟(和室または洋室)¥26,000~(1室2名)、青竜庵(露天風呂付)¥36,000~(1室2名)ほか ※税サ別 
tobira-group.com/myojinkan

※この記事に記載している価格は、2019年9月時点の8%の消費税を含んだ価格です。

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réalisation : ERI ARIMOTO

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